所員 -横田 巧-

名前 横田 巧 (Yokota, Takumi)
助教
E-Mail takumiy (emailアドレスには@kurims.kyoto-u.ac.jp をつけてください)
研究内容 微分幾何学の研究
紹 介
 私は微分幾何学,その中でも主にリッチ流(Ricci flow)とアレクサンドロフ空間の幾何学につ いて研究しています。リッチ流とは多様体上で定義されるある発展型偏微分方程式を満たすリー マン計量の族のことで,1982年に R. Hamilton によって導入され,2002〜03年に G. Perelman が発表した3次元ポアンカレ予想の証明に使われたことでも注目を集めました。私は特にリッチ 流という偏微分方程式の解の幾何学的側面に興味を持って研究しています([1--3, 7])。
 論文 [2, 3] では一般次元リッチ流の古代解とその簡約体積について調べました。古代解とは過 去に無限時間存在するリッチ流のことで,リッチ平坦計量や縮小リッチソリトン等を含み,リッ チ流の特異点のモデルとなる重要な概念です。簡約体積は Perelman がL幾何と呼ばれるリッチ 流の時空に対する比較幾何学的考察により発見した量です。私はこの簡約体積を用いて古代解に 対するギャップ定理を証明しました([2])。リッチ平坦計量を自明な古代解とみなすと,この 定理はリッチ平坦多様体に対する定理のリッチ流への自然な拡張であると解釈出来ます。またこ の定理の系として,勾配型縮小リッチソリトンに対するギャップ定理も得られます([2, 7])。 プレプリント [7] では,以前 [2] で仮定していた曲率条件を外し,改良されたリッチソリトン に対するギャップ定理が得られました。
 また私は Alexandrov 空間や Wasserstein 空間などの距離空間の幾何学についても研究してい ます([4--6])。曲率が下に有界な Alexandrov 空間とはその“断面曲率の下限”が不等式によ り定義された距離空間のことです。例えば,断面曲率が下に有界なリーマン多様体の列の極限空 間がそのような例となり,Alexandrov 空間の理論は先の Perelman の議論でも鍵となります。 最近の論文 [5] において,私は断面曲率が正定数以上のリーマン多様体の filling radius と 呼ばれる不変量に対する比較定理を(有限次元)Alexandrov 空間の spread という不変量に対 する比較定理に拡張しました。証明の議論は多様体の場合を参考にしましたが、Alexandrov 空 間に拡張することで、より簡単な証明が得られました。今はその無限次元版の証明を考えていま す。無限次元 Alexandrov 空間の重要な例としては非負曲率 Alexandrov 空間上の Wasserstein 空間があります。共同研究 [6] ではユークリッド空間上の Wasserstein 空間の距離構造を少 し明らかにしました。
  1. Curvature integrals under the Ricci flow on surfaces, Geom. Dedicata, 133 (2008), 169--179.
  2. Perelman's reduced volume and a gap theorem for the Ricci flow, Comm. Anal. Geom., 17, No.2 (2009), 227--263.
  3. On the asymptotic reduced volume of the Ricci flow, Ann. Global Anal. Geom., 37, No.3 (2010), 263--274.
  4. A rigidity theorem in Alexandrov spaces with lower curvature bound, Math. Annalen, 353, No. 2 (2012), 305--331.
  5. On the filling radius of positively curved Alexandrov spaces, Math. Z., to appear.
  6. (joint with A. Takatsu) Cone structure of L^2-Wasserstein spaces, J. Topol. Anal., to appear.
  7. Addendum to `Perelman's reduced volume and a gap theorem for the Ricci flow', submitted.