next up previous
: 参考文献

Date: 2002. 10. 16.
 タイトル  
 TITLE  
不純物を含む溶媒中の高分子-確率論の対象として-
 講演者  
 NAME  
吉田 伸生
 所属  
 INSTITUTION  
京大・理




不純物を含む溶媒に浸された高分子の形状を記述する、と 考えられている確率モデルを紹介したい。 $ S_n$$ d$ 次元格子 $ {\bf Z}^d$ 上の単純ランダムウォークとする。 つまり $ S_n$ は各時刻 $ n=1,2,\ldots $ で独立に、$ 2d$ 個の 隣接格子点を等確率に選んで移動するランダムな格子点である。 このとき、軌道 $ \{(S_n, n) \}_{n \ge 1}$ は時空 $ d+1$ 次元 の高分子(或は界面)のモデルとしてしばしば数理物理学に登場する。ここではこの 軌道が $ S_n$ とは別に用意された確率変数と相互作用する場合に 軌道の統計を考察する。 これは物理的には不純物を含む媒質内での高分子の形状を 観察し、不純物が与える影響を調べることに相当する。 数値実験や発見的議論を含めて現在までに知られている、或は 予想されている主な事柄は以下の通りである;

(a)
$ d \ge 3$ で媒質の不純度が弱ければ$ S_n$ の揺らぎは 純粋媒質の場合と定性的に同じ;即ち 通常のランダムウォークと同様の中心極限定理に従う。
(b)
媒質の不純度が強ければ不純物の配置に応じて $ (S_n, n)$ の限られた軌道に確率が集中し(局在)、 しかも通常のランダムウォークより揺れ幅が大きい。
(c)
$ d =1,2$ では媒質の不純度が弱くても上記 (b) の局在が起こる。
この談話会では上記事柄についての物理的背景も交えた概説から始め、 数学的に厳密な幾つかの結果を紹介する。








Kumiko Matsumura 平成14年10月2日