From nakajima@math.tohoku.ac.jp Tue Nov 22 14:05:29 1994
Path: tsuru!nakajima
From: nakajima@math.tohoku.ac.jp (Nakajima Hiraku)
Newsgroups: tohokumath.math
Subject: New Invariants for 4-manifolds
Date: 4 Nov 1994 18:19:53 JST
Organization: Mathematical Institute, Tohoku University, Sendai JAPAN.
Lines: 22
Distribution: tohokumath
Message-ID:
NNTP-Posting-Host: take.math.tohoku.ac.jp

現在、ケンブリッジ周辺で流れている情報や、オックスフォードの友人から聞
いて分ったことを書いておきます。

Donaldson invariants は、self-dual Yang-Mills equationの解のモジュライ
空間の交点理論な訳ですが、技術的に

1. モジュライ空間がなめらかであることを示しにくい(genericなmetricにつ
いてはOKですが、例えばKaehler metricという特別なmetricについてはどう
かは問題になります)

2. バブルの問題があるのでモジュライはコンパクトにならない。

という問題があります。ところが、最近Seiberg-Wittenによって発見された新
しい方程式を使うと1. 2. の困難が解消できるらしく、その結果、

「anti-self-dual connectionを使って示されていた結果が簡単に証明でき、さ
らに精密化できるようになる。」

ということです。そのうちノートが入る予定なので、帰国後にもう少し詳しい
情報がおつたえできると思います。

中島 啓

From nakajima@math.tohoku.ac.jp Tue Nov 22 14:05:36 1994
Path: tsuru!nakajima
From: nakajima@math.tohoku.ac.jp (Nakajima Hiraku)
Newsgroups: tohokumath.math
Subject: Re: New Invariants for 4-manifolds
Date: 9 Nov 1994 18:29:13 JST
Organization: Mathematical Institute, Tohoku University, Sendai JAPAN.
Lines: 42
Distribution: tohokumath
Message-ID:
References:
NNTP-Posting-Host: take.math.tohoku.ac.jp
In-reply-to: nakajima@math.tohoku.ac.jp's message of 4 Nov 1994 18:19:53 JST

In article nakajima@math.tohoku.ac.jp (Nakajima Hiraku) writes:

|という問題があります。ところが、最近Seiberg-Wittenによって発見された新
|しい方程式を使うと1. 2. の困難が解消できるらしく、その結果、
|
|「anti-self-dual connectionを使って示されていた結果が簡単に証明でき、さ
| らに精密化できるようになる。」

~uzawa/fukaya をお読みになったかたは、もうある程度の想像がついたかと思
いますが、新たに分ったことをつけ加えると、

X を 4 次元多様体として、w_2 を そのsecond Stiefel-Whittney classとし
て、L を c_1(L) mod 2 = w_2 となるような line bundleとするときに、
(X,L)に対するinvariantとして、新しいinvariantは定義されます。
connectionとHiggs 場を使って定義されるらしいですが、基本的にline
bundleしか使わないので、難しいnonlinear analysis はいらなくなるそうで
す。

トポロジーへ応用には、invariantが定義できれば十分なのですが、
Donaldson invariantとの関係でいうと、

「上の新しいinvariantが 0 でなければ、Kronheimer-Mrowkaの意味でのbasic
classである。」

ということが、予想になっていて、Donaldson invariantの計算できている多
様体についてはたしかにチェックできるそうです。

なにはともあれ、「ゲージ理論は死んだ。」というのは、少なくとも「トポロ
ジーへの応用は終わり」という意味では正しそうです。

これ以上の情報は、技術的になりすぎることでしょうから、オックスフォード
で何か分ったとしても報告できないと思います。

中島 啓

P.S. 来週、S-dualityの話(またまたWittenによる、インスタントンのモジュ ライのオイラー数に関する驚嘆すべき予想の話)をしようと思って、今、モジュ ラー形式の話をにわか勉強してます。やっと、ヘッケ作用素が分ってきました。 (あ、私の定義したヘッケ作用素でなくて、昔からあるヘッケ作用素のことね。) 日本で暇になったら(ここは、仮定法を使ってます)、お話できるかもしれませ ん。


From nakajima@math.tohoku.ac.jp Tue Nov 22 14:05:48 1994
Path: tsuru!nakajima
From: nakajima@math.tohoku.ac.jp (Nakajima Hiraku)
Newsgroups: tohokumath.math
Subject: Re: New Invariants for 4-manifolds
Date: 21 Nov 1994 10:53:18 JST
Organization: Mathematical Institute, Tohoku University, Sendai JAPAN.
Lines: 33
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NNTP-Posting-Host: take.math.tohoku.ac.jp
In-reply-to: nakajima@math.tohoku.ac.jp's message of 16 Nov 1994 02:58:36 JST

その後、Taubesの論文も手に入りました。

結局、新しい不変量について分ったことは、

1. Kronheimer-Mrowkaによって、Thom予想が解決された。

2. Taubesによって、symplectic manifoldの不変量は 0 でないことが、示さ
れた。これは、Donaldsonの定理「射影曲面なら、polynomial invariantsは
non-trivial」に対応するとも考えられるけど、symplecticでいいのだから、
ずっと強い結果ですね。これは、わずか17pで示されているので、ますますい
い。

3. 多様体が、b_+ > 0 の二つの多様体の連結和にかけるときは、不変量は 0
である。この論文は、そのうち出るらしい。これも、Donaldsonのpolynomial
invariant に関する定理の類似ですね。

4. Donaldsonの定理のうち、今のところ生き残っているのは(すなわち、新し
い不変量では証明できない)のは、一番最初の定理だけらしい。しかし、その
定理も「微分可能4次元多様体が負定値な交叉形式を持つなら、その交叉形式
は"これこれの条件"をみたさなくてはいけない」という形では言えていて、"
これこれの条件"をみたす標準的でないような2次形式は見つかっていないら
しいです。(これは、純代数的問題ですが、定値な2次形式の分類ってむずか
しいらしいのね。)

5. Floer homologyについても、方程式を取り換えることによって定義可能。
しかし、今までのものほどは、面白くなさそうである(新しいホモロジーにな
らない?)

暇だったら、自分の勉強のために講演してもいいんだけれど、全然暇がないか
らなあ.....(;_;) どなたか、紹介してくれませんか?

中島 啓