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GCOE tea time
博士課程・ポスドク・助教対象


日時(Time) 2013年2月20日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 津曲 紀宏 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) Galois connections for abstraction of probabilistic systems
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) 確率的な遷移を含むシステムのための検証手法はコスト面の問題から実用化に至っていない。検証とは、システム利用前に、システムが必要とされる性質を満たしていることや特定の欠陥をもたないことを証明することである。この問題を解決するには,確率的なシステムの抽象化が不可欠である。ガロア接続とは具体集合と抽象集合の間の特殊な対応関係であり、抽象解釈という抽象化の健全さを保証する理論に現れる。確率的なシステムの意味領域である確率的多重関係は、完備べき等左半環という代数をなすことが示されている。一方、二項関係の拡張である二項多重関係は、同じ代数をなすことから、確率的システムの抽象領域と目される。講演では、確率的システムの意味領域である確率的多重関係と二項多重関係との間のガロア接続とそれによって保存される代数的性質について紹介する。

日時(Time) 2013年2月6日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 小関 祥康(京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) アーベル多様体に関する有限性予想 -- Rasmussen-Tamagawa 予想 -- について
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) アーベル多様体は古典的な研究対象ですが、いまだに多くの面白い問題があり、研究されています。本講演では、特にアーベル多様体の個数の有限性予想である『Rasmussen-Tamagawa予想』という予想に焦点を当て、これまでに知られていることや講演者の結果などについて話をさせていただきます。 (※ちなみに Rasmussen-Tamagawa 予想の Tamagawa は RIMS の玉川安騎男教授の名字です。) なるべく専門家でない人にも分かるように話をさせていただく予定です。

日時(Time) 2013年1月30日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 小寺 諒介 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) Representation theory of loop algebras and quantum loop algebras
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) 表現論の研究を行ううえで基本的な予備知識とされお手本となっているもののひとつに,複素単純Lie代数の有限次元表現の理論があります.そこでは,完全可約性,最高ウェイトによる既約表現の分類,次元公式といった重要な結果が確立されています. 私が現在研究している対象は,単純Lie代数の無限次元版であるループ代数と,そのq変形である量子ループ代数の有限次元表現です.この場合には完全可約性が成り立たないため,表現の圏が持つホモロジー代数的な性質をより詳しく理解することが必要になります. セミナーでは,古典的な単純Lie代数の理論を簡単におさらいした後,ループ代数および量子ループ代数の既約表現の間の拡大の記述に関する講演者の結果を紹介します.

日時(Time) 2013年1月16日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 廣瀬 三平 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) 完全積分可能系に対する完全WKB解析
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) 特異摂動型の微分方程式に対する完全WKB解析、つまりBorel総和法により 解析的意味付けを与えたWKB解と呼ばれる発散級数解を用いた解析は、 2階の線型常微分方程式から始められ、さらに、高階線型常微分方程式や 非線形常微分方程式に対しても議論されてきた。 しかし、その偏微分方程式系への拡張に関しては、まだあまり手が付いていないと 言える状況である。 本講演では、完全積分可能系と呼ばれる偏微分方程式系に対する完全WKB解析の 基本的な定義から始め、完全WKB解析において重要な役割を果たす標準形への (WKB解析的な)変換について解説する。 特に、この講演では変わり点の集合という幾何学的対象を調べることが 重要であることを説明する。

日時(Time) 2012年12月19日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 若林 泰央 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) 正標数のタイヒミュラー理論と関連する組み合わせ論的な何か
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) 皆さんご存知!タイヒミュラー理論とは 位相曲面上の複素構造のモジュライに関する解析的、幾何的な理論です。 固有束(若しくは、より一般にoper) と呼ばれる然るべき可積分ベクトル束の概念を用いることにより、 正標数の代数曲線においても意味のある同様な(代数幾何的な) 理論を考えることが出来ます。 さらに、正標数特有の文化と交わることで観察できる現象や 関連する組み合わせ論的話題 (グラフの数え上げ、Ehrhart多項式)などについて、 講演者の結果も踏まえて紹介したいと思います。 込み入った話はしません。

日時(Time) 2012年12月12日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 森山 貴之 (京都大学理学部数学教室)
タイトル(Title) 部分多様体の変形理論
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) ある構造に対し、変形のモジュライ空間が多様体構造を持つ場合がある。 例えばカラビ・ヤウ多様体における特殊ラグランジュ部分多様体の モジュライ空間は有限次元多様体になる事が知られている。 このティータイムではモジュライ空間が多様体構造を持つといった現象と そこに用いられている解析的手法を微分複体を通して説明する。 完備化、楕円型微分作用素などの定義は極力せずに その性質と応用の過程を概観しつつ、気楽に談話することを目的とする。 時間が余れば、応用として佐々木・アインシュタイン多様体における 特殊ルジャンドル部分多様体の変形理論について紹介したい。

日時(Time) 2012年12月5日(水) 13:30ー14:30
講演者(Speaker) 高山 侑也 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) quiver variety と bow variety
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) quiver variety と bow variety は hyper-Kähler 多様体の一種で、 それぞれあるルールに則って構成されるものを指す。 quiver variety は1989年に Kronheimer により導入され、その後表現論と深い関わりがあることが見出された。 一方 bow variety は、quiver variety の一般化として、Cherkis が2009年に導入 したばかりで、まだ十分には研究されていない。本講演では、hyper-Kähler 多様体の定義から始めて、quiver variety と bow variety の構成法やそれらの 応用など、最近わかってきたことを紹介したい。

日時(Time) 2012年11月21日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 藤田 健人 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) ファノ多様体に関する向井予想について
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) ファノ多様体とは、非特異射影代数多様体で反標準因子が豊富なもの として定義される代数多様体で、代数幾何学特に双有理幾何学に於いて 重要な対象の一つである。ファノ多様体の分類及び評価を考えるにあたり、 向井先生によって1988年に提示されたファノ多様体のピカール数の評価に 関する予想は今なお広く研究されている。本講演では、ファノ多様体が 双有理幾何学でどのように出てくるのかを説明させて頂いた後、 ファノ多様体に関する向井予想とそれに関連する講演者の最近の結果について 話させて頂きたいと思う。

日時(Time) 2012年11月7日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 廣惠 一希 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) Fuchs型常微分方程式とアクセサリーパラメーター
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) 有理関数係数の線型常微分方程式はその特異点がすべて確定特異点であるときFuchs型と呼ばれます。 Fuchs型方程式では特異点の近傍の局所解の様子は比較的容易に分かりますが、解の大域的な性質が知りたければ、これら局所解の解析接続(接続問題)が重要な研究対象となってきます。 例えば大域解析が”易しい”方程式の代表としてはガウスの超幾何方程式が挙げられ、また”難しい”方程式の代表としてはホインの方程式が挙げられます。 講演では微分方程式のアクセサリーパラメーターという量に注目して、これらの方程式のある意味での”易しさ”、”難しさ”について解説してみたいと思います。

日時(Time) 2012年10月31日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 栗原 大武(京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) グラスマン空間上のデザイン理論
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) デザインとは、ある空間内の有限個の点集合で全体を「うまく」近似するような性質を持ったものである。「良い」デザインは、対称性が高い、様々な分野の重要なものから得られる、アソシエーションスキームの構造が付随する、など興味深い研究対象である。これまでにデザイン理論は球面やQ多項式アソシエーションスキームなど多くの空間の上で考えられてきた。本講演では主にグラスマン空間上のデザイン理論を中心として、現在知られていることや、講演者によって得られた結果を説明したい。

