高橋 陽一郎

名前 高橋 陽一郎 (Takahashi, Yoichiro)
名誉教授
E-Mail takahasi (emailアドレスには@kurims.kyoto-u.ac.jp をつけてください)
研究内容 確率解析,力学系理論
紹 介
 とくに統計力学に関連する諸問題に興味をもち,エントロピーや大偏差原理を共通のキーワードとして, これまで確率過程やカオス力学系などを研究してきた。
 近年は,乱雑行列の理論,とくにGUE(ガウス・ユニタリ・アンサンブル)の場合を確率論として一般的な枠組みで理解することを目指して, フェルミ点過程,ボゾン点過程など, ラプラス変換が積分作用素のフレドホルム行列式(一般には, その\alpha乗)で与えられる確率点場のクラスを導入し, その性質を研究している。その大部分は白井朋之との共同研究であるが,現在では, Johansson, Soshinikov, Lyonsその他の人々の研究成果も著しく, 協力かつ競合関係にある。
 まず,その存在を仮定すれば,中心極限定理,大偏差原理(フェルミ点過程の場合は, セゲの第1定理の一般化を与える)などの極限定理を容易に示すことができ, また,フェルミ過程(\alpha=-1)など\alphaが負の場合はシフトとしてのベルヌーイ性なども示した。 さらに,パルム測度も\alphaの正負に応じてそれぞれ特徴付けできる。
 しかし,その存在問題は,底空間が1点という最も特殊な場合にこれらの確率場が一般二項分布であることからも推測できるように, 非自明な問題であり,行列式とパーマネントのある一般化(\alpha行列式と仮称)が正値対称行列に関しては正値をとることと同値であり, それは\alphaが負整数の逆数または0以上2以下の実数の場合のみ真であるものと予想している。 現在までに, この予想は負整数の逆数もしくは正整数の逆数の2倍の場合は正しいことを示した。 その手法は確率場の構成であり,いわゆるq行列式の場合と異なり, 代数的な証明はまだない。
 さらに,昨年ようやく,これらの確率点場は,統計物理におけるフェルミ統計やボーズ統計およびその一般化を実現する確率場であることを明確にすることができた。 とくに,フェルミ点過程は通常のギブス場である。また, \alpha=2の場合(スーパーボゾンと仮称)も特別であり, ガウス過程の2乗を強度にもつポアソン点過程であり, 小谷が研究しているソリトンとガウス場の関係とも関連がつくはずであるが, 今後の課題である。また,ユニタリ行列に対応する確率についても研究を進めている。
 なお,最近,雑音をもつ時間発展には無限の過去をもつ場合ともたない場合があることに気付き,コンパクト群の雑音付自己同型の場合について矢野孝次氏と共同研究を始めている。この問題は,確率微分方程式の強解・非強解の問題に端を発し,M.Yorたちが 研究しているものの延長線上にあり,他方で1940年の河田敬義・伊藤清の論文の 一般化でもある。
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  3. Li-York's scramble set has Lebesgue measure 0, Nonlinear Anal., 26 (1996), 1611--1612. (with Y. Baba and I. Kubo)
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  6. Fermion process and Fredholm determinant, in H.G.W. Begehr et al(eds), Proc. of Second ISAAC Congress, 1, 1999, Kluwer Academic Publshers, Dortrecht, 2000, pp.15-23 (with T. Shirai)
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  11. 力学と微分方程式,岩波書店, 1996.
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  13. 漸近挙動入門,日本評論社 2002.
  14. 数学入門辞典,岩波書店 2005
  15. 確率論入門I,培風館 2006(共著).