京都大学 NLPDE セミナー

2020年度のセミナーの記録

4 月 17 日
中西 賢次 氏 (京都大学)  Kenji Nakanishi (Kyoto University)

4 月 24 日
水谷 治哉 氏 (大阪大学)  Haruya Mizutani (Osaka University)

5 月 15 日
蘆田 聡平 氏 (学習院大学)  Sohei Ashida (Gakushuin University)

5 月 22 日
小池 開 氏 (京都大学)  Kai Koike (Kyoto University)

5 月 29 日
岸本 展 氏 (京都大学)  Nobu Kishimoto (Kyoto University)

6 月 5 日
高棹 真介 氏 (大阪大学)  Shinsuke Takasao (Osaka University)

6 月 12 日
戍亥 隆恭 氏 (大阪大学)  Takahisa Inui (Osaka University)

6 月 19 日
鶴見 裕之 氏 (早稲田大学)  Hiroyuki Tsurumi (Waseda University)

6 月 26 日
坂本 祥太 氏 (東京工業大学)  Shota Sakamoto (Tokyo Institute of Technology)

7 月 3 日
熊谷 大雅 氏 (舞鶴工業高等専門学校)  Taiga Kumagai (National Institute of Technology, Maizuru College)

7 月 10 日
木下 真也 氏 (Universität Bielefeld)  Shinya Kinoshita (Universität Bielefeld)

7 月 17 日
檜垣 充朗 氏 (神戸大学)  Mitsuo Higaki (Kobe University)

7 月 31 日
中村 謙太 氏 (熊本大学)  Kenta Nakamura (Kumamoto University)

10 月 9 日
西井 良徳 氏 (大阪大学)  Yoshinori Nishii (Osaka University)

10 月 16 日
白木 尚武 氏 (埼玉大学)  Shobu Shiraki (Saitama University)

10 月 23 日
筒井 容平 氏 (京都大学)  Yohei Tsutsui (Kyoto University)

10 月 30 日
三浦 達哉 氏 (東京工業大学)  Tatsuya Miura (Tokyo Institute of Technology)

11 月 6 日
田中 智之 氏 (名古屋大学)  Tomoyuki Tanaka (Nagoya University)

11 月 13 日
渡邊 圭市 氏 (早稲田大学)  Keiichi Watanabe (Waseda University)

11 月 20 日
眞崎 聡 氏 (大阪大学)  Satoshi Masaki (Osaka University)

11 月 27 日
福田 一貴 氏 (信州大学)  Ikki Fukuda (Shinshu University)

12 月 4 日
谷口 晃一 氏 (名古屋大学)  Koichi Taniguchi (Nagoya University)

12 月 11 日
藤原 和将 氏 (名古屋大学)  Kazumasa Fujiwara (Nagoya University)

1 月 8 日
前田 昌也 氏 (千葉大学)  Masaya Maeda (Chiba University)

1 月 15 日
菊池 弘明 氏 (津田塾大学)  Hiroaki Kikuchi (Tsuda University)


● 2020 年 4 月 17 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
中西 賢次 氏 (京都大学数理解析研究所)
Kenji Nakanishi (Kyoto University)
講演題目
4 次元 Zakharov 系の基底状態エネルギー下の大域適切性
講演要旨
 Zakharov 系は,プラズマの不安定性を非線形 Schrödinger 方程式(NLS)で説明する際に Zakharov が導出した中間的な近似方程式系で,イオン音速を無限大に飛ばす極限で NLS へ移行する. この極限は波動方程式を楕円型(Poisson)方程式に置き換えるが,その見た目に反して Zakharov 系の方が局所的には解の平滑化効果が強いことが知られている. 他方,大域的な解析では対称性の高い NLS の方が扱い易いため,それら二つの兼合いが問題となる.
 4 次元空間はプラズマとしての物理的意味は無いが,NLS がエネルギー臨界となるため,特に大きな解が数学的に興味深い. この講演では,エネルギー保存量が基底状態(最小エネルギー定常解)より小さいときに,解が時間大域的に存在するかどうかを考え,結果として,イオン音波の L2 ノルムが基底状態より小さければ大域的に存在して有界であることを示す. なお基底状態は NLS と共通であり,4 次元ではエネルギー臨界なので Sobolev 不等式の等号達成元,即ち Aubin-Talenti 解と呼ばれる具体的(有理)関数である.
 証明で中心的役割を担うのは,音波への電場の影響を除去して得られるポテンシャル付き Schrödinger 方程式に対する一様大域的な Strichartz 時空評価である. 解が球対称の場合については,Guo-Nakanishi (arXiv:1810.05794) により,波動方程式に対する profile 分解,Schrödinger 方程式に対する球対称 Strichartz 評価,Zakharov 系に対する normal form を組合せて証明された. 球対称の制限を外すため,球対称 Strichartz 評価の代わりに空間非共鳴性を用いた双線形 Strichartz 評価を導出し,また空間平行移動に対するコンパクト性の解析が必要となる. なお,この講演は Timothy Candy (University of Otago) と Sebastian Herr (Universität Bielefeld) との共同研究に基づく.


