From nakajima@math.tohoku.ac.jp Thu Dec 19 12:49:29 1996 Path: tsuru!nakajima From: nakajima@math.tohoku.ac.jp (Nakajima Hiraku) Newsgroups: shitan.math Subject: Witten's talk Date: 12 Nov 1996 17:42:38 GMT Organization: Mathematical Institute, Tohoku University, Sendai JAPAN. Lines: 53 Distribution: world Message-ID: NNTP-Posting-Host: take.math.tohoku.ac.jp 今, CambridgeのNewton研究所でGeometry and Quantum field theoryというシ ンポジウムが行われています. 今週は, ``Witten週間''ということで, 彼が月 火水木金と毎日しゃべる予定です. (水曜は二コマ.) Wittenの話は面白かったです. 彼によれば, 物理学者と数学者の距離は, 数年 前よりも離れているそうで, 数学者にどのように話したらいいのか悩んだ, と 言っていました. それで, 月曜(昨日)の話は数学的にrigorousにやるが, 火曜, 水曜とだんだん物理にシフトして行く, 本当は水曜に話すようにstring theoryから理解しなければいけない, と言っていました. というわけであとの 内容を説明するのはあきらめて, 最初の一回しか聞いていませんが(江口さん によれば, もうネタは割れたと言うことですが), 情報を送ることにします. 3次元の多様体のJones-Witten不変量は, コンパクトなリー群 G と自然数 k が与えられたとき, G-connection の全体のゲージ orbitの空間の上で, Chern-Simons functional の k 倍のexponentialをFeynmann経路積分して得ら れる不変量です. ∫ DA exp(ik CS(A)) ¥mathcal A/ ¥mathcal G これは, ``物理的''な定義ですが, 数学的にrigorousな定義が存在することも 知られています. その一つのアプローチは, 上の汎関数積分をtrivial connectionの回りで接動計算で計算することです. Feynmannグラフを使って漸 近展開の各項をrigourousに定義することができ, これがAxelrod-Singerのア プローチです. これについては, 以前東大で集中講義をしましたし, 私のホー ムページのどっかに説明があるはずですから詳しく書きませんが, 三点グラフ の辺の上には, (d+d^*)^{-1} = グリーン関数を乗せ, 頂点には tr ¥int_{X^3} ・∧・∧・ をおくというものです. Chern-Simons汎関数の二次式の部分が d+d^* に化け て(ここでd^* が出てくるのは, ゲージorbitへのsliceを取るため), 三次式の 部分が上の積分です. さらに, この積分が位相不変量であることを証明するの に, G のLie環のJacobi恒等式が基本的な役割を果たします. Witten (Rozanskyとの共同研究)は, Lie 群 G を hyper-K¥"ahler多様体 M で 置き換えることが出来る, と主張しています. さらに G の場合よりも``やさ しく''なり, G では出てこないperturbativeな不変量(これについての説明は 省略します. Vassiliev不変量やその一般化であるfinite type不変量のことで す.)も出てくるのではないかと言っていました. hyper-K¥"ahler多様体の定義 や性質については省略します. Wittenの主張は, Lie群 G の構造定数の代わりに hyper-K¥"ahler多様体 M の 曲率テンソルを使って, 上のFeynmanグラフの上の積分を考えなさい, と言う ことです. このとき, Bianchiの恒等式がちょうどJacobi恒等式と同じ役割を して, 位相不変性が証明出来るそうです. ここで正確には, 曲率テンソルを突っ 込んでから, M 上で積分することが必要です. Bianchiの曲率の微分の部分が, Stokesの定理で落ちるところがLie群とのただ一つの違いです. この理論の物理的な解釈は, target space を M とし, 3次元多様体 X から M への写像の全体の上の topological sigma model であるそうです. M が hyper-K¥"ahlerであることから supersymmetricな理論が作れるそうです. From nakajima@math.tohoku.ac.jp Thu Dec 19 12:49:52 1996 Path: tsuru!nakajima From: nakajima@math.tohoku.ac.jp (Nakajima Hiraku) Newsgroups: shitan.math,jmath.chat Subject: Donaldson と Taubes の講演 Date: 23 Nov 1996 13:16:37 GMT Organization: Mathematical Institute, Tohoku University, Sendai JAPAN. Lines: 154 Distribution: world Message-ID: NNTP-Posting-Host: take.math.tohoku.ac.jp Xref: tsuru shitan.math:398 jmath.chat:185 講演が昨日終わって, やっと少し余裕が出来ました. 