日時(Time) 2012年10月10日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 白石 大典 (京都大学数学教室)
タイトル(Title) ランダムウォークの軌跡の構造について
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) ランダムウォークの軌跡の構造を調べる問題は、確率論において基本的な問題のひ とつである。その構造を解明するアプローチの仕方は数多く存在するが、本講演では 軌跡の上のカットポイントと呼ばれる点に注目する方法を考える。ここで軌跡上の点 がカットポイントであるとは、その点を通過すまでの過去の軌跡と通過後の未来の軌 跡が交叉しないことをいう。結果としてランダムウォークの軌跡は、カットポイント によりお互いに交わらないいくつかのパスに分離されることになるが、それぞれのパ スの構造を理解することは軌跡全体の形状を研究する上で重要となる。本講演ではこ れまでの研究で解明されていることや今後の課題をわかりやすく説明したい。

日時(Time) 2012年 7月18日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 鈴木 咲衣(京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) 絡み目と底タングルの量子不変量
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) 単純リー環の量子群とその表現を与えるごとに絡み目の量子不変量が得られる.量子不変量の代数的性質と絡み目の幾何的性質の関係は未だ十分に明らかになっていない.本講演では絡み目の量子不変量の定義,背景,問題意識,講演者によりこれまでに得られた結果を簡単にお話したい.

日時(Time) 2012年 7月11日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 安藤 浩志 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) von Neumann環について
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) von Neumann環とは、Hilbert空間上の有界線形作用素達のなす*-代数で、恒等変換を含み、強作用素位相で閉じたもので、von Neumannによって量子力学の数学的構造の理解を動機として導入されました。この講演ではvon Neumann環、特にI,II,III型因子環それぞれの基本的な性質についてお話させて頂きます。
*7/18に京都作用素環セミナーで講演者の研究内容(von Neumann環の超積)をお話させて頂きます。

日時(Time) 2012年 6月20日(水) 13:15ー14:15
講演者(Speaker) 酒匂 宏樹(京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) 離散距離空間の二つの性質---Property Aと一様局所従順性
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) 本講演の題材は距離空間です. 距離空間は非常に多様な数学的対象ですが, 大規模一様構造(Coarse structure)のみに依存して定義される 特性の研究が大切です. そのうちProperty Aと一様局所従順性を紹介します. 最近、一様に離散な距離空間についてはこの二つが同値であることが 示されましたので例を交えながら解説したいと思います.

日時(Time) 2012年 6月 6日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 神本 晋吾 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) シュレディンガー方程式の完全WKB解析
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) 良く知られている様に、シュレディンガー方程式のWKB解は、一般にプランク定数に関する発散級数となる。 完全WKB解析では、通常のWKB法の様にWKB解のプランク定数に関する展開係数を比較するだけでなく、 この発散級数解自体を考察の対象とする。これは、WKB解の接続問題を正しく議論するためには、 発散級数自体を扱わなければならないという考えの下、A. Vorosにより始められた。 このため、完全WKB解析ではWKB解のStokes現象の記述が重要となる。 本講演では完全WKB解析の基本事項を解説し、 更に青木-河合-竹井によるWKB解析的変換を用いた単純変わり点の解析に関して紹介する。

日時(Time) 2012年 5月23日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 田中 守(京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) グラフのラプラシアンの高次固有値とエクスパンダーグラフの関係について
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) エクスパンダーグラフとは, 簡単に言うと, 連結性が高いが, 頂点数に比べ辺の数が 少ないグラフである. それはコンピューター理論や組み合わせ論, 関数解析などの分 野で用いられている. エクスパンダーグラフは, グラフのラプラシアンの第2固有値 を用いて特徴付けられることが知られている. 本講演では, 高次の固有値とエクスパ ンダーグラフの関係について紹介する.

日時(Time) 2012年 5月 9日(水) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 宮路 智行 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) 散逸項と入力場を伴う非線形シュレーディンガー方程式に対する分岐解析
場所(Place) 数理解析研究所006号室(RIMS, Room 006)
概要(abstract) Lugiato-Lefever方程式(LL方程式)はdamping, detuning, 及びdriving forceを伴う三次の非線形シュレーディンガー方程式である.非線形光学におけるパターン形成を説明するモデル方程式として提案された.これは,いわゆる非線形シュレーディンガー方程式と異なり,エネルギーの流入と散逸を伴う散逸系の方程式である.本講演ではLL方程式に対する分岐解析を通して,パターン形成を分岐理論的側面から眺める方法を紹介したい.

日時(Time) 2012年 2月 7日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 山田智宏(京都大学数学教室)
タイトル(Title) 友愛数について
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 2つの自然数の対 $(n, m)$ の一方の真の約数の和が他方に等しいとき、 そのような対に属する自然数を友愛数という。 言い換えると、 $\sigma(n)$ で $n$ の約数の和をあらわすとき、 $\sigma(n)=\sigma(\sigma(n)-n)$ となる自然数 $n$ が友愛数である。 友愛数が無限に多く存在するのか、 また偶奇の異なる友愛数の対は存在するのか、 など友愛数に関する未解決の問題は多く存在する。 本講演では、友愛数に関する未解決の問題と既知の結果、 および講演者自身の結果について紹介する。

日時(Time) 2012年 1月 24日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 北山貴裕 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) 非可換Reidemeister torsionの応用
場所(Place) 数理解析研究所110号室(RIMS, Room 110)
概要(abstract) 基本群の表現に付随して定義される位相不変量Reidemeister torsionの基礎的事項と最近の研究の発展について概説する. 特に,Friedl-Vidussiによる,3次元多様体が$S^1$上のファイバー束であるための十分条件を与えること, Muellerによる,奇数次元双曲多様体の体積を漸近的に近似すること,合田-Pajitnov,講演者による, S^1値Morse理論が定めるLefschetz型zeta関数との関係式の非可換化について紹介したい.

日時(Time) 2012年 1月 10日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 宮部賢志 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) ランダムネス入門
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 本講演ではalgorithmic randomnessの理論の紹介をする。 前半ではrandomnessがどのように研究対象となっていったか、 その歴史を紹介しながら、確率、統計、予測理論、エルゴード理論、 などとの関連について話をする。 後半ではrandomnessの理論における最も基本的な事実の一つである、 Martin-Löf randomnessのKolmogorov複雑性による特徴付けの証明を丁寧に説明する。 randomnessの理論においてどのように証明が進むのか見る事で計算可能性の概念が本質的に重要である事を説明する。

日時(Time) 2011年 12月 27日(火) 14:30-15:30
講演者(Speaker) 宮路智行 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) Taylor model法による常微分方程式の初期値問題の解の検証理論について
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) Taylor modelとは多項式と閉区間からなるある種のデータ構造である. 各種演算や関数を定義することで,Taylor modelを系統的に取り扱う. 多くの場合,Taylor modelは何らかの関数の近似多項式及び近似誤差の厳密な包囲区 間と見なされ,数値的検証法に利用される. 素朴な区間演算に基づく方法の一種の拡張であり,より高精度な計算が可能となる. 本講演ではTaylor modelについての簡単なレビューを行い, 常微分方程式の初期値問題への適用について理論と計算例を述べる.

