全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第8回
日時: 2019年6月7日(金)
      16:30−18:00
場所: 数理解析研究所 420号室
講師: 竹広 真一 准教授
題目: 木星・土星に吹く風の謎
要約:
20 世紀後半に始まった探査機による木星と土星の観測により, これらの巨大ガス惑星には 赤道付近の時速数百から千キロメートル程度のとても速い西風と, 中高緯度の縞帯状のパターンに対応して向きを違えた 東西ジェット風が吹いていることが知られるようになりました. このような風がなぜ, どのようにして吹いているかの科学的説明が いくつも試みられてきていますが, 未だに結論が出ていません.

特に, 赤道で西風が吹くことは自転軸から一番遠い場所で 自転より速く大気が回っていることを意味しており, 流体力学の観点からちょっとした謎と考えられてます. 単純な角運動量保存則では自転軸から一番遠い場所では他の場所よりも 減速されねばならず, 何らかの加速メカニズムが必要となります. そのため, 赤道で西風が吹いていることを「赤道加速問題」と 呼ぶこともあります.

中高緯度の互い違いのジェット風も地球とは全く異なった 吹き方をしています. 地球では南北各半球に西風ジェット風が 1 本づつ しか吹いていません. 多数のジェット風がなぜ吹くことができるのか, という謎も流体力学の興味深いテーマとして研究されてきています.

この講義では、観測結果とともに流体力学に基づいた理論と 最近の数値シミュレーション例を解説し, 木星と土星に吹く風の謎に迫ってみたいと思います.

参考文献:

  • 惑星気象学, 松田佳久, 東京大学出版会, 2000.

"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"