来週は, また講演の数が 増えるので, 忙しくなると思われます. 数学の話の報告はあまりするつもりがなかったのですが, Donaldson と Taubesの講演についてはおおざっぱに紹介することにします. この内容につい てはコメントされても返答するつもりはありませんので, 了解願います. それから, この記事は jmath.chat にも同時に送ることにしました. 中島 啓 ======================================================================= Donaldsonの講演について Casson 不変量の複素数体上での類似を考えます. 以下の話は, formal な話で, モジュライ空間のコンパクト性がないので, 実際には何も出来ていないそうで す. Y を Calabi-Yau 3-fold とし, θを正則 3 形式とします. E --> Y を vector bundle とし, A を E 上の holomorphic structure の全 体とします. G^C を 複素 gauge 群とします. Chern-Simons汎関数の類似とし て, 次の汎関数を考えます. Φ: A / G^C の普遍被覆 ----> C δΦ = ∫ tr(F_A^{0,2}∧δA)∧θ Y 定義から, 臨界点は holomorphic な vector bundle に他なりません. これを ``数える''ことで, 複素 Casson 不変量を定義します. 実数体における Casson 不変量の Lagrangian intersection による定義の類 似として, 次のような状況を考えることが出来ます. S = K3 曲面 M(S) = moduli space of bundles over S 向井さんの結果により holomorphic symplectic manifold になる. Y^+ : 3-fold s.t. K_{Y^+}^{-1} が section s を持つ. S = zero(s) となって Y^+ に入っている. M(S) ⊃ Λ_+ = restrictions of vector bundles over Y^+ Tyurin の結果によって, Lagrangian になっている. 同様に, Y^- が S を含んでいるとして, Y^+ と Y^- を S に沿って貼りあわ せることによって, singular な space Y_0 を取り, その deformation とし て smooth な Y_t が得られているという状況を考えます. (P^4 の 5次超曲面を2次と3次に因数分解される超曲面に退化させる状況が基 本的な例です.) このとき, Y_t 上の holomorphic vector bundle は t → 0 のとき, Λ_+∩Λ_- に収束していると考えるのは自然でしょう. 従って, invariant が, M(S) のなかでの交点数として捉えられます. また, 実数体のときのように 3 --> 4 の類似として, 4次元の反自己双対方程 式が次のように考えられます. 具体的には, Calabi-Yau 4-fold X 上の connectionに対して, F_+^{0,2} = 0 F∧ω = 0 です. 上の, + は complex Hodge *-作用素の self-dual part ですが, これ は正則 4 形式を使って * : Λ^{0,2} --> Λ^{0,2} と定義されるものです. 下の方程式は, Hermitian-Yang-Mills 方程式の類似です. また, この方程式を, octanionを使って G_2, Spin(7)-holonomyを持つ多様体 の上で見直すことが出来ます. N : G_2 manifold, ρ: canonical な closed 3-form (*ρ もclosed form になっているもの) このとき, flat connection の類似として, F_A∧*ρ = 0 を考えます. これ が臨界点になるような汎関数として, Ψ: A / G の普遍被覆 ----> C を δΨ = ∫ tr(δA∧F)∧*ρ N で定義します. このとき, 再び 3 --> 4 (flat --> ASD) の類似を考えると, 対応する(実)8次元の方程式は, Spin(7)-manifold上で定義されて, それを SU(4)の場合に書いたものが上で書いた(複素)4次元の方程式だそうです. このあと, 断熱極限でいろいろと次元が変わった状況を説明したのですが, 省 略します. ================================================================ Taubesの講演について 一日目, 二日目は, Gr = SW の解説だったので省略します. 