全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり



授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第4回
日時: 2016年5月6日(金)
      16:30−18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 横田 巧 助教
題目: 最適輸送理論と幾何学
要約:
物資を最小総コストで運ぶプランを求める最適輸送問題は、数学的には Monge(-Kantorovich) の問題として定式化され研究されてきましたが、近年、リーマン多様体のリッチ曲率と相性が良いことが発見され、微分幾何学のホットな研究分野の一つになりました。具体的・専門的には、完備リーマン多様体が非負リッチ曲率を持つことと、その上の確率測度全体の空間である Wasserstein 空間においてエントロピー汎関数が凸関数であることの同値性が証明され、それを基にしたリーマン多様体と、より一般の測度付き距離空間の研究が始まりました。さらに最近では、G. Perelman による3次元ポアンカレ予想の証明にも使われたリッチフローと Alexandrov 空間とも関わりながら発展し続けています。この講義では、これらの話題の紹介を試みます。

参考文献:


"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"