1998年度前期講義「幾何学特論I」 Macdonald多項式とヒルベルト概型

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目次

4月14日 4月28日 5月12日 5月19日 5月26日 6月2日 6月9日 6月16日 6月23日
これ以降にやったことのレジュメは, サボったためにありません.

4月14日にやったこと

序.

講義の目標は, Macdonald多項式とアファイン平面上の点のHilbert概型の関係 を調べたGarcia-Haiman-Ginzburgの結果(但し論文は, in preparation)の紹介 をすることである.

Macdonald多項式は, 二つのパラメータ q,t を持った対称多項式であり, パラ メータを特殊化することによって, Schur関数, Hall-Littlewood関数, Jack多 項式, monomial symmetric functionなどになる. すなわち, これらの関数の 一般化であると言える.

monomial symmetric functionをある順序関係と内積に関して直交化すること によって得られる. そのintegral form と big Schur 関数との基底の変換関数が非負係数多項式 であることが予想されていたが, 上の人々によってHilbert概型を用いること によって肯定的に解決された.

1. 対称多項式

分割とYoung図式の記号のまとめ
monomial symmetric function の定義, 対称多項式の環 \Lambda_k の定義


4月28日にやったこと

対称多項式の続き. elementary symmetric function, completer symmetric function, power sum を定義し, monomial symmetric functions との変換行 列の計算を した. そのあと, Schur function を \det (x_i^{\alpha_j}) / 差 積 と定義し, elementary symmetric function の行列式で書く公式を紹介. (証明は省略)

次に内積を定義し, Schur 関数が直交基底であることを紹介. (これも証明略) 次に, Schur function のPieri formula も紹介して, それから帰納法で Schur function と monomial symmetric function の間の変換行列がKostka number で書けるこ とを証明した.

基本的に, Macdonald の教科書の通り


5月12日にやったこと

対称群/線形群の表現と対称多項式の関係.

$E$ を $GL_r(C)$ のベクトル表現とする. 対称群 $S_n$ の表現 $L$ に対し て, $(L\otimes E^{\otimes n})^{S_n}$ は, $GL_r(C)$ の表現になり, これ により, 対称群の表現環から線形群の表現環への線形写像が定義される. さら に, 線形群の表現 の指標を取ることによって対称多項式の空間への線形写像が 定義できる. 対称群の表現環 $R(S_n)$ の直和を取り, $S_m\times S_n \subset S_{m+n}$ による誘導表現によって積を定めれば, 上の線形写像は環 の準同型になる. さらに $n <= r$ と取れば, これは同型写像を引き起こす. このとき, 対称多項式の 内積が対称群の表現環の自然な内積に対応し, Schur 関数が既約表現に対応することが示される.


5月19日にやったこと

Chern 類について

Chern 類の定義, splitting principle を通じて対称多項式との関係を述べた. さらに projective bundle のcohomologyとChern 類との関係について述べた.


5月26日にやったこと

Grassmann多様体のSchubert cellをBialynicki-Birula分解を使って定義した. すなわち, C^*-作用を使うものであり, 通常の取り扱いとは異なっている. ま た, その閉包の基本類のPoincare dualが, universal quotient bundleの Chern類をspli tting principle を使ってSchur多項式に代入したものになって いることを紹介した. (証明はできず)


6月2日にやったこと

Macdonald多項式の定義をMacdonaldの教科書に沿って与えた. 二つのパラメータ q,t を持つ内積を定義し, さらにまず有限個の変数の対称 多項式環に働くself-adjoint operator D_n^r (r=0,..,n)を定義. この固有関 数としてMacdonald多項式が定義される. D_n^1 を modifyすれば, 変数を無限 個にすることもできる.


6月9日にやったこと

Macdonald多項式の定義を復習したあと, 幾つかの性質(duality)などを紹介した. 但し, 面倒な証明はしなかった.

次にMacdonald多項式のintegral formを定義し, plethystic substitutionを定義して , big Schur 関数を導入したのち, その間の変換行列として K_λμ(q,t) を定義した.

Macdonald の予想: K_λμ(q,t) は, q,t の非負整数係数の多項式である

この予想に対して, Garsia-Haimanは, 次のようなアプローチを提出した.

Young図式μに対して, その箱の座標を(p_1,q_1),...,(p_n,q_n)とする. (但し, n=箱の数, 左上の箱の座標が(0,0)とする.) このとき, x=(x_1,...,x_n), y=(y_1,...,y_ n)に関する多項式 Δ_μ(x,y) を

     Δ_μ(x,y) = det( x_i^{p_j} y_i^{q_j} )

によって定義する. H_μをΔ_μ(x,y) の微分達で張られる空間とする. これは, 自然に C^*x C^* x S_n -module である. すなわち,  x を スカラー倍, y をスカラー倍, x, y の変数を同時に入れ替えで作用する. このとき

Garsia-Haiman の予想:  H_μのweight (i,j,ρ_λ)のweight 空間の次元 = K_λμ(q,t) の t^i q^n(μ)-j の係数

と予想した. これから, Macdonaldの予想は従う. この予想の弱い形

n!-予想: dim H_μ = n!

を提出した.

Garsia-Haiman の予想からn!予想が従うことはほぼ明らかである. 逆に

Th(Haiman): n!予想が正しければ, 元々のGarsia-Haiman の予想も正しい

を証明した.

そこで

Th(Bezrukavnikov-Ginzburg): n!予想は正しい

が証明された.  今後の授業では, この二つの定理の解説を行うことを目標とす る.


6月16日にやったこと

Macdonald多項式を P_λ(x;q,t) とし, そのintegral formを J_λ(x;q,t) とする.

新しい対称多項式 \widetilde H_μ(x;q,t)を J_μ[X(1/(1-1/t);q,1/t] で定義する. 但し, [ ] は, plethystic substitutionを表わす. このとき,

    \widetilde H_μ(x;q,t) = Σ t^n(μ) K_λμ(q,1/t) s_λ(x)

と展開される. 従って, Garsia-Haimanの予想は, C^*xC^*xS_n-module H_μの指標が \widetilde H_μである, と言い換ることができる.

次が成り立つ.

命題. \widetilde H_μは次の性質を持つ.
a) \widetilde H_μ[X(1-t),q,t] = Σ_{λ≧μ'} d_λμ s_λ(x) for some d_λμ∈Q(q,t)
b) \widetilde H_μ[X(1-q),q,t] = Σ_{λ≧μ} c_λμ s_λ(x) for some c_λμ∈Q(q,t)
c) 〈\widetilde H_μ, s_n〉= 1
逆に, \widetilde H_μは, この性質で特徴づけられる.

ちなみに a)とb)は, 性質 \widetilde H_μ(x;q,t)=\widetilde H_{μ'}(t,q) より同値である.

よって, C^*xC^*xS_n-module H_μの指標が a)b)c)を満たすことを言えばよい.  \widetilde H_μ(x;q,t)=\widetilde H_{μ'}(t,q) に対応する性質とc)は簡単にチェッ クできる.

また, fがS_nの表現ρの指標のとき, f[X(1-q)]は, 次のvirtual な表現の指標である :

       ρ\otimes Σ (-q)^r ∧^r C^n

但し, C^n は, S_n のベクトル表現である.
 


6月23日にやったこと

アファイン平面の中の点のHilbert概型の定義, T=C^*xC^*作用の定義, その固定点の 決定. さらに, 固定点における接空間を調べた.
nakajima@kusm.kyoto-u.ac.jp