三日目に次のような結果が紹介されました. Th.(Meng-Taubes) M : 3-manifold, σ∈ H^1(M, Z) X = M x S^1 S = set of spin c structures s ∈ S に対して δ(s) = c_1(det S^+) とおく. このとき次の母関数を考える. a_n := Σ SW(s) s∈S : (δ(s),σxS^1) = n P(t) := Σ a_n t^n このとき, σのAlexander多項式をΔ(t)とするとき, P(t) = Δ(t) / ( t^{-1} - t )^2 が成り立つ. これを使って, Fintushel-Stern は次の結果を得ました. Th. K : knot in S^3 M_K = 0-surgery でできた 3 次元多様体 X = Kummer surface ⊃ T^2 (T^4 / G の特異点を通らないfactorをとって来る) X_K : 上の 0-surgery に S^1 かけて T^2 に沿ってsurgeryしてできる多様体 (X すなわち K3 曲面と位相同型である) このとき X_K の SW invariant の母関数は, K の Alexander多項式で与えら れる. このとき Taubes の結果により, X_K が symplectic ならば, SW invariant は monic である. 系. K の Alexander多項式が monic でなければ, X_K は symplectic ではない. 特に, simply-connected, 4-manifold で既約であるが, どちらの向きについ てもsymplectic にならないものが存在する. (この結果自身は, Szaboによっ て得られていたそうです.) ------------------------------------------------------------------------ X : b^+ > 0 な compact oriented 4-manifold with a metric g ω: self-dual closed 2-form g を generic にして, ω^{-1}(0) は, 有限個の S^1 からなるようにしてお く. X \ ω^{-1}(0) に ω は symplectic structure を与える. このとき Th. X の 0 でない SW invariant を持つとする. このとき ω^{-1}(0) は, pseudo-holomorphic submanifold を bound する. From nakajima@math.tohoku.ac.jp Thu Dec 19 12:50:00 1996 Path: tsuru!nakajima From: nakajima@math.tohoku.ac.jp (Nakajima Hiraku) Newsgroups: shitan.math Subject: Witten's 3rd talk Date: 27 Nov 1996 14:12:45 GMT Organization: Mathematical Institute, Tohoku University, Sendai JAPAN. Lines: 362 Distribution: world Message-ID: NNTP-Posting-Host: take.math.tohoku.ac.jp そろそろ2日目の内容を理解し終ったころかと思いますので、Witten の三日目 の講演の内容について紹介します. Reference: Hanany & Witten (to appear) 一日目 --> 二日目 --> 三日目と進むに従って, 数学から物理へと移行し私に は段々と理解するのが難しくなってきました. そのために, この紹介も不十分 なものであることを始めにお断りしておかなければなりません. ここに書かれ ていることは, 私が理解して書いているとは限りませんし, さらにまずいこと には私の間違った理解が含まれているかもしれません. 私が付け加えたことは, 行の最初に # をつけてあります. そこは, 間違っている可能性が高いという 意味であると理解してください. Wittenの講演はよく考えられたもので, 数学者に入りやすいように進められて いたと思います. 一日目, 二日目の最後に問題が提出され, その次の日に一段 階上の理論を使って前の日の内容を見直すことによって, 提出された問題の自 然な回答が与えられました. 三日目に説明された brane がいかに自然で大切 なものであるかを身に染みて分からせる, という意図があったと思います. ちなみに, 一日目の最後の問題: なぜ Lie 群と hyper-Kaehler多様体の間に類似があるのか? 