全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第9回
日時: 2007年6月15日(金)
      16:30−18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 川北 真之 助教
題目: 代数幾何学入門
要約:
代数幾何学で研究される幾何学的対象は代数多様体と呼ばれ,それは連立多項式の共通零点集合として定義される図形である. 楕円,放物線,双曲線に分類される実平面上の2次曲線は代数多様体の初等的な例である.
ここでは2次曲線を実数上で考えているが,他にも整数上,複素数上等,様々な範囲で代数多様体を考察できる. 著名な例として,Fermatの定理は,n が3以上のとき xn + yn = 1 の有理数解 (x, y) は自明な解 (xy = 0 となる解) に限る,と定式化される. これらの例は全て代数曲線であるが,代数幾何学ではさらに高次元代数多様体を扱う.

講義では代数多様体の定義から出発し,抽象化された概念であるスキーム論,代数多様体上の基本的な変換操作であるブローアップ等,代数幾何学の基礎を多くの具体例を挙げながら解説する. 代数多様体が常にコンパクト化できること (或いは,生成点を持つこと) は特有の性質で,その意味と効力を解説する. 最後に代数幾何学における分類理論の最新の様子を紹介する.


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