日時(Time) 2011年 12月 13日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 木下武彦 (京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) 線形化逆作用素を用いた非線形常微分方程式系に対する解の検証理論
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 本講演では非線形常微分方程式系の初期値問題に対する解の新しい検証手法を提案する. 本手法は近似解を計算する部分と,厳密解を検証する部分に分離されており, さらに,近似解は任意のアルゴリズムを用いて計算してよい.このように, 本手法はこれまで得られてきた近似解法を利用する事ができ, その近似解を用いた検証手法として有用であると考えられる. 講演では幾つかの数値例を紹介し,提案手法の持つ性質を考察する.

日時(Time) 2011年 11月 29日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 桂幸納 (京都大学情報学研究科)
タイトル(Title) 定常輸送方程式の境界値問題に対する上流差分と台形公式による数値解析
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 近赤外光或いは可視光を用いて生体の断層画像を撮影する拡散光トモグラフィ (Diffuse Optical Tomography, DOT)という技術がある.DOTの研究では生体内での光の伝播は輸送方程式と呼ばれる微分積分方程式により光子の密度として記述されると考え られており,その実用化には生体内での光の伝播の数値シミュレーションが必要である. 講演では,定常輸送方程式の境界値問題に対して上流差分に基づく離散スキームを提案し,その収束性について述べる.また本スキームによる数値計算例を紹介したい.

日時(Time) 2011年 11月 15日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 水谷治哉 (数理解析研究所研究員)
タイトル(Title) シュレディンガー方程式の基本解の構成と平滑化作用
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) シュレディンガー方程式の初期値問題に対して、 解作用素(時間発展群)の超関数核を基本解と呼びます。 基本解は方程式の構造をよく反映していると考えられるので、 その具体的表示(あるいはその近似)を構成する事は基本的な問題の一つです。 この講演では、まずユークリッド空間上での先行結果について概説し、 その後、計量が漸近的平坦あるいは漸近的錐型の場合について講演者の最近の研究について紹介します。

日時(Time) 2011年 11月 1日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) Michele BASALDELLA (数理解析研究所 研究員)
タイトル(Title) Dilators: a gentle introduction
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) We aim to recall some basic aspects of the concept of dilator, a notion which has been introduced in proof-theory (a branch of mathematical logic) by J.-Y. Girard about 30 years ago. Essentially, a dilator is a certain kind of endofunctor of the category of the ordinal numbers, which can be thought as an abstract counterpart of the more concrete system of ordinal notation which are abundant in proof-theory. In this introductory talk, we recall the notion of denotation system (a kind of generalization of the Cantor normal form representation of the ordinal numbers), the notion of dilator, and show a correspondence between them.

なお、この講演は英語で行われます。

日時(Time) 2011年 10月 18日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 丹下基生
タイトル(Title) 4次元多様体の記述法とその応用
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 向きづけられた閉4次元多様体を記述する方法として handle picture(Kirby diagram)がある。 この手法は4次元多様体を結び目を使って可視化する方法の一つであり、 広く用いられている。
  この講演ではその手法の初歩から解説した後、 いくつかの4次元多様体の絵を描く方法を解説する。
  またhandle pictureからわかる4次元多様体特有の困難さ (エキゾチックな構造)について講演者の結果を交えつつ話す予定である。

日時(Time) 2011年 10月 3日(月) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 末永幸平 Kohei Suenaga (Kyoto University, JSPS Research Fellow (PD)) (Joint work with Ichiro Hasuo)
タイトル(Title) Programming with Infinitesimals: A WHILE-Language for Hybrid System Modeling
場所(Place) 数理解析研究所110号室(RIMS, Room 110)
概要(abstract) We add, to the common combination of a WHILE-language and a Hoare-style program logic, a constant dt that represents an infinitesimal (i.e. infinitely small) value. The outcome is a framework for modeling and verification of hybrid systems: hybrid systems exhibit both continuous and discrete dynamics and getting them right is a pressing challenge. We rigorously define the semantics of programs in the language of nonstandard analysis, on the basis of which the program logic is shown to be sound and relatively complete.

日時(Time) 2011年 7月 19日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 酒匂宏樹(京大数理研)
タイトル(Title) II_1型フォンノイマン環の構造と離散群の測度同値理論
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) フォンノイマン環は$L^\infty$-関数環の非可換化ともいうべき対象ですが, その中でII_1型フォンノイマン環を分類することは 作用素環論における中心的な課題のひとつです。 他方で, 加算離散群をグロモフの測度同値と呼ばれるゆるい同値関係 で捉えなおす研究も進められています。 講演ではこの二つの理論がどのようなつながりを持っているのか, ``従順性''をキーワードとして概説します。

日時(Time) 2011年 7月 5日(火) 16:00ー 17:00
講演者(Speaker) 野津裕史(早稲田大学高等研究所)
タイトル(Title) 特性曲線法のL2評価 -有限要素および差分スキーム-
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 特性曲線法を用いた数値解法について考える.そのアイデアは, 流体粒子の軌跡を考え,その軌跡に沿って物質微分項を離散化 することにある.自然な数値解法であり,流れの特徴を捉える 数値解法として期待されている.近年,我々は同法と差分法を 組み合わせた特性曲線差分法において離散的なL2評価が可能で あることがわかった.講演では,実際の数値計算や理論解析に ついて有限要素スキームと差分スキームを対比しつつ結果を述 べる.また,基礎的事項や本研究の動機にも力点をおく予定で ある.

日時(Time) 2011年 6月 21日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 船野敬(京大数理研)
タイトル(Title) Concentration, convergence, and eigenvalues of Laplacian
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 非負Ricci曲率の仮定の下で、測度の集中現象と閉リーマン多 様体上のラプラシアンの固有値の挙動の関係について塩谷隆氏(東北大)との共同研 究で得られた結果をお話する。その応用としてラプラシアンの固有値の間の次元普遍 不等式についても言及したい。なお本講演は4月12日に微分トポロジーセミナーで 講演した内容と同じものとなる予定である。

日時(Time) 2011年 6月 7日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 友枝恭子 (京大数理研)
タイトル(Title) Analyticity and smoothing effect for the fifth order KdV type equation
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) KdV階層の一つである5次KdV方程式の初期値問題について考察する。 KdV階層の第二番目に現れる通常のKdV方程式については, K.Kato-Ogawa('00)により時空間解析的な時間局所解の存在及び 平滑化効果が証明されている. しかし第三番目に現れる5次KdV方程式については, 時空間解析的な 解の存在及び平滑化効果は証明されていない。 その原因の一つは, 二つの強い非線形項のためK.Kato-Ogawaの論証が適用できな いからである。 我々はこの二つの非線形項について考察したところ, 一つは通常のKdV方程式の非線形評価で用いられた証明法をより精密にすること で解決できた。 本講演では, これらの結果について時間が許す限り紹介する。

日時(Time) 2011年 5月 24日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 田中幹也
タイトル(Title) ヒルベルトの第14問題と加群上の局所べき零導分
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) $k$を標数$0$の体とする.$R=k[x_1,\dots,x_n]$を$k$上の$n$変数多項式環とし,$K $を$k$と$Q(R)$の中間体とすると,$R\cap K$は$k$-代数として有限生成であるかと いうのがヒルベルトの第14問題である.ここで,$Q(R)$は$R$の商体である.これま でに,ヒルベルトの14問題の反例は多項式環上の局所べき零導分の核として数多く作 られてきた.局所べき零導分の核が有限生成になるかという問題は,$3$次元以下は 肯定的な結果が得られており,$4$次元以上は部分的な結果しか得られていない.
  局所べき零導分を環上だけで考えるのではなく,加群上にまで拡張したものを新たに 導入することで局所べき零導分の性質をより深く調べられるのではないかということ で,「加群上の局所べき零導分」を研究テーマとした.加群上の局所べき零導分の核 の有限生成性およびヒルベルトの第14問題との関連について,これまでに得られた結 果を紹介する.