二日目の最後の問題: 3 次元でミラー対称性が成り立つのか? なぜ, 2-monopoleのモジュライ空間が現れるのか? でした. 残念ながら, 私の紹介では, Wittenの意図を再現することが出来ていませ ん. 一日目の内容は, 数学者にも理解しやすかったと思いますが, これだけを 理解して, 「3次元の不変量が出来たのか, なるほど」と納得して終わりでは, Wittenの言いたかったことが全く伝わらなかったことになります. なぜ, Wittenは不変量を作ることが出来たのか, なぜ数学者には出来ないのか, その 理由が分かるためには, 二日目, 三日目の内容を理解しなければならないので しょう. さて三日目の内容の紹介に入ります. 取り敢えずsectionに分けましたが, 元々 の講演の時に分けられていたわけではありません. ----------------------------------------------------------------------- §1. brane の非常に簡単なintroduction # このsectionはお話だったので, まあ感じはいいけれどきちんとやろうとし # たらどうしたらいいのかよく分かりません. ですから何も考えず, 書いたこ # とを訳すだけにします. 次のLagrangianを考えましょう. L = ∫ d^n x Tr(F^2 + (Dφ)^2) φ≠0の真空で考え, 無限遠でφの共役類が固定されているものとします. n=3 のときには, F = * Dφ で与えられる BPS monopole が解になっています. これは, soliton 解であり, 点粒子のような挙動をします. n > 3 のときは, この解を(x^1,x^2,x^3)の関数として与え, x^4,...,x^n に は independent だとすれば, やはり解になります. このとき, 元々の monopole が点 x^1 = a^1, x^2 = a^2, x^3 = a^3 に対応しているとすれば, この解は, x^1 = a^1, x^2 = a^2, x^3 = a^3 で与えられる R^n の中の超平 面にlocalizeされているように見えます. より一般に余次元が3の多様体 X が与えられたとき, X の回りにlocalizeされ た(approximate) solutionを作ることが出来ます. このとき近似の次のorder を調べてみると, それが消えているのは X が極小部分多様体であることと同 値になります. ローレンツ計量では, 極小部分多様体である方程式は, 双曲型になります. 初 期条件を与えれば, 方程式によって運動が決まることになります. (n-4)次元の多様体から出発して, 双曲型方程式で与えられた解のことを (n-4)-braneと呼びます. 時空の中では, (n-3)次元であることに注意しましょ う. # あとでは, 余次元が3ではない brane が出てきます. このときは, monopole # 的な見方はしません. # brane は最近の string theory では非常に基本的な考え方であるようです. # Witten は, 果たす役割は string と同じだ, とAtiyah先生に言っていまし # た. さて海面に波ができるように, braneの表面にも``波''ができるかもしれませ ん. 例えば, (n-k)-brane x^0, x^1, ..., x^{n-k-1} : braneの座標 x^{n-k} = ... = x^{n-1} = 0 からflutuationして x^{n-a} = f_a(x^0,.., x^{n-k-1}) となったとすると, 極小曲面の方程式を線形化して □ f_a = 0 が出てきます. 但し ∂^2 ∂^2 □ = ------ - Σ ------ ∂x_0^2 ∂x_i^2 です. (``ダランベーリアン''って言うのでしたっけ?) 他の場が, brane の表面から propagate することもあります. 例えば, BPS monopole では, R^3 の位置だけでなく, ``角度 θ''で表わされるパラメータ も持ちますが, θ = θ(x^0,...,x^{n-4}): □θ = 0 が波として見えることもあります. Moral: (これはWittenの書いたままを書くことにします) In observing a theory, one question is whether there are branes. If so, what are their dimensions and what fields propagate on each brane ? # この説明だけで brane を理解できるとはとても思えないので, 参考文献 # Polchinski: hep-th/9611050 を挙げておきましょう. ----------------------------------------------------------------------- §2. 