全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第1回
日時: 2007年4月13日(金)
      16:30−18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 有木 進 准教授
題目: 行列の標準形再入門
要約:
線形代数で習う正方行列の 対角化、三角化の理論は、行列が1つ 与えられたとき、それを座標変換により できるだけ簡単な形にもっていこうとする 理論である。現代数学では、行列が2つ以上 与えられたとき、それを座標変換により できるだけ簡単な形にもっていこうとする 理論が種々の例に対して存在する。 この講義では既約という概念を理解し、 既約なものの分類、という問題意識を持てる ようになるように丁寧に説明する。また講義の 最後に最近講演者が得た結果を例として 紹介する。

Fermat予想はたぶん実用にも今後の数学の 発展にも役に立たない予想であるが、 証明には数学の王道で長きにわたり研究 された成果が必要であった。 実は似たような話は多かれ少なかれありと あらゆる数学の分野で存在し、 数百年とはいかないが10年程度のスパンで 問題が解けたりしている。 普通の数学者とはこのような無名の問題で 一所懸命に考え、10年後に問題が解けることに 十分楽しみを感じている人種である。 (もちろんすぐ解けることも多い。悲観的 にならないようにしよう。ここでは数学者の回りでの 時間の流れ方を言いたかっただけである。) 講演者の提示する例からそのような数学者の 日常を感じ取ってもらえれば講義の目的の半ばは 達成されたといえよう。


"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"