日時(Time) 2011年 5月 10日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 尾高悠志(京大数理研)
タイトル(Title) 代数多様体の安定性と“局所正値性”(Seshadri定数)
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 代数多様体上の豊富(曲率が正たり得る)な1次元正則ベクトル束 (線束)の“局所的”正値性を測るSeshadri定数という正実数の不変量がある. 歴史的にはC.Seshadriによる線束の豊富性安定法(古典的)を名の由来とし, Demaillyによって20年ほど前に標準線束の“正値”性に関する藤田隆夫先生の予想の解決に動機づけられて導入されたものである.Mirandaによる病的な例を一つの契機に当初の目標は忘れ去られたが,むしろ思わぬ他の理論との関連が見つかってきている.
今回のTea timeでは偏極多様体(X,L)(つまりX:射影多様体,L:豊富な線束)がGIT安定か不安定かという問題に,LのSeshadri定数が直接的に深く関わると示したい. 多様体のGIT安定性とは,標準的なKahler計量(Kahler-Einstein計量等)の存在と同値と予想されつつ(特にDonaldson-Tian-Yau予想),代数幾何的なモジュライ構成にも関わる問題でもある.
この不思議な関係はRossによる(“部分的な”K安定性である)slope安定性の研究に 端を発し,講演者がK安定の枠組みに拡張した.
ここ一年程に発展した/しつつある応用(Hwang-Kim-Lee-Park'10, Odaka-Sano'10, および最近の講演者の岡田拓三氏・藤田健人氏との共同議論の成果)では特にFano多様体においてTianによるalpha不変量,多様体の有理性問題に端を発する「双有理超剛性」,森先生による端射線理論といった別起源の理論が,Seshadri定数を介して安定性の判定問題に結び付いていく.

日時(Time) 2011年 4月 26日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 高尾尚武 (京大数理研)
タイトル(Title) 代数的基本群への外ガロア作用
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 代数的基本群と呼ばれる、位相的基本群の代数的な対応物があります。例えば複 素数体上の代数多様体の場合には、付随する複素解析空間の位相的基本群の副有限完 備化となります。 代数的基本群には(多様体の定義体の)絶対ガロア群が(内部自己同型の不定性を 除いて 、)自然に作用しています。 現在、体に関する情報を取り出す方向と多様体に関する情報を取り出す方向の大 きく2つの動機から、この外作用についての研究が行われています 。 この講演では、代数的基本群という概念の復習から始め、講演者の研究を中心に これまでにこの分野で得られた結果について、時間の許す限り紹介します。

日時(Time) 2011年 3月 1日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 大川領(京大数理研)
タイトル(Title) トーリック多様体の導来圏
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) Bondal 氏によるObervolfach report, 3 (1), 284-286, 2006 の説明をする。 完備かつ滑らかなn次元トーリック多様体のデータから、n次元実トーラスに階層構造が入る。 各階層を頂点、階層の内点間を結ぶ道のホモトピー類を矢として関係つき箙が得られる。 Bondal 氏の主張によると、ある種の条件の下、この箙表現の導来圏を通して、 トーリック多様体の連接層のなす導来圏とn次元実トーラス上の先の階層構造を持つ 構成可能層の導来圏の圏同値が得られる。 これを、いくつかの具体例により説明する。 また、関連する発表者自身の結果について説明する。

日時(Time) 2011年 2月 22日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 木村嘉之(京大数理研)
タイトル(Title) Cluster algebras and dual canonical basis
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) cluster algebraとは, Fomin-Zelevinskyによって2002 年に導入された 有理関数体F = Q(x_1, . . . , x_n) の部分代数で, initial seedと呼ばれる不定元x_1, ... x_nから mutationと呼ばれる操作で得られるcluster variableとよばれる元たちで生成されるもので、 Grassmann多様体の斉次座標環におけるPlucker座標たちの一般化と考えることができる。 cluster algebraのもつ組み合わせ的な構造は、 多元環の表現論や様々な分野との関わりを持ち、非常に盛んに研究されている。 講演では、cluster algebraの定義や簡単な例を紹介したあと、いくつかの基本的な性質や予想を述べたい。

日時(Time) 2011年 2月 1日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 星野直彦(京大数理研)
タイトル(Title) GoI (Geometry of Interaction)とラムダ計算の意味論
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) ラムダ計算は関数型プログラミング言語の核となる部分を形式的な形で記述したものです。 このラムダ計算に関する性質を示す方法の一つが圏論的意味論(モデル)で、 例えば、集合と関数の圏(Set)では型は集合、ラムダ項は関数として解釈されます。 Girardによって導入されたGoI(Geometry of Interaction)は(線型)ラムダ計算の意味論ですが 他のラムダ計算の圏論的意味論と異なり、ラムダ項の解釈に高階のデータ構造が現れないという 特徴を持っています。この性質はGoI解釈がInt構成によって得られるcompact closed categoryを用いて 与えられている事に由来しているという事ができ、またこの性質に着目するとGoI解釈から(線型) ラムダ計算のある意味での実装を得る事ができます。 今回はラムダ計算のGoI解釈を構成する方法を圏論的な視点から解説したいと思います。
キーワード(Key words) Int構成、compact closed category

日時(Time) 2011年 1月 25日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 横田巧(京大数理研)
タイトル(Title) Banach 空間の幾何学入門
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 近年、微分幾何学の一分野でもある距離空間の幾何学において、Banach 空間の幾何学とその理 論計算機科学との繋がりが注目されています。例えば Cheeger-Kleiner(-Naor) による Heisenberg 群のL^1-空間への双リプシッツ埋め込みに関する研究があります。彼らの研究の動機の一つ は、最適化理論における最疎カット問題に関わる Goemans-Linial 予想に対する反例を与えるこ とでした。 有限距離空間の埋め込みは、今でもそれ自体興味ある研究テーマです。例えば、リーマン多様体 (又はその拡張である Alexandrov 空間)や Banach 空間に埋め込まれた有限点集合から、その 空間の「曲率」や「タイプ・コタイプ」等の情報を得ることが出来ます。有限距離空間を与えら れたデータと見なせば、その Euclid 空間への近似埋め込みの構成は応用上重要となります。 今回の講演では、講演者が専門外の立場から Banach 空間の幾何学に関する最近の発展について 概観したいと思います。
キーワード(Key words) Banach 空間・距離空間・埋め込み

日時(Time) 2010年 12月 21日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 大橋久範(名古屋)
タイトル(Title) K3曲面の群作用と有限単純群のつながりについて。
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) モジュライ問題や導来圏の文脈でも頻繁に現れる 代数多様体の一つにK3曲面という複素二次元コンパクト多様体があるが、 実はこれらの曲面の正則自己同型群の構造の中にMathieu群などの 散在型有限単純群が現れることがある。K3曲面と単純群を(少なくとも 技術的には)結び付けているのが階数24の偶格子(偶数値二次形式) であり、オイラー数24のK3曲面にはコホモロジー群の上に定義された カップ積として現れる。一方、階数24の正定値格子は偶然24種類あり、 これらの中でも面白い構造を持つものの自己同型群からMathieu群ができる。 あるいは、非自明な多重可移群として特徴付けられるMathieu群が24次の 対称群の中に現れるという言い方もできる。
tea timeではこれらの群や格子の定義をしつつ、K3曲面の コホモロジー格子に手を加えて単純群の性質を応用する過程を 説明したいと思う。
キーワード(Key words) K3曲面、格子、Mathieu群

