全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第6回
日時: 2019年5月24日(金)
      16:30−18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 越川 皓永 助教
題目: 虚数乗法論―歴史的導入
要約:
虚数乗法論は特別な楕円曲線あるいはアーベル多様体と呼ばれるものの整数論 的性質についての理論であり, 志村と谷山によりまとめられた理論は非常に高度なも のです. しかし「虚数乗法」という考え方自体はガウスとアーベルがレムニスケート という曲線を調べたことにまで遡ることができ, それは二百年ほど前のことです. ま た, 彼らの研究は虚数乗法論だけでなく現代数学のいくつかの理論の源ともいえます . この講義では, そのような歴史的な流れに基づいて, 虚数乗法論やその周辺の入門 を試みます.

参考文献:

  • ガロワ理論(上・下), David A.Cox, 梶原健(訳), 日本評論社, 2008・2010.
  • 復刻版近世数学史談・数学雑談, 高木貞治, 共立出版, 1996.
  • アーベル(前編・後編),高瀬正仁, 現代数学社, 2014・2016.

"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"