3-brane と 5-brane の configuration さてそこで, 10次元で typeIIB string theory を考えます. そこには, SL(2,Z)の対称性があることが知られています. # 少なくとも私は知りません. Witten: hep-th/9510135 には何やらそういう # ことが書いてあります. 他にも文献はあると思います. 3-brane と 5-brane を考えますが, 3-braneは SL(2,Z) で不変ですが, 5-brane の方はそうではありません. 互いに素な整数の組み(p,q)を [ p ] [ q ] で表わし, これへの SL(2,Z) の作用を考えます. [ p ] ---> [ p' ] [ q ] [ q' ] と移っているとき, [ p ] 型 5-brane は, [ p' ] 型 5-brane に移ります. [ q ] [ q' ] まず, 無限に広がっている 3-brane が一枚ある状況を考えます. このとき, 3-brane に境界を持つ string が飛び交い, 3-brane 上の U(1)-gauge理論が effective な理論として見えます. このとき, gauge 場 (vector multiplet) と adjoint rep. に値を取る場 (hypermultiplet)を一つ ずつ持ちます. # なぜ, vector multiplet と hypermultipletの両方が出てくるかの説明は, # なかったのでよく分かりませんが, N=4 の理論になっているからなのかもし # れません. *************************************** 次に 3-brane が k 枚平行に非常に近くに並んでいる状況を考えます. ――――――― ――――――― ――――――― } k 枚 : ――――――― このとき, 新しくこれらの 3-brane の間を結ぶ string (絵に描けない!!) が massless state として見えてきます. このために 3-brane 上のU(k)-gauge theory で, gauge 場 (vector multiplet) と adjoint rep. に値を取る場 (hypermultiplet)を持つものが見えてきます. # このgauge理論をbraneで解釈するやり方は, もちろん open string による # gauge理論の説明が基本にあるわけですが, Witten: hep-th/9510135 に現れ # たようです. 二日目に Coulomb branch で U(k) から U(1)^k に対称性が破れることを見ま したが, これは 3-brane 達の距離が離れることだ, と理解されるわけです. 対称性の破れのparameterが3-brane 達の距離に比例します. # 有限に収まっている状況を考えると, 以下の議論で U(k) を SU(k) が置き # 換えられることになるようです. ここはあまり説明されなかったので, この # 解説でも U(k) と SU(k) が度々入れ代わっています. 同様に 5-brane についても, l 枚かの平行な 5-brane がくっつき離れる様子 を考えることで U(l)-gauge theory が現れます. 次に, 3-brane と 5-brane が次のように交わっている状況を考えます. 5-brane : x^0, ..., x^5 が座標 (残りが止まっている) 3-brane : x^0, x^1, x^2, x^6 (x^6 < 0) が座標              │              │ 3−brane ─────┤ x^3,x^4,x^5 方向              │     ↑              │      → x^6 方向                      (残りは, 画面に垂直!?)              5−brane このとき, 5-brane の上にいる観察者からは, 3-brane の end が見えます. 動くのは, 3次元 = 余次元 3 であり, 最初の議論から magnetic charge を持 ちます. さて, 最初に 5-brane にはいろいろな種類があることを説明しました. 特に [ 1 ] [ 0 ] [ 0 ] , [ 1 ] に対応する 5-brane をそれぞれ NS 5-brane, D 5-brane と呼びます. 3-brane とぶつかっている状況を考えると, NS 5-brane とぶつかるときには, 3-brane の上gauge理論ではhypermultipletが境界で消え, D 5-brane では, vector multiplet が消えるという境界条件を与えます. # NS, D については, これ以上に詳しい内容が説明されなかったのでこれ以上 # の説明は出来ません. おそらくは, 5-brane に open string の境界がのっ # ているときに, その境界条件が Dirichlet になったり, Neumannになったり # するということで 5-brane の種類が出てきて, それからの帰結として # 3-brane とぶつかっているときの上のような説明が出てくるのだと思われま # す. 