所員 -竹井 義次-

名前 竹井 義次 (Takei, Yoshitsugu)
准教授
E-Mail takei (emailアドレスには@kurims.kyoto-u.ac.jp をつけてください)
U R L
研究内容 微分方程式の研究
紹 介
 Borel 総和法に基礎をおく完全 WKB 解析は,1次元 Schr\"odinger 方程式の 永年方程式やスペクトル函数を論じた Voros や Silverstone の先駆的な仕事, 及びそれを引き継いだ Pham や Delabaere の研究以来,次第にその適用範囲を 広げてきた。我々の周辺でも,2階 Fuchs 型方程式のモノドロミー群の具体的 計算,Painlev\'e 方程式の単純変わり点における構造定理,WKB 解を含んだ 積分表示式に対する「完全最急降下法」の創出等,着実に成果は上がってきた。 しかし,WKB 解やインスタントン型形式解の(Ecalle の意味での)再生函数 としての構造の解析や,仮想的変わり点が存在し Stokes 曲線の構造が複雑な 高階方程式の場合への完全 WKB 解析の拡張等については,未だ十分な理解が 得られたとは言えない。最近は完全 WKB 解析に関するこうした基本的な課題 を中心に,多方面からの研究を行っている。 ,br>  まず線型方程式に対する WKB 解の Borel 変換の構造解析については,複数の 変わり点が存在することに由来する「動かない特異点」が主たる課題である。 こうした「動かない特異点」の解析にも,Weber 方程式や Whittaker 方程式 をはじめとする標準形への変換論は非常に強力である ([5],[6],[7],[10])。 さらに,「動かない特異点」は非線型である Painlev\'e 方程式のインスタン トン型形式解にも存在し,標準形への変換論はこうした非線型方程式の場合 にも有効であることが大学院生の岩木耕平君の最近の研究により示されつつ ある。Costin,Sch\"afke,小池,等により進められている WKB 解の Borel 総和可能性に対する漸近解析的研究をより一層発展させ,標準形への変換論 とうまく組み合わせることで,WKB 解やインスタントン型形式解の再生函数 としての大域構造の解析に大きな進展が得られるものと期待している。
 他方,高階方程式の完全 WKB 解析については,変形パラメータを導入し, さらにそれを変数と見なして偏微分方程式系を考えるというアプローチが 予想以上に有効であることが,次第に明らかになってきた ([2])。例えば, Berk 達により新しい Stokes 曲線の存在が指摘されたいわゆる BNR 方程式は, この立場からは退化した2変数超幾何方程式系(Pearcey 系)の制限と考えられ, しかもこの Pearcey 系は変わり点の交差現象が起こる点(つまり,変わり点 集合のカスプ状の特異点)における標準形を与えることが,廣瀬三平君の 学位論文においてごく最近示された。このアプローチを非線型方程式に適用 すればどうなるか,すなわちインスタントン型形式解の構成 ([4]) と第1種 変わり点における構造定理 ([3],[8]) により基本的な枠組が出来上がった 高階 Painlev\'e 方程式に対する完全 WKB 解析をこの視点から捉え直すと どうなるか,は非常に興味深いテーマである。そこではまた,高階 Painlev\'e 方程式が多変数の非線型可積分系の制限として得られるという小池や坂井の 結果も重要な役割を果たすであろうと考えられる。2階の Painlev\'e 方程式 に対する2重変わり点や単純極における構造定理 ([9]) の高階方程式への 一般化や,高階方程式特有の第2種変わり点における構造定理の確立と共に, こうした問題に今後特に関心をもって取り組んで行きたい。
  1. 特異摂動の代数解析学, 岩波書店, 2008 (1998年刊行の講座版の単行本化, 河合隆裕との共著).
  2. Virtual turning points and bifurcation of Stokes curves for higher order ordinary differential equations, J. Phys.A: Math.Gen., 38(2005), 3317-3336 (with T. Aoki, T. Kawai, S. Sasaki and A. Shudo).
  3. WKB analysis of higher order Painlevé equations with a large parameter, Adv. Math., 203(2006), 636-672 (with T. Kawai).
  4. Instanton-type formal solutions for the first Painlevé hierarchy, Algebraic Analysis of Differential Equations, Springer-Verlag, 2008, pp.307-319.
  5. Sato's conjecture for the Weber equation and transformation theory for Schrödinger equations with a merging pair of turning points, RIMS Kôkyôroku Bessatsu, B10(2008), 205-224.
  6. The Bender-Wu analysis and the Voros theory. II, Advanced Studies in Pure Mathematics, Vol.54, Math. Soc. Japan, Tokyo, 2009, pp.19-94 (with T. Aoki and T. Kawai).
  7. On the WKB theoretic structure of a Schrödinger operator with a merging pair of a simple pole and a simple turning point, Kyoto Journal of Mathematics, 50 (2010), 101-164 (with S. Kamimoto, T. Kawai and T. Koike).
  8. WKB analysis of higher order Painlevé equations with a large parameter. II, Publ. RIMS, Kyoto Univ., 47 (2011), 153-219 (with T. Kawai).
  9. On the turning point problem for instanton-type solutions of Painlevé equations, preprint (RIMS-1693), 2010, to appear in Asymptotics in Dynamics, Geometry and PDEs; Generalized Borel Summation, Vol.2, Edizioni della Normale, 2011, pp.255-274.
  10. Exact WKB analysis of a Schrödinger equation with a merging triplet of two simple poles and one simple turning point, preprint (RIMS-1735), 2011 (with S. Kamimoto and T. Kawai).