日時(Time) 2010年 12月 14日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 西郷甲矢人(数理解析研究所)
タイトル(Title) 数え上げ論から量子確率論へ
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 量子確率論は、量子物理学の基礎概念を数学的に抽出したものである一方、古典確率 論の「非可換化」を考える数学の一分野です。ここでは、確率論における「独立性」 あるいは「中心極限定理」のアナロジーが重要になります。実は、このアナロジーは 一意的ではなく、多様な独立性があり得ることが知られています。それらに対してあ る種の普遍性を要求すると、「可換独立性(通常のものの自然な一般化)」「自由独 立性」「ブール独立性」「単調独立性」の4つが得られ,対応する「中心極限定理」 は、それぞれガウス分布、ウィグナー半円則、ベルヌイ分布、逆正弦則を「極限分布」 として成立します。
講演者は、これらの独立性および中心極限定理を統一的にとらえるために、極めて簡 潔な組合せ論的方法を開発してきました。まず、「単調中心極限定理」にはこれまで 簡潔な組合せ論的証明が欠けていたので、それを与えました。そこで導入した考えを もとに、長谷部高広氏との共同研究では、古典確率論および量子確率論で用いられて きた「キュムラント」とその類似概念の一般化を通して、(従来の意味でのキュムラ ントを考えることが不可能な)単調確率論に付随する「一般化キュムラント」を定義 し、その存在・一意性を確立し、その系として単調中心極限定理および単調版「ポア ソンの少数の法則」を証明しました。
一時間という短い時間ですので、どこまでお話しできるか分かりませんが、確率論的 対象と組み合わせ論的対象とが非可換代数を通して結びつくことの(少なくとも講演 者にとっての)興味深さをお伝えできれば幸いです。
キーワード(Key words) 量子確率論、単調独立性、キュムラント

日時(Time) 2010年 12月 7日(火) 13:30-14:30
講演者(Speaker) 梶野 直孝 (京都大学 情報)
タイトル(Title) 自己相似フラクタル上のLaplacian・熱方程式
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) フラクタルとは滑らかな図形で近似することが不適当な「粗い」構造を 有する図形をいい,その自然科学における重要性がB. B. Mandelbrotにより 指摘されて以来フラクタルは理論・応用の両側面から盛んに研究されてきた. 解析学の立場からは,熱や波動の伝播といった物理現象を数学的に厳密に 記述する為にフラクタル上における熱方程式・波動方程式の定式化とその 解析という問題意識が持ち上がり,近年までに様々な研究成果が得られている. 現在までの研究は「自己相似フラクタル」と呼ばれる,理想的な自己相似性を 有するフラクタルを主な対象としてきたが,そのような理想的な状況において さえ研究の進展には様々な困難があり,基本的な未解決問題が数多く残されている. 本講演では代表的な自己相似フラクタルとしてSierpinski gasketとSierpinski carpetを例にとり,その上でどのようにしてLaplacianや熱方程式を定義するか, またLaplacianの固有値・固有関数や熱方程式の解の性質についての既知の結果 などを解説する.特にフラクタルに特有の現象として,熱核の劣Gauss型 評価や固有値・熱核の振動などの事実を重点的に説明するつもりである.

日時(Time) 2010年 11月 16日(火) 13:30-14:30
講演者(Speaker) 田中亮吉(京都大学 数学教室)
タイトル(Title) 結晶格子の幾何とスケール極限
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 結晶格子とは自由アーベル群の作用を持つ無限グラフのことであり、 正方格子、三角格子、六角格子、などを一般化したものです。 このグラフの上のランダム・ウォークの漸近挙動については、 小谷-砂田によって、1990年くらいから離散調和写像との関連を通して研究されて来ました。 一方、統計力学や流体力学的極限では相互作用する多数の粒子の系のスケール極限が問題になります。 そこでは、局所平衡という考え方が重要になっているように思います。 tea timeではこの考え方が結晶格子の上でどのように考えられるか、また、 結晶格子の局所的な構造とどのように結びついているかをお話できればと考えています。

日時(Time) 2010年 10月 26日(火) 13:30-14:30
講演者(Speaker) 深谷友宏(京都大学 数学教室)
タイトル(Title) Coarse geometry and Topology of Higson corona
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) Coarse geometryとは標語的にいえば,距離空間を荒く見たときの 大域的な振る舞いを調べる幾何学です.その背景として, Novikov予想や Baum-Connes予想があります.この講演ではそうした背景について簡単に 説明した後で,距離空間の無限遠境界を利用するというHigsonのアイディア を紹介します.HigsonはHigsonコロナと呼ばれる境界を導入しました. HigsonコロナはCoarseカテゴリーからCompact Hausdorff空間への関手に なっているなど,良い性質を持っている反面,非常に複雑で 具体的には手のつけられようが無いような空間になっています. Higsonコロナと(Coarse版)Baum-Connes予想との関連を述べた後, 時間があれば,Higsonコロナのトポロジーに関する講演者の結果を 述べたいと思います.

日時(Time) 2010年 10月 12日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 近藤剛史(神戸大学)
タイトル(Title) 距離関数の凸性と群作用の固定点
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) Garland は 1973 年、Serre によって予想されていた p 進リー群の 格子に対するコホモロジーの消滅を示すために p 進曲率と呼ばれる線形作用素を導入して、その固有値の評価と 群のコホモロジーの消滅を関係付けて、 予想の部分的な解決を得た。 Garland の手法はさまざまな拡張を経て、井関氏、納谷氏、および Gromov により、単体複体に作用する離散群の CAT(0) 空間への作用の 固定点定理という形に発展させられた。 この固定点定理を示すために本質的なのは、 重心をとるという操作と、ある種のスペクトルギャップである。
本講演では、より一般に距離空間上の距離関数がある種の凸性を持つと 重心の概念が定義され、スペクトルギャップの仮定の下で そこへの群作用の固定点定理を得ることができることを紹介したい。
キーワード(Key words) p-uniformly convex space、重心、調和写像、スペクトルギャップ

日時(Time) 2010年 7月 20日(火) 13:30ー 14:30
講演者(Speaker) 森山 貴之(数理解析研究所)
タイトル(Title) 葉層構造と横断的幾何構造とそのモジュライ
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 葉層構造とは多様体に敷き詰められた部分多様体(葉)の族の事であり、 各点において、葉の方向とそれに横断的な方向に分解できる。 よって、横断的幾何構造とはその葉空間(多様体を同じ葉の点は同一視する という同値関係で割った商空間)上の幾何構造と考える事が出来る。 しかし、一般にこの葉空間は大変複雑な空間であり、 ハウスドルフですらない場合もある。 こういった場合も込みで横断的な幾何構造をどのように捉え、 調べていくかを基本から簡単に説明して行くつもりである。 タイトルにあるモジュライについては結果と例に触れられれば良い、 というくらいのスタンスに留める。又、そこで使われる解析や 重み付き射影空間などの解析や(複素)代数幾何的なお茶受けも 必要に応じて提供するつもりなので、分野を問わない気軽な時間に なるよう心がける。
キーワード(Key words) 葉層構造、横断的幾何構造、モジュライ

