所員 -福島 竜輝-

名前 福島 竜輝 (Fukushima, Ryoki)
講師
E-Mail ryoki (emailアドレスには@kurims.kyoto-u.ac.jp をつけてください)
研究内容 確率論
紹 介
 主にランダム媒質中の確率過程の研究を行っている。この分野の研究は空間的に一様でない媒質における物理現象を理解するという動機から始まったが,二重のランダムネスが生み出す多様な現象の定式化や解析の過程で数学的にも新しい概念や手法が生まれてきた。典型的なモデルを挙げると,各点での遷移確率がランダムなランダムウォーク(ランダム媒質中のランダムウォーク),強磁性と反磁性がランダムに混ざったスピン系(スピングラス),ランダムポテンシャルを伴うSchrödinger 作用素(Anderson 模型)ながあるが,私自身はこれまではAnderson 模型に関わる研究を中心に行ってきた。
 Anderson模型は不純物を含む結晶中での電子の運動を記述するモデルとして P.W.Andersonによって提唱されたモデルであり,そこではとくに低いエネルギー を持つ電子が結晶の中の小さな領域に局在することが議論されている。Anderson の議論は数学的に厳密な証明ではなかったが,その後の多くの数学者の努力によ りとくに合金型と呼ばれる,ポテンシャルの配置は規則的であるが高さ(形状)が ランダムなモデルに対しては理解が進んできている。一方でポテンシャルの配置が ランダムなモデルについては研究が遅れており,合金型に近いと見なせる Poisson配置 の場合を除いてほとんど結果が無かった。そこで[1,2,3]では格子点をランダム に揺動したモデルを考察し,作用素の無限体積極限におけるスペクトル分布の 挙動を決定した。これはいわゆるAnderson局在を示すための重要なステップ になるが,局在の証明にはまだ困難があり将来の課題である。
 またAnderson模型に対応する拡散過程の局在についても,精密な定量的 評価を目指して研究している。 この方面ではGärtner, König, MolchanovやSznitmanによる先行研究があり, 合金型のポテンシャルで短距離の影響力を持つ場合には拡散過程が通常の 時間の平方根のスケールより小さい領域に局在することは知られていた。 一方で長距離の影響力を持つ場合は異なるスケールで局在が起こることが予想 されていたが,これを[4,5]において実際に確かめた。より一般の 確率場として長距離相関を持つポテンシャルを扱うことは今後の課題である。
 最近はAnderson模型のポテンシャルに小さな因子を掛けたときにそれが あるランダムでない作用素で近似される,いわゆる均質化の問題も考えている。 ポテンシャルの分布に適当な仮定をおけば一次近似は比較的容易であるが, その周りでの揺らぎに関する中心極限定理にあたる結果も示すことができた。 とくに高次元では中心極限定理における揺らぎの中心を,均質化の極限では なく統計平均に取る必要があるように思われ,両者の違いを記述することは これからの課題である。
この他にdirected polymerと呼ばれるモデルの研究も行い,とくに 劣加法エルゴード定理が使えない状況で自由エネルギーの存在を示す 方法などについて調べている。
  1. Brownian survival and Lifshitz tail in perturbed lattice disorder Journal of Functional Analysis, vol. 256, issue 9, 2867-2893 (2009)
  2. Classical and quantum behavior of the integrated density of states for a randomly perturbed lattice (joint work with Naomasa Ueki), Annales Henri Poincar\'e, vol. 11, no. 6, 1053-1083 (2010)
  3. Moment asymptotics for the parabolic Anderson problem with a perturbed lattice potential (joint work with Naomasa Ueki), Journal of Functional Analysis, vol. 260, issue 3, 724-744 (2011)
  4. Second order asymptotics for Brownian motion in a heavy tailed Poissonian potential Markov Processes and Related Fields, vol. 17, issue 3, 447-482 (2011)
  5. Annealed Brownian motion in a heavy tailed Poissonian potential, Annals of Probability, vol. 41, no. 5, 3462-3493 (2013)