宇宙には太陽や地球を始め,多種多様な天体が存在します. しかし,ほとんどの天体に共通して言えることは, 天体の中心に近づくほど高温になる,ということです. 例えば,地球の中心の温度はおよそ 6000 度と考えられていますし, 太陽の中心に至っては 1000 万度と非常に高温だと考えられています. 逆に,天体の外側の宇宙空間は非常に冷たいため, 天体の内側から外側にかけて大きな温度差があるのが一般的です.
食卓に並んだ温かいみそ汁を眺めていると, ぐるぐると具が対流している様子が見られると思います. これは,みそ汁の表面が空気によって冷やされるために 温度差が生じ,これによって熱対流が引き起こされるためです. このように大きな温度差がある状況では, 通常熱対流が起こっていると考えられます.
このみそ汁のような熱対流現象は古くから 流体力学の分野で注目されてきました. この状況を簡単化した, 二枚の平面の間に温度差を与えて熱対流を引き起こすという レイリー・ベナール(Rayleigh-Benard)対流問題は, 1900 年前後に研究され始めて以来, 100年以上にもわたって盛んに研究されています. この問題は実験と理論が高い精度で一致することが分かっており, 非常に興味深い研究対象です. また近年, この問題をカオスの面からとらえる研究もなされており, 流体力学のみならず,広く非線形力学としても レイリー・ベナール問題は重要視されています.
が挙げられます.
例えば,右図に地球内部の構造をラフに描いたものですが,
赤く色付けした外核と呼ばれる部分は液体の鉄を主成分としており,
熱い内核と冷たいマントルに挟まれた球殻領域内で,
熱対流が発生していると考えられています.
上記の三つの特徴が,この外核部分の構造からも見て取れると思います.
私は,この天体規模で生じていると考えられている熱対流の 基本的な性質を調べるため,できるだけ系を簡単にし, その簡単化された系を詳しく調べる,という研究をしています. 特に,回転球殻内の Boussinesq 熱対流問題に取り組んでいます. この問題は,上記の三つの重要事項のみを取り込んだ, 天体規模の熱対流現象を考える際の最も簡単な系の一つであり, 1961年に S.Chandrasekhar によって提唱されて以来, 半世紀にもわたって盛んに研究がなされています.
私は特に,熱対流が発生したときにどのようなパターンが発現し, それがどのあたりまで安定に存在するか, という熱対流パターンの安定性と分岐構造に興味を持っています. また最近では, この安定に存在する熱対流パターンが内外境界面に及ぼす影響についても 興味を持っています.