From nakajima@math.tohoku.ac.jp Mon Jun 14 21:22:50 1993
Path: nakajima
From: nakajima@math.tohoku.ac.jp (Nakajima Hiraku)
Message-ID:
Date: 14 Jun 1993 12:22:50 GMT
Organization: Mathematical Institute, Tohoku University, Sendai JAPAN.
Newsgroups: tohokumath.seminar
Subject: Topology Seminar Announcement
Distribution: tohokumath

次週のトポロジーセミナーの予告

タイトル:Chern-Simons perturbation theory

内容:Axelrod-Singer、KontsevichによるChern-Simons gauge理論への接動論的 アプローチについて紹介する。これは、(少なくとも私には)トポロジーの大きな 新しい波と感じられる。ゲージ理論は既にout of fashionになりつつあると思わ れるが、次に来るものはKontsevichがいうところの`位相的物理学"であろう。 実際、最近非常に話題になっている Vassiliev 不変量も同様にして得られるこ とがほぼ分かっている。

より詳しい内容:
Wittenにより、knotに関するJones多項式が3次元多様体内の一般のlinkに対する 不変量に拡張された。この定義には、Feynman 汎関数積分が用いられていた。 (数学的に正当な定義は、Reshetkhin-Turaev、Kohnoによって与えられた。) そこでキーとなったのは、その不変量と2次元の共形場理論であったが、 Axelrod-Singer、Kontsevichらは量子力学における標準的なテクニックであるとこ ろの接動論を上の汎関数積分に適用した。すなわちWittenの不変量は、3次元多様 体(とその中のリンク)とコンパクトLie群$G$とレベルと呼ばれる自然数$k$に対して 定まるが、これを$k$に関する多項式と思って、$(k+\text{dual Coxeter #})^{-1}$ に関して展開することを試みる。接動論によれば展開の各係数は、汎関数積分を用 いることなく定義可能であり、その式を用いて3次元多様体、およびリンクの不変 量が定義される。ここで$(k+\text{dual Coxeter #})^{-1}$はプランク定数に対応し、 接動論は、量子力学の古典論からの逐次近似に対応することを注意しておこう。

また、接動論をおこなう際にFeynman図形が用いられるが、この種のテクニックは今後 低次元トポロジーで非常に重要な道具になって行くことは明らかと思われる。

中島 啓