以下, 横線─は, 3-brane を表わし, 細い縦線│は, NS 5-brane を表わし, 太い縦線┃(講演では, 点線でした)は D 5-brane を表わすと約束します. §3 まで┃は出てきません. さて, そこで次のconfigurationを考えましょう. ├─────┤ ├─────┤ : } n 個の 3-brane : ├─────┤ 2 個の 5-brane このとき, 5-brane 上の観察者からは, SU(2)-gauge理論 (前は U(2) だった) が, U(1)に破れる様子が見えました. このとき, 5-brane は 3-brane に比べ て重いので, 古典論で取り扱うことが出来て, 5-brane の観察者は, monopole charge が n の BPS SU(2)-monopole が見えます. 一方 3-braneの上の観察者を考えましょう. このとき, 見えてくる U(n) gauge理論は, 境界条件から hypermultiplet を持たないものになります. そ の他は前と同様で, U(n) から U(1)^n に対称性が破れ, そのparameterが, 3-brane の間の距離に対応します. # 説明がなかったのですが, 3-brane (= 4次元)上の理論ですが, 3-brane が # x^6 方向に短い(=5-braneが近い)ために 3次元の理論が見えてくると思われ # ます. そこで, 両方の観察者から見た quantum moduli space を考えると, 以下にな ります. 5-brane上の観察者 : monopole charge が n の BPS monopole のモジュライ空間 3-brane上の観察者 : vector mult. だけの SU(n) gauge理論のCoulomb branch 同じものを見ているのですからこれらは一致しなければなりません!!! 特に n=2 のときは, SU(2)gauge理論のCoulomb branchが2-monopoleのモジュライ空 間に一致することが示されました. 二日目にモジュライ空間の hyper-Kaehler 計量と対称性を用いて分類を用いることによって証明された対応に他なりませ ん. 数学的な応用としては, SU(n)-Chern Simons 接動論で得られる不変量が, n-monopole のモジュライ空間をtargetとしたsigma模型の不変量と一致するは ずだということも分かりました. 次により一般の ├──┤   ├──┤     ├──┤   ├──┤ │  ├───┤  │     │  ├───┤  │ 横線は, 左から ├──┤   │  │     ├──┤   ├──┤ n_1, n_2,..      :       ………      :       .., n_{r-1}      :       ………      :       本 │  ├───┤  │     │  ├───┤  │ ├──┤   ├──┤     │  │   ├──┤            縦線は r 本 という configuration を考えます. 5-brane が r 個ならんでおり, その間に n_1 個, n_2 個, ..., n_{r-1}個の 3-brane が並んでいる図です. # ふう. 図を書くのが大変だった. このとき, 5-brane上の観察者は, monopole charge n_1,...,n_{r-1}の SU(r)-monopole が見えてきます. # このmoduli spaceは, 数学ではHurtubise-Murrayによって調べられています. # Higgs 場の固有値により, SU(r)-bundleは無限遠でU(1)^{r-1}にreduceし, # その U(1)-bundle の c_1 を無限遠の S^2 で積分したものが, n_1, .., # n_{r-1}です. 一方, 3-brane上の観察者が見るのは, U(n_1)xU(n_2)x...xU(n_{r-1})gauge理 論で, hypermultiplet が Hom(C^{n_1},C^{n_2})+Hom(C^{n_2,C^{n_1})+.. となっているものです. hypermultiplet の質量は, a に比例します.           │ 3−brane ──┤           ↑           │          この間の距離 a           ├──3−brane  ↓           │         5−brane よってこのようなgauge理論のCoulomb branchが上のBPS monopoleのモジュラ イ空間と一致していることも示されました. # ちなみにこの理論のHiggs branchとして, A_{r-1}型のDynkin図式の上の箙 # 多様体が見えています. 