全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第11回
日時: 2010年7月2日(金)
      16:30−18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 大槻 知忠 教授
題目: 多様体と不変量
要約:
局所的にユークリッド空間と同じ形をしている空間のことを多様体という。 曲面は2次元多様体であり、我々が住んでいる空間は3次元多様体である。 多様体に対して定まる量で、同じ(同相な)多様体に対して同じ値をとる ようなものを不変量という。
不変量は、空間の形によって定まる固有の量であり、 その空間がどんな空間であるのかを記述する言葉である。
1980年代に、数理物理的手法がトポロジーに導入されたことにより、 3次元多様体の不変量が大量に発見された。
この講義では、多様体とは何であるかを簡単に説明し、 古典的な不変量であるホモロジー群と、 量子論に由来する不変量である状態和不変量を紹介する。


参考文献

多様体について

  • 松本幸夫、「多様体の基礎」、基礎数学5、東京大学出版会.

  • 坪井俊、「幾何学I 多様体入門」、大学数学の入門4、東京大学出版会.
ホモロジー群について
  • 一楽重雄、「位相幾何学」、新数学講座、朝倉書店.

  • 小林貞一、「トポロジー」、現代数学ゼミナール3、近代科学社.

"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"