全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり



授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第11回
日時: 2011年7月1日(金)
      16:30−18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 熊谷 隆 教授
題目: カード・シャッフルとマルコフ連鎖
要約:
トランプをするとき、ゲームの前にカードがしっかり混ざるようにカードを切り(シャッフルし)ますが、 何回くらい切ればカードがよく混ざってくれるでしょうか?実は、大体7回切ればよく、しかも7回前後で 急に「よく混ざった」状態になることが、今から20年ほど前にP. Diaconisらによって証明されました。

この講義では、トランプのシャッフルを数学的にどのようにモデル化するか、「よく混ざる」とはどういう ことか、というところから話を起こします。そこで登場するのが、マルコフ連鎖とよばれる、確率変数の族に よるランダムな時間発展です。講義では、マルコフ連鎖の収束についての一般論に触れ、またカード・シャッフルに ついての上述した結果の、組み合わせ論的な計算による初等的証明の雰囲気を味わってもらう予定です。 普段の授業ではあまり扱われない題材ですが、現代数学における「離散」をキーワードにした深い解析の一端を 垣間見てもらいたいと思います。


"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"