私の論文(Duke Math. 76 (1994))での記号の W_k # に当たるものが無いので, hyperKaehler商は一点になってしまいます. ----------------------------------------------------------------------- §3. ミラー対称性 5-braneに二種類あったことを思い出して, (1,0)型 5-brane : x^0, x^1, x^2, x^3, x^4, x^5 (0,1)型 5-brane : x^0, x^1, x^2, x^7, x^8, x^9 が座標 3-brane : x^0, x^1, x^2, x^6 となって平行な brane 達が何枚もある様子を考えることにします. ちょうど 10次元でぴったりとあっていることに注意しましょう. 3次元の理論をやるに は, 10次元で考える必要があるのです!! ├──┤   ┠──┤     ├──┨   ┠──┤ │  ├───┨  │     │  ┠───┨  │ ├──┤   ┃  │     ├──┨   ┠──┤      :       ………      :      :                : │  ├───┨  │     │  ┠───┨  │ ├──┤   ┠──┤     │  ┃   ┠──┤ 10次元は絵に描けないので, 2次元に射影しています. 感じはまあつかめるで しょう. このとき 3-brane 上の観察者が見るgauge理論を考えます. # 具体的にどうなるかは講演中は説明されませんでした. 幾つかの簡単なモデ # ルのときにはHiggs branchは, 箙多様体で記述され, その見当もつくのです # が書くのはやめておきます. ミラー対称性は, 上の図にSL(2,Z)の行列 S = [ 0 -1 ] をapplyすることで, [ 1 0 ] 説明されます. すなわち図の太い縦線┃と細い縦線│を入れ替えるのです. 対応する 3-brane上の観察者が見るgauge理論が互いにmirrorの関係にありま す. 例えば Intriligator-Seiberg の self-mirror な例に対応する図は, │┃┃│ ┃││┃ ├╂╂┤ <---> ┠┼┼┨ │┃┃│ ┃││┃ です. # このあたりは, 絵を描いて終わりになってしまったので, ここでもこれ以上 # の説明はしないことにします. 中島 啓 From nakajima@math.tohoku.ac.jp Thu Dec 19 12:50:16 1996 Path: tsuru!nakajima From: nakajima@math.tohoku.ac.jp (Nakajima Hiraku) Newsgroups: shitan.math,jmath.chat Subject: Moore's talk (Re: Borcherd's product formula) Date: 08 Dec 1996 17:11:53 GMT Organization: Mathematical Institute, Tohoku University, Sendai JAPAN. Lines: 106 Distribution: world Message-ID: References: NNTP-Posting-Host: take.math.tohoku.ac.jp In-reply-to: takebe@math.tohoku.ac.jp's message of 18 Nov 1996 02:58:53 JST Xref: tsuru shitan.math:422 jmath.chat:188 In article takebe@math.tohoku.ac.jp (Takebe Takashi) writes: |# 個人的にはその string duality から来た由来とか発散積分を使っ |# た証明なんかを聞きたかったのですが、三★先生曰く「それは |# Bourbaki seminar ではやれないな」。中島先生、Witten の話し |# の続き (多分 string duality とか M theory でしょ) はどうなっ |# たんですか?! Witten の三日目の講演の内容はshitan.mathに報告したし、Hanany-Witten が 出たのでもう皆さんよく理解されたことだと思います。あまり、GKM のはなし とは関係ありません。 Moore の string duality の論文は半年ほども前に hep-th に出ていたので、 もう解説する必要もないと思いますが......... 私は、武部さんの紹介してくれた GKM の分母公式との関係はあまりはっきり 分からなかったので、直接質問してみました。彼の説明を私が理解するに、ま だやるべきことが残っている気がするので自分自身のメモがわりに紹介してお きます。 Harvey-Mooreの論文(hep-th/9609017)は type IIA string theory <-- duality --> heterotic string theory compactified on K3 compactified on T^4 という Hull-Townsend の string duality が BPS states の作る代数の間の 同型を導くという予想です。