全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第7回
日時: 2007年6月1日(金)
      16:30−18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 長谷川 真人 教授
題目: 対角線論法と不動点
要約:
カントールの対角線論法は、数理論理学と計算機科学において、 様々なかたちで用いられています。有名なところでは、ラッセル の逆理、ゲーデルの不完全性定理、チューリングによる停止性問 題の決定不可能性などがあります。これらはいずれも、矛盾や否 定的な結果を導くための、どちらかというとネガティヴな使われ 方です。
ところが、計算機科学では、自己言及的な(再帰的な) プログラムやデータ構造を扱う際に、対角線論法が、適切な不動 点を構成する技法として、ポジティヴなかたちで現れることがあ ります。
今回は、この、不動点定理としての対角線論法について 紹介し、いろいろな例を統一的に説明したいと思います。

"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"