● 2020 年 4 月 24 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
水谷 治哉 氏 (大阪大学大学院理学研究科)
Haruya Mizutani (Osaka University)
講演題目
Hardy ポテンシャルを伴う分数べき及び高階 Schrödinger 方程式の Strichartz 評価
講演要旨
 尺度臨界ポテンシャルを伴う Schrödinger 方程式には,逆 2 乗べきポテンシャルに対する Burq et al (2003) を契機に,一様レゾルベント評価や局所平滑化効果,Strichartz 評価,およびそれらの非線形問題やスペクトル解析に対する応用などの研究が数多くある. 一方,分数べき及び高階 Schrödinger 方程式も非線形問題を中心に近年盛んに研究されている. この講演では Burq et al (2003) の分数べき及び高階への一般化について得られた結果を紹介する.
 Hardy ポテンシャルは特異性と無限遠方における減衰度のどちらも臨界であり,通常のソボレフ空間をエネルギー空間にもつハミルトニアンを定義するためには方程式の階数とポテンシャルの結合定数に制限(Hardy の不等式の成立条件)が必要となるが,局所平滑化効果については,そのような条件のもとで加藤-谷島型評価が得られた. さらに方程式の階数が 1 階よりも大きければ Strichartz 評価も成立する. この追加の条件は 1 階の Hardy ポテンシャルが長距離型(クーロンポテンシャル)であることに起因する. 証明には保城 (1999) による Mourre 理論を用いたレゾルベントの解析手法と,滑らかな摂動理論,Rodnianski-Schlag (2003) の摂動論を組み合わせて用いる. 特に,Mourre 理論を用いることによって,方程式の階数によらない扱いが可能となる. 一方,Strichartz 評価に関する階数の条件は Rodnianski-Schlag (2003) の摂動論を用いる際に必要となる.
 時間が許せば,より一般の尺度臨界ポテンシャルに拡張するための今後の課題についても触れたい. なお,この講演は Xiaohua Yao(華中師範大学)との共同研究 (arXiv:2002.02163) に基づく.


● 2020 年 5 月 15 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
蘆田 聡平 氏 (学習院大学理学部数学科)
Sohei Ashida (Gakushuin University)
講演題目
負の定数より小さいラグランジュ乗数に対応する Hartree-Fock 汎関数の臨界値の有限性
Finiteness of the number of critical levels of the Hartree-Fock functional associated with Lagrange multipliers less than a negative constant
講演要旨
 Hartree-Fock 方程式は複数の電子が存在するときの固有値問題の近似固有関数が満たす偏微分方程式である. Hartree-Fock 方程式を解くことは連立非線形固有値問題となる. Hartree-Fock 方程式は Hartree-Fock の汎関数の臨界点が満たす方程式であり,対応する臨界値は多電子固有値問題の固有値の上界評価を与える. Hartree-Fock 方程式を自己無撞着場の方法(SCF 法)で解いて臨界値を求める際に SCF 法の収束を考えるために,あらかじめ臨界値の大まかな分布を知っていることは重要であると考えられる. 本講演では固定された負の定数より小さい Hartree-Fock 方程式の固有値に対応する臨界値が高々有限個であるという結果について説明する.
 証明では臨界値が無限個あるとして矛盾を導く. まず固有関数列の一様な指数減衰を証明する. 固有関数の指数減衰を使って固有値の集積点が固有値であることを示し,対応する固有関数に固有関数の列が収束することを示す. さらに対応する固有関数における Hartree-Fock 方程式のフレシェ微分が可逆作用素とコンパクト作用素の和で表せることを示して Fučik-Nečas-Souček-Souček(1972) の実解析的(非線形)作用素に関する結果を用いて矛盾を示す.


● 2020 年 5 月 22 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
小池 開 氏 (京都大学大学院工学研究科)
Kai Koike (Kyoto University)
講演題目
1 次元圧縮性粘性流体中を運動する質点の長時間挙動
講演要旨
 1 次元圧縮性 Navier-Stokes 方程式で記述される流れを考え,その中で流体からの力を受け,Newton の運動方程式に従って運動する質点を考える. 簡単のため,流れは順圧的とする. 本講演では,この質点の速度 $V(t)$ の長時間挙動に関する次の結果を紹介する: $V(t)$ はべき乗則 $V(t) \sim t^{-3/2}$ に従って減衰する [https://arxiv.org/abs/1904.00992]. 類似の結果としては,Burgers 方程式で記述される流れの中を運動する質点を考察した Vázquez & Zuazua による結果がある. 彼らの結果によると,$V(t) \sim