右側に現れる代数はいわゆる vertex algebra と いうやつ(Narain lattice、今の場合 Λ^{20,4}、から作られる )です。(私の ように当時意味のないことをやっていた人と違って) 90年頃 CFT を勉強して いた人は皆さんよくご存知の vertex operator が作る代数です。一方左側は 私がcorrespondenceを使って作った K3 のコホモロジー (= Λ^{20,4} !!!!) に付随する Heisenberg algebra に対応する vertex algebra です。こちらの 立場での vertex algebra の構成については、Lecture Note の最後の章を見 て下さい。但し、この場合は Picard lattice から vertex algebra を作るこ とにしています。 # 松尾くん、黒木くんどうもありがとう。この手の計算は師匠につかないと身 # につかないことが分かりました。 私の構成で一番不思議なことは、新しい代数が出てきても良さそうなものなの に、どういうわけか今まで知られている Heisenberg algebra が出てきたこと です。証明自身は、generator and relation で作ってみると Heisenberg algebra になる、というものなので証明が終るまで Heisenberg algebra であ ることが見えません。Moore の説明は Heiseberg algebra がでてくるのは duality を認めれば Heterotic string で Heisenberg algebra が出てくるか らであるというものです。これは私はそのころ意味のないことをやっていたの で知らなかったのですが(しつこく強調する) CFT の話しをやっていた人は誰 でもよく知っていることです。 さて Harvey-Moore (hep-th/9510182) では, type IIA string theory <-- duality --> heterotic string theory compactified on compactified on T^2 x K3 K3-fibered Calabi-Yau を念頭に置いてはいるのですが、もっぱら右辺ばかりが調べられていて、 duality は表にはあらわれません。さらに右辺でしらべられているのも coupling constant g --> 0 の回りの接動計算 (インスタントン効果は無視) だけです。でてきた答えが武部さんの記事の Ψ で、その計算の途中で Borcherds の分母公式が見えました。 左辺に移してみると g --> 0 は、fibration の base の体積 --> ∞となりま す。本来の BPS states は、左辺では Calabi-Yau 上のベクトル束のモジュラ イ空間のホモロジー群であり、代数は correspondence から作られるものにな ると予想されているのですが、この極限操作のもとで生き残るのは、fiber の K3 の 2-brane bound states だけだそうで、これは K3 の Picard lattice から私の構成でできる vertex algebra になるはずのようです。上の fibration に出てくる K3 は非常に特別で、Picard lattice はΛ^{9,1}になっ ています。 とにかく、少なくともΛ^{9,1} に対応する GKM は, このような Picard lattice をもつ K3 の上のベクトル束, もしくは Hilbert scheme のホモロジー で理解されなくては行けません。 # Moore が GKM の説明をしてくれました。BRST cohomology の Q を知らなかっ # たのにはびっくりしたみたいでした。そうなんです。私は、string 理論を # 勉強しないで意味がないことをやっていたんです.... ここまでしつこく書 # けは、どれほど私が勉強していなかったことを反省しているか分かってもら # えるかな。 分母公式もなんとか幾何的に理解できればうれしいのですが、今のところはな んともわかりません。 本来は、接道計算だけでなく分配関数を完全に決定したいところです。上に述 べたように Calabi-Yau の上の bundle のモジュライのコホモロジーがでてき て、どんな algebra になるかあまり見当がつきません。右辺も接道計算以上 は難しいようです。 ここから先は、私の一人言です。 Heisenberg algebra と vertex algebra ができただけでは、まだまだです。 リーマン面の上を operator が動かないといけません。対応することを私の理 論でやるとすると、どうしても``母空間(仮称)''を導入することがさけられな いと思う。``母空間(仮称)''の必要性は次の比例式から明らかであろう。 自然数 : 空間 母関数 : ``母空間(仮称)'' モジュラー形式 : モジュラー ``母空間(仮称)'' いまのところ母空間を関数のように扱うことができない。これは関数の性質を Taylor 展開の各係数ごとに調べて導いているようなものである。そんな馬鹿 な人はいない。 中島 啓