全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第13回
日時: 2016年7月15日(金)
      16:30−18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 玉川 安騎男 教授
題目: 有限線形群に関するJordanの定理について
要約:
nを自然数とします。n次複素正則行列の有限集合で行列の積について閉じているものを(n次)有限線形群と呼びます。有限線形群の任意の2つの元A, Bが交換可能(AB=BA)であるとき、有限線形群が可換であるということにします。可換な有限線形群は、(同時)対角化可能であることに注意します。

Jordan標準形で有名なCamille Jordan (1838-1922)は、次の定理を証明しました:nのみによる定数 c(n)>0 が存在し、任意のn次有限線形群Gは、可換な有限線形群Hであって、|H|≧c(n)|G| となるものを必ず含む。(有限集合Sに対し、Sの元の個数を|S|で表します。)

この講義は、Jordanの定理とその証明の紹介を通じて、群とその線形表現の概念や性質に親しむことを目標とします。また、Jordanの定理の現代的な発展や応用についても少しふれられればと思っています。

参考文献:
Jordanの原論文は、以下の通りです:

  • C. Jordan, Memoire sur les equations differentielles lineaires a integrale algebrique, J. Reine Angew. Math. 84 (1878), 89-215.
また、別証明が下記の教科書に出ています:
  • C. W. Curtis and I. Reiner, Representation Theory of Finite groups and Associative Algebras, Interscience, 1962.
この講義では、群論や表現論の予備知識は特に仮定しませんが、もし余裕があれば、なんでもよいですので適当な群論や表現論の教科書のはじめの方を少し予習してこられると、より理解が深まるかと思います。例えば、私自身が学生時代に勉強したのは、
  • 近藤武, 群論, 岩波.

  • J.-P. セール, 有限群の線型表現, 岩波.
などです。

"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"