全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第3回
日時: 2014年4月25日(金)
      16:30−18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 星 裕一郎 講師
題目: 正方形や長方形の族による複素数体の復元
要約:
複素数全体のなす集合は数学における非常に基本的な対象です。この対象が持つ一つ の重要な(代数的)性質として「この集合内では足算、引算、掛算、割算が自由に行 える」という性質、専門用語を用いますと、複素数全体のなす集合に自然な演算を考 えると「体」になる、という性質が挙げられます。一方、複素数全体のなす集合は、 自然に平面(=複素数平面)を用いて記述することができる、という幾何的な側面も 持ちます。そして、(高校生のときに学習した方もいると思いますが)この複素数の なす集合の代数的構造(=足算や掛算など)と幾何的側面(=平面による表示)は密 接に関連しています。この講義では、この代数的構造と幾何的側面の関連の一部とし て、(1)複素数体の代数的構造を用いて複素数平面に正方形や長方形を容易に描く ことができるという事実、(2)逆に、そのような正方形や長方形の族によって元々 の複素数体の代数的構造を復元できるという事実を解説したいと思います。

"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"