日時(Time) 2010年 7月 13日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 嶽村 智子(京都大学 数学教室)
タイトル(Title) 斜積拡散過程とその時間変更
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 時間の経過に伴ってランダムな値をとる系を表す確率過程は、 粒子の運動を数学的にモデル化したものとして捉えることができる。その様な 確率過程の中で、過去の情報に依らずに現在の情報のみが未来に影響をする過程 をマルコフ過程という。本講演では、マルコフ過程の中でも標本路が連続である 拡散過程を取り扱う。特に斜積拡散過程という、独立な二つの拡散過程の一方の 過程がもう一方の過程の時間を支配するものに着目する。d次元ブラウン運動が ブラウン運動の長さにより定義されるベッセル過程と球面上のブラウン運動の斜 積により表現されることを紹介し、ここでは一次元拡散過程と球面上のブラウン 運動の斜積拡散過程について得られた結果を紹介する。 本講演では拡散過程に対応する二階微分作用素や平均で定義される半群、また ディリクレ形式にふれ、斜積拡散過程だけでなく時間変更によって得られるジャ ンプや消滅も起こりうる過程に対応するディリクレ形式についても具体的に与え たい。 本研究は、連続な標本路をもつ過程の列をある仮定のもと極限をとると極限で は連続でないものが現れるという点が自身の一番興味深い所ではあるが、今回は その点に焦点をあてず、斜積拡散過程とその時間変更に対応するディリクレ形式 について講演を行う。
キーワード(Key words) 拡散過程・斜積・ディリクレ形式

日時(Time) 2010年 6月 22日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 和田 堅太郎(数理解析研究所)
タイトル(Title) Blocks of category O for rational Cherednik algebras and of cyclotomic Hecke algebras of type G(r,p,n)
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 本講演では, 複素鏡映群に付随した rational Cherednik algebra (以下,RCA) の 表現論に関して, 基本的な概念や考え方を説明してみようと思います。しかし, rational Cherednik algebra そのものを扱うと, (難しい話ではありませんが) 不慣れな 方には分かりにくくなってしまうかもしれないので, タイトルの結果を得るために必 要な基本的な事柄を, 一般の有限次元代数の表現論の言葉で説明して, もし時間が許 せば, RCA 及び, cyclotomic Hecke algebra(以下, H)の場合にどのようになってい るかをお話したいと思います。 まず, RCA の加群のなす圏の category O と呼ばれるある充満部分圏を考えると, category O は highest weight category になることが知られています。highest weight category は, quasi-hereditary algebra と呼ばれるクラスの代数の加群のな す圏と同値になります。さらに, category O は H の quasi-hereditary cover と呼 ばれるものになっており, それを通じて, category O と H の加群のなす圏とは密接 に関係しています。特に, category O のブロックと H のブロックとは1対1に対応 することが分かります。一方で, G(r,p,n) 型の cyclotomic Hecke algebra は, G(r,1,n) 型の cyclotomic Hecke algebra の部分代数となっており, その間に Clifford Theory が成立します。また, G(r,1,n) 型の cyclotomic Hecke algebra のブロックの 分類は既に知られています。以上のことを用いて, G(r,p,n) 型のブロックの分類を 得たというのがタイトルの内容です。 ここで使っている考え方を, 予備知識を仮定せずに説明してみようと思います(上手 くいくかは知りませんが)。なので, RCA そのものはほとんど説明することはない と思うので, RCA 自体に興味がある方はご勘弁ください。
キーワード(Key words) モジュラー表現, quasi-hereditary algebra, quasi-hereditary cover, Clifford Theory

日時(Time) 2010年 6月 8日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 中村 伊南沙(数理解析研究所)
タイトル(Title) 曲面結び目と曲面ブレイド、特に自明なトーラスの被覆の形をした曲面結び目について
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 古典的に広く研究対象とされてきた3次元空間内の1次元の結び目やブレイドの拡張された概念として、 4次元空間内の曲面結び目や曲面ブレイドが定義される。曲面結び目(surface link, surface knot)と は、4次元空間の中への閉曲面の埋め込みのことである。任意の向きづけられた曲面結び目は、ある曲 面ブレイド(surface braid)の閉包の形で、すなわち自明な球面S^2上の分岐被覆の形で表すことができ ることが知られている。これは1次元のAlexanderの定理の2次元版である。
そこで、曲面結び目の新たな構成法として、自明な球面を自明なトーラスにするという方法が考えられ る。すなわち、自明なトーラスの分岐被覆の形をしている曲面結び目というものを考えることができる。 このような曲面結び目をトーラス被覆結び目 (torus-covering link)と呼ぶことにする。
曲面結び目がある曲面ブレイドの閉包の形をしているとき、それのI×S^2への射影による像の特異点集合 を考えると、特異点集合のS^2への射影はS^2上のグラフになっている。 このグラフにある種のデータを付け加えたものをS2上のチャート(chart)という。 逆に、S^2上のチャートが与えられたとき、それから元の曲面結び目を再構成することができる。 定義より、トーラス被覆結び目はトーラス上のチャートで表すことができる。 この講演ではまず曲面結び目、曲面ブレイド、及びチャートの定義を述べ、 チャートと曲面ブレイドがどのように対応しているかを説明する。 時間があれば講演者が研究対象としているトーラス被覆結び目について述べ、いくつか例を挙げる。
キーワード(Key words) 曲面結び目、曲面ブレイド

日時(Time) 2010年 5月 25日(火) 13:30ー14:30
講演者(Speaker) 本多 正平(数理解析研究所)
タイトル(Title) Riemann多様体の収束・崩壊とRicci曲率
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) Riemann幾何学の大きな分野の一つに,Riemann多様体の収束,崩壊と呼ばれる現象を扱う分野がある. この分野は早くに,Cheeger,深谷,Gromov氏らによって研究され, 近年における塩谷,山口氏らによる重要な研究が, PerelmanによるPoincare予想の証明の中で本質的に用いられたことは記憶に新しい. このRiemann多様体の収束理論では曲率が深く関係するが, 考える曲率が,断面曲率かRicci曲率であるかによって,その研究方法,対象は大きく異なる. 本講演では,Riemann多様体の収束理論の出発点の一つであった, 有限性定理の一つを紹介し,それがどのように収束理論と関わるのか, そして,考える曲率が断面曲率とRicci曲率とでは収束理論にどのような差がでてくるのか,を説明したい. また,時間が許せば,講演者のRicci曲率に関わる収束理論に関して得られた,ささやかな結果を紹介したい.
キーワード(Key words) Ricci曲率,幾何学的測度論,Gromov-Hausdorff収束

日時(Time) 2010年 5月 11日(火) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 桑原 敏郎(数理解析研究所)
タイトル(Title) 有理Cherednik代数の超局所化と表現論
場所(Place) 数理解析研究所402号室(RIMS, Room 402)
概要(abstract) 今回扱う対象である巡回群に付随する有理Cherednik代数はA型Klein特異点 の量子化(非可換変形)として構成される非可換な代数です。これは半単純 Lie代数の表現論とも結びついている代数で比較的単純ながらも興味深い 対象です。Klein特異点の特異点解消として得られるシンプレクティック 多様体のシンプレクティック構造の変形量子化を用いると、代数幾何学で されているのと同じように大域的な対象である有理Cherednik代数を 「局所化」して多様体の上の代数の層を構成できます。 この構成から有理Cherednik代数の加群を多様体の上で局所的に研究する ことで有理Cherednik代数の表現論へ応用することができます。実際に 有理Cherednik代数の標準加群・既約加群といった特別な加群を局所化 して得られる多様体の上の層が超局所解析の視点からは確定特異点型の 微分方程式と対応することを紹介します。
キーワード(Key words) 有理Cherednik代数、超局所解析、Klein特異点

