全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第11回
日時: 2015年7月3日(金)
      16:30−18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 星 裕一郎 講師
題目: 平面上の格子と2次体の数論
要約:
平面上の格子とは、大雑把には、合同な平行四辺形で平面を画一的 に覆い尽くすことで得られる図形のことです。平面の向きを保つ相 似変換から生じる格子の対称性、つまり、与えられた格子をその格 子の部分に写す平面の向きを保つ相似変換を考えてみましょう。す ると、ほとんどの格子が「自明な対称性」しか持たないことがわか ります。そして、特殊な格子のみが持つ「自明でない対称性」が、 2次体の数論、つまり、整数係数2次方程式の根となる複素数たち の数論と関わります。
この講義では、まず最初に、後の議論で必要となる代数的整数論の 概念をごく簡単に紹介しようと思います。その次に、平面上の格子 を導入・分類して、格子全体が「ポアンカレ上半平面」という非常 に有名な空間のある商空間でパラメトライズされることを確認しま す。そして最後に、特殊な対称性を有する格子に関する議論を行い たいと思います。
日本語で書かれたこの講義の参考文献として、以下の文献を挙げる ことができます。しかし、この講義では、そこに書かれているよう な難しいことはお話しません。

参考文献:

  • 加藤和也、黒川信重、斎藤毅 数論 I 岩波書店

  • J. H. Silverman(鈴木治郎 訳) 楕円曲線論概説・上 丸善出版

"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"