研究分野 : 「流体力学」

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研究分野のテーマ

空気や水の流れは流体力学で記述されます.流体とは,このようにマクロなスケールでは連続的とみなせるような物体で,力が加わると流動するものを言います.広い意味では,星の集団も地球のマントルも流体として扱うこともでき,実際そのようにして運動が調べられています.このような流体は,古典力学に従うので,基本方程式はほぼ確立していると言うことができます.

しかし,方程式が分かっている,ということは必ずしも解の構造や運動の様子が分かることを意味しません.ひとつの基礎方程式から,さまざま流れのパターンや構造が生じることもしばしばあります.さらに大きな構造と小さな構造が共存する場合も多々あり、いずれも流体運動の特徴と言えます.これらは,基礎方程式のもつ非線形性に起因しており,流れや現象の多様性を生み出しています.Euler以降250年以上に渡り,人類は流体運動,そして流体方程式の見せる様々な表情を追いかけてきました.現代でもなお,その魅力が尽きることはありません.流体力学は様々な数理科学的な手法が活躍し、またカオスやソリトンのように新らしい概念が次々と誕生する豊かな土壌なのです.

流体方程式のもつ非線形性が際立つ一番の例は,流れが速くなると現れる乱流と呼ばれる状態でしょう.実は,日常身の周りにある流体の運動は,水道管の中の水の流れ,エアコンから吹き出す冷風,川や海の流れ,木々を渡る風,雲を吹きやる風,など,いずれも殆んどすべてがこの乱流状態にあります.そして,基本方程式の知識によってこの乱流状態をどうやって記述すべきか,という問題は,現在でも未解決の問題です.

また,流体の基礎方程式を解くには,境界条件が必要です.日常の周りの流れ現象では,必ずしも境界の形状は単純とは限らず,また境界が移動するような状況もしばしば現れます.このような移動境界問題は,鳥や昆虫,魚などの生き物まわりの流れ,泡や膜の運動,風に舞う花びらの運動,球技スポーツにおける流れ,などありふれた流体現象に多く見られるにも関わらず,その数理的な取り扱いの難しさのために,流体力学の基礎的な理解がまだまだ大きな課題として残されています.

乱流とカオスに関連する非線形力学

強い非線形相互作用をもつ系において,統計的性質と相空間の解軌道の性質の関連を,非線形力学の手法を用いて調べています.特に非線形偏微分方程式で支配される系では,場の特性と解軌道の性質の関係が困難で面白い問題であり,さまざまな手法を使用・開発して調べています.

地球惑星現象の流体力学

日常のスケールを越える流体運動の流体力学は20世紀の後半に人工衛星や大型コンピュータが実現されて以後盛んになりました.地球や惑星規模の流体現象の特徴は実験が困難/不可能なために,現象が予想し難く,予想を超える美しい大規模現象も多く見られます.乱れた場から大規模秩序構造が出現することもしばしばで,未解明の不思議な現象も多く残されています.研究では,非線形力学のアプローチが多く用いられ,基礎方程式からいかにして現象を取り出すかが勝負です.

生命現象の流体力学

地球上の生命は,水なくしては生きることはできません.バクテリアやプランクトンといった細胞スケールから,植物や我々ヒトの体の中,にも多様な流体現象が存在します.また,空気中を飛翔する鳥や昆虫たちは巧みに流体を操っているといえるでしょう.複雑な生命現象の中にも,シンプルな流体力学的なメカニズムが重要な鍵を担っていることがしばしばあります.理論的にも運動する境界と流体の相互作用は最も難しくまた面白い問題の一つです.

大学院生の指導方針など

大学院生には,研究テーマに関してアドバイスを行ったあと,最終的にはそれぞれが好きなテーマを選んでもらいます(原則としてテーマ設定は自由です).毎週のセミナーでは基本的なテキスト講読と研究状況報告を行います.また院生には早い時期から国内および国外の学会・研究会に積極的に参加し発表してもらうようにしています.院入試では,教養課程の微分積分学・線形代数,初歩の複素関数論,初歩の古典力学の知識を期待しますが,流体力学や数値解析についての知識や経験は必ずしも必要ありません.

修士課程の前半では, 数学・物理・数値計算能力の習熟を兼ねて, これまでに行なわれてきた研究をトレースバックすることが目標です.後半では,オリジナルな研究をめざします.

博士課程まで進む人は, 将来は研究者として身を立てて行くことを前堤として研究教育方針を立てることになります.当然,修士課程で卒業する人よりも研究内容の要求レベルは上がります.博士課程では単に問題を解く能力だけでなく,自分で問題を見いだし, その学問的意義を説明できるようになることが目標となるでしょう.

研究グループの様子を知りたい人には教員や現役の大学院生が直接説明します.百聞は一見に如かずですので,見に来てもらうのが良いと思います.来訪歓迎です.大木谷, 竹広または石本宛に連絡してください(fluid-admin at kurims.kyoto-u.ac.jp).

ガイダンス資料

  • こちらは大学院ガイダンスに用いたスライドです.

学位論文・課題研究リスト

  • こちらは当分野を卒業したメンバーの学位論文と課題研究のリストです.

履歴

  • 2024/04/02 (竹広真一) 最終更新
  • 2020/10/21 (竹広真一, 石本健太) 更新
  • 2005/05/31 (山田道夫, 竹広真一) 更新
  • 2005/05/04 (竹広真一) 新規作成