日時(Time) 2010年 3月 11日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) Anne-Sophie Kaloghiros
タイトル(Title) Finite generation of the canonical ring.
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) I will discuss work of Vlad Lazic. The canonical ring of a smooth projective variety is a very important birational invariant. Since the 1980s, finite generation of the canonical ring has been seen as a standard consequence of the Minimal Model Program (MMP), i.e. as a corollary to the existence of minimal models and the abundance conjecture. The result was known in dimension up to 3, and followed from the work of Mori (and others) on the existence of flips. Recent developments in higher dimensional geometry (Birkar-Cascini- Hacon-McKernan) imply that the canonical ring is finitely generated in all dimensions. In this talk, I will discuss this foundational result, and present V. Lazic's direct proof of finite generation of the canonical ring. This proof is remarkable in that it does not use the MMP, and hence suggests an important shift in perspective in the subject.

日時(Time) 2010年 2月 25日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 佐藤文敏(香川高専)
タイトル(Title) Tautological ring of moduli of curves via localization
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) At first, I will explain the Kontsevich formula for rational plane curves and how important relations in tautological rings are. Then I will give a brief explanation of a method to obtain relations in tautological ring via localization.

日時(Time) 2010年 2月 4日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 土井 護(東京工業大学)
タイトル(Title) シリンダー型境界をもつケーラー多様体上のカラビ予想
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 本講演では、シリンダー型境界をもつケーラー多様体上での モンジュ・アンペール方程式の可解性および漸近的コーン型リッチ平坦計量 の存在について述べる。さらにその解の漸近挙動を精密化した結果を与える。

日時(Time) 2009年 12月 17日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 尾高 悠志(京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) 代数多様体の安定性
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) (a): コンパクトリーマン面のモジュライは構成されて久しく,近年超弦理論の影響 もあり,既に盛んに研究されている対象であるが,(複素)二次元以上の多様体とな るとまず構成の段階からきちんと片付いていない.そもそもどのような多様体をモジュ ライでパラメトライズしうるか?

(b): 一方でコンパクトリーマン面は一意化(普遍被覆)を介して常に定曲率計量が 入る.(複素)二次元以上ではいつでも入ると限らないが,こういった標準的な計量 が入る場合は幾何的応用において有意義である.どのような多様体に入るのか?

これら二つの問がほぼ同値であるという哲学の下,近年特に微分幾何側で研究が盛ん である.同値であろうともどちらの解決も一般には困難だが,講演者は最近その基礎 的公式を代数幾何側から与えて,YauのCalabi予想解決の代数的“復元”をし,また 特異点を許してそれを発展させて問の森プログラムとの“相性のよさ”を一般的に示 した.高度な用語はなるべく控え,また問題の特殊な場合として,完全に凸多面体で 記述できるトーリック多様体の場合を楽しみたい.凸多面体に対する初等的で非自明 な結果や(未解決)問題が現れる.

日時(Time) 2009年 12月 3日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 榎本 直也(京都大学理学研究科)
タイトル(Title) 量子群とヘッケ環のLLTA理論
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 量子群の表現に付随すると特別な基底を用いて、ヘッケ環のモジュラー表現の組成 重複度を記述するというLLTA理論について紹介します。 まず、対称群を例に、有限群の複素線型表現の基本的な内容について簡単に紹介します。
次に、やはり対称群を例に、表現の係数体を取り替えることで、表現の完全可約性 が崩れる様子について紹介し、完全可約性が崩れる場合の非可換代数の表現論につい て、いくつかの問題意識を紹介します。
最後に、ヘッケ環とその表現について、完全可約性が崩れる場合に、量子群の表現 論からくる結晶基底や大域基底を用いて組成重複度を記述するLLTA理論について説明 しようと思います。

日時(Time) 2009年 11月 19日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 佐野 良夫(京都大学数理解析研究所)
タイトル(Title) マトロイドと最適化
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) マトロイドとは、線形空間における一次独立性の一般化として、 1935年にH. Whitneyによって導入された概念である。 その後、1960年代後半になって、J. Edmondsが離散最適化分野における マトロイド構造の重要性を明らかにした。 この講演では、マトロイドの組合せ構造、マトロイドと離散最適化の話、 および、私が研究している凸幾何上のマトロイドの話を紹介したいと思う。

日時(Time) 2009年 11月 5日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 鈴木 咲衣(数理解析研究所)
タイトル(Title) 絡み目の量子不変量と普遍不変量
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 1984年にJonesによって絡み目の多項式不変量が発見されて以来, 「量子不変量」という絡み目の不変量が多数構成された. これらは量子群とよばれるリボンホップ代数と その有限次元表現を用いて定義される不変量である. 「普遍不変量」とは量子群を用いて定義され, 量子不変量に普遍性を持っているようなタングルの不変量である. この講演では量子不変量と普遍不変量の基本的事項を Jones多項式(U_h(sl_2)と2次元既約表現 に付随する量子不変量)を例に解説していきたい.
キーワード(Key words) Quantum invariant, Universal invariant, Ribbon Hopf algebra, Jones polynomial

日時(Time) 2009年 10月 22日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 土岡 俊介(京都大学RIMS)
タイトル(Title) Hecke環とLie環論 (Hecke algebra and Lie theory)
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) Hecke環の表現論とLie環やその変形である量子展開環の表現論は、 密接に関係していることが知られている。今回は対称群を中心にそのことを解説し、 時間が許せば、講演者の最近の論文(arXiv:0907.4936)の解説をしたい。
キーワード(Key words) Symmetric groups, Hecke algebra, Kashiwara's crystal, Canonical basis, Quantum groups

日時(Time) 2009年 10月 15日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 木村 嘉之(京都大学 数理解析研究所)
タイトル(Title) 箙と結晶基底 (Quiver and Crystal Base)
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 箙の表現論とLie環やその変形である量子展開環の表現論は、 非常に密接に関係している。今回は、 ・箙の表現論のHall代数として量子展開環の構成(Ringel, Green) ・Ringelの構成の二つの"幾何学的持ち上げ" (Lusztig, Kashiwara-Saito) について紹介する。時間が許せば、二つの幾何学的構成の間の比較に関して 話したい。
キーワード(Key words) quiver and its representation, Hall algebra, perverse sheaf, crystal base,

