所員 -小嶋 泉-

名前 小嶋 泉 (Ojima, Izumi)
准教授
E-Mail ojima (emailアドレスには@kurims.kyoto-u.ac.jp をつけてください)
U R L
研究内容 場の量子論の研究
紹 介
 量子的ミクロとマ クロ古典をつなぐ 「量子古典対応」 の物理的理念を数 学的方法論として 具体化した「ミク ロ・マクロ双対性 」[3]とそれを圏 論的随伴の形で組 込んだ理論枠=「 4項図式」[5]を用 意し,それらを用 いて量子場のミク ロ動力学とそれが 産み出す多様なマ クロ現象・構造と の相互関係を研究 している。相対論 的量子場の局所熱 的状態の数学的定 式化[1]および量子 場の「セクター」 概念を拡張した理 論構造を方程式論 的に制御する状態 選択基準に基づい て,記述対象の物 理的状況に適合す る量子状態の族を 選び出せば,その 物理的解釈が圏論 的随伴により定ま る[2]。この方法の 具体的運用を通じ て枠組自体を拡充 ・整備しつつ,ミ クロ自然の普遍的 言語としての量子 場理論を確立する ことが当面の中心 課題である。
 群双対性と環のガ ロア理論を用いて ,マクロデータと しての群不変量か ら群そのものと群 共変量としてのミ クロ量子場とを再 構成するセクター 理論は帰納法の本 質を数学的な形で 実現するが,論文[2] では,破れなしの 状況のみに特化し た従来の理論的限 界をセクター概念 の因子表現への拡 張によって突破し ,破れた対称性の 一般状況へ理論を 拡げると共に,温 度概念をスケール 不変性の破れに伴 う秩序変数に同定 した。
 この一般化「セク ター」の概念は, ミクロとマクロを 分かつ境界として 機能すると共に, 両者を「ミクロ・ マクロ複合系」に 統合し圏論的随伴 関係に置く。そこ では,マクロ秩序 変数は外部から持 込まずともミクロ 量子系内部から表 現の中心として生 成・創発し,その スペクトルがミク ロ量子系の多様な 構造・配置を記述 ・分類・解釈する 分類空間として機 能する。古典的マ クロレベルの幾何 構造に備わる数学 的普遍性はこの随 伴関係によって基 礎づけられ,ミク ロ系と種々の古典 的マクロレベルと をつなぐ普遍的相 互関係が「ミクロ ・マクロ双対性」 [3]として明確に 定式化される。更 に対称性の明示的 破れ,並びに,量 子測定過程の定式 化とそこでの増幅 機構の解明[4]を通 じて,数学基礎論 の「強制法」を用 いた「相分離」過 程の数学的定式化 が実現した結果, 物理定数・自然定 数の変動と確定の 機構を論ずること が可能となり,一 般的な分類空間の 創発機構の解明と 共に時空間の創発 も物理的に説明で きるようになった [7]。
 この新しい物理的 視角から一般相対 論的時空,等価原 理,重力の本質を 見直せば[7],重力 の吸込み口及び重 力波の不在が示唆 され[7],更に4つ の相互作用の新し い意味での統合と その歴史的生成過 程の理論的記述も 視野に入ってきた (IO, \textquotedblleft How to Unify Interactions?\textquotedblright, pp.87--101 in 講究録 1820)。多様な基 準参照系の存在と 相対性原理による その相互関係統制 という相対論の核 心を,上の新たな 道に沿って拡張す るならば,一つの 対象系を記述する 動力学の族とその 相互関係(= 動力学 の相対性)という 視点に導かれ,そ こから局所ゲージ 不変性に付随する ゲージセクターを 制御する新たな可 能性が開ける。量 子場の測定につい ては,従来散乱過 程しか理論的扱い がなかったが,量 子場の局所状態の 相空間的性質に基 づく演算子展開を 群双対性と結びつ け,上記の動力学 の相対性と組合せ ると,くりこみ処 方の新しい定式化 も可能であり,そ こから量子場の測 定過程を一般的・ 具体的に論ずる新 たな展望が開ける [6]。例えば massless 光子 の局在化条件の解明 [8]や無限自由度量 子系に大偏差原理 を組込み統計的推 論・量子系制御に 向けた統一的枠組[9] の整備等,新たな 課題が山積する。 こうした量子物理 学全般への新たな 包括的アプローチ を現状でとりまと め,概観したのが [10]の2冊の著書で ある。
  1. Thermodynamic properties of non-equilibrium states in quantum field theory, Ann. Phys. (N.Y.) 297, 219 - 242 (2002) (with D. Buchholz and H. Roos).
  2. A unified scheme for generalized sectors based on selection criteria ---Order parameters of symmetries and of thermal situations and physical meanings of classifying categorical adjunctions---, Open Systems and Information Dynamics 10, 235-279 (2003); Temperature as order parameter of broken scale invariance, Publ. RIMS (Kyoto Univ.) 40, 731-756 (2004).
  3. Micro-macro duality in quantum physics, 143-161, Proc. Intern. Conf. "Stochastic Analysis: Classical and Quantum", World Sci., 2005.
  4. How to observe and recover quantum fields from observational data? --Takesaki duality as a Micro-macro duality-- (with M. Takeori), Open Systems and Information Dynamics 14, 307 - 318 (2007); Micro-Macro duality and emergence of macroscopic levels, Quantum Probability and White Noise Analysis, 21, 217 - 228 (2008); A unified scheme of measurement and amplification processes based on Micro-Macro Duality -- Stern-Gerlach experiment as a typical example --, Open Systems and Information Dynamics 16, 55--74 (2009) (with R. Harada).
  5. Meaning of Non-Extensive Entropies in Micro-Macro Duality, J. Phys.: Conf. Ser. 201 012017 (2010).
  6. Perspectives from Micro-Macro Duality -- Towards non-perturbative renormalization scheme --, Quantum Probability and WNA 24, 160 - 172 (2009); Roles of asymptotic conditions and S-matrix as Micro-Macro Duality in QFT, Quantum Probability and WNA 26, 277-290 (2010).
  7. Micro-Macro duality and space-time emergence, Proc. Intern. Conf. "Advances in Quantum Theory", 197 -- 206 (2011); New interpretation of equivalence principle in General Relativity from the viewpoint of Micro-Macro duality (arXiv:gen-ph/1112.5525), Foundations of Probability and Physics 6, Sweden, 2011.6 (invited talk).
  8. Who has seen a photon? (arXiv:physics.gen-ph/1101.5782v1 Open Sys. Inf. Dyn. \textbf{19}, 1250008 (2012) (with H. Saigo).
  9. Large deviation strategy for inverse problem I \& II, Open Sys. Inf. Dyn., \textbf{19}, 1250021 \& 1250022 (2012) (with K. Okamura).
  10. 『無限量子系の物理と数理』(サイエンス社,2013.4) (岡村和弥と共著); 『量子場とミクロ・マクロ双対性』(丸善出版,2013, 近刊).