日時(Time) 2009年 7月 23日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 長尾 健太郎(京都大学 数理解析研究所)
タイトル(Title) Hall algebra in Donaldson-Thomas theory
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 与えられたAbel圏に対して,完全列を数え上げることにより,Hall代数と呼ばれる結合代数が定義されます,歴史的には,有限可換p群の研究において導入されたものですが,その後RingelによってHall代数を通じて箙の表現と量子展開環が対応することが発見されて以来,表現論において重要な役割を果たしてきました. ところで,3次元Calabi-Yau多様体上の連接層の数え上げ不変量をDonaldson-Thomas不変量といい,弦理論及びそれに関連する代数幾何における主たる研究対象の1つです.例えば,曲線のイデアル層の数値的同値類に対応するDonaldson-Thomas不変量についてはGromov-Witten不変量との等価性が期待されています.最近では,Donaldson-Thomas不変量の圏論的視点による研究が急速に発展しています. 今回の講演では,一般の数値的同値類に対してDonaldson-Thomas不変量を定義するためには,3次元Calabi-Yau多様体上の連接層のなす圏のHall代数を考えることが自然であり,その副産物としてDonaldson-Thomas不変量の壁越え現象が理解できることを紹介します.
キーワード(Key words) Hall代数,Donaldson-Thomas不変量,3次元Calabi-Yau

日時(Time) 2009年 7月 9日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 山田 智宏(京都大学数学教室)
タイトル(Title) 奇数の超完全数について
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) d が n の約数で (d, n/d)=1 を満たすとき d を n の基準約数という。 n の基準約数の和 をσ^*(n) で表す。 σ(n)=2nを満たす整数 n は完全数として有名だが、これに対して σ(σ(n))=2nを満たす整数 n を超完全数、σ^*(σ^*(n))=2nを満たす 整数 n を基準超完全数という。 超完全数・基準超完全数に関する講演者自身の研究を紹介したい。 なお、超越数論の方法を一部で使用するが、その他は初等的な方法で 議論する。
キーワード(Key words) 整数論的関数、約数、完全数、超完全数、基準約数

日時(Time) 2009年 6月 25日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 瀧 真語(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
タイトル(Title) K3 曲面とスミスの完全系列
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) K3 曲面はその定義から至所消えない正則2形式を持つが、 それを保たない自己同型は非シンプレクティックと呼ばれる。 本講演ではK3 曲面の非シンプレクティック自己同型の 基本事項や、これらに対して統一的な視点を与えた スミスの完全系列について解説する。
キーワード(Key words) K3 曲面、自己同型、スミスの完全系列

日時(Time) 2009年 6月 11日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 浅田 和之(京都大学 数理解析研究所)
タイトル(Title) fibred monad and call-by-value polymorphism
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 本講演では論理、計算体系に関する基礎事項を概説した後、 「カリー・ハワード同型」と「categorical logic」を、 直観主義命題論理=単純型付ラムダ計算=cartesian closed categories 直観主義2階論理=多相型ラムダ計算=fibred cartesian closed category + simple Omega products 型付直観主義集合論=elementary topoi などの例で説明します。これにより、 論理、プログラミング言語、圏論のどれか一つが分かっていれば他の全てを(ある程度)理解できます。 その後時間があれば、「代数」の圏論的な表現であるmonadと値呼びの関係、 およびparametricityについて説明した後、値呼びの多相型ラムダ計算についてお話します。
キーワード(Key words) fibred category, monad, parametricity

日時(Time) 2009年 5月 28日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 塚本 真輝(大学院理学研究科・数学教室)
タイトル(Title) 非コンパクト空間上の解析と無限次元空間の幾何
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 非コンパクト空間上で(非線形)解析を考えると, 多くの場合,無限次元空間が自然に出てきます. そこで,その様な無限次元空間をどうのように調べるか, それについて,細部にこだわらず,ざっくばらんに話してみたいと思います.
キーワード(Key words) 非コンパクト,無限次元空間

日時(Time) 2009年 5月 14日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 岡田 拓三(数理解析研究所)
タイトル(Title) Rationality problem of algebraic varieties
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 本講演では、代数多様体の有理性判定問題についてお話しさせて いただきます。 まずは、これまでにとられてきたさまざまなアプローチについて 簡単に紹介します。 中でも、射影空間の超曲面で非有理的なものを構成する、という Kollarによる結果を中心に述べた後、その結果を重み付き射影空間 の超曲面へと拡張する、という研究について述べたいと思います。
キーワード(Key words) rationality problem, Fano variety

日時(Time) 2009年 4月 30日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 山川 大亮(数理解析研究所)
タイトル(Title) Middle convolution and reflection functor for quiver varieties
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 本講演では
・middle convolutionと呼ばれる,穴あき射影直線上の局所系に対する変換操作
・箙多様体から異なる箙多様体へのreflection functorと呼ばれる同型写像
の紹介をし,最後にこれらの関係について述べたいと思います.
キーワード(Key words) middle convolution, reflection functor, quiver variety

日時(Time) 2009年 3月 12日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 星裕一郎
タイトル(Title) 双曲的曲線の Galois 切断の分離性について
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 体 k 上の双曲的曲線 X が与えられると, X の数論的基本群から k の 絶対 Galois 群への全射準同型が得られ,「基本群を取る」という操作 の関手性から, X の k 有理点はその全射の切断 (Galois 切断) を誘導 する. 本講演では, このようにして得られる「X の k 有理点のなす集 合から Galois 切断のなす集合への写像」がどのようなときに単射にな るか, あるいはならないか, ということについて解説をする.

日時(Time) 2009年 2月 19日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 塚本真輝
タイトル(Title) 非コンパクト空間上の解析と無限次元空間の幾何
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 非コンパクト空間上で何らかの非線形偏微分方程式を考えると, その解のモジュライ空間として,無限次元空間が出てくることが 多い.このような無限次元空間の幾何を私は研究しているのですが, それについて,あまり細かいことを気にせずに,フランクに話してみたい. 従って,正確に定式化した主張を述べるというよりは,アイデアを おおざっぱに話すことを目的とする.

日時(Time) 2009年 2月 5日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 内田 幸寛
タイトル(Title) 高さ関数入門
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 高さ関数とは代数多様体の有理点の「大きさ」を測る関数であり、 例えば、有理点の有限性を示すのに使われる。 本講演では、単純な場合の高さ関数について基本的な性質を紹介し、 簡単な応用を述べる予定である。

日時(Time) 2008年 12月 11日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 森井慶
タイトル(Title) 有界領域における二重対数項を持つ Br\'ezis-Gallouet-Wainger型不等式の最良定数
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 臨界型のSobolevの埋蔵定理を特徴付ける不等式として, $L^\infty$ノルムを高階Sobolevノルムの対数オーダーで評価する Br\'ezis-Gallouet-Waingerの不等式が知られている. 本研究では, 有界領域において, ある状況下でのその種の不等式の最良定数を導出する. まさに最良定数丁度のときは不等式が成立しない為, 更に二重対数項を加え, その係数としての最良定数をも導出する.

日時(Time) 2008年 11月 27日(木) 15:00ー16:00
講演者(Speaker) 桑原敏郎 (Kuwabara, Toshiro)
キーワード(Key words) 有理Cherednik代数、箙多様体、非可換変形、表現論
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 有理Chrednik代数はシンプレクティック特異 点の非可換変形と して定義される。箙多様体はその特異点の解消を与えているが、では箙多様体の非可 換変形はどうすれば構成できるだろう?この答えは実は有理Cherednik代数の表現論 から自然に得られる。

日時(Time) 2008年 11月 13日(木) 15:30ー16:30
講演者(Speaker) 生駒英晃 (Ikoma, Hideaki)
キーワード(Key words) アーベル多様体、退化、p加除群、マンフォード構成など
場所(Place) 数学教室(理学部3号館)306号室(Department of Mathematics, Room 306)
概要(abstract) 高次元大域体上のアーベル多様体にはネロンモデルがないが、なんで ないのか?いつあるのか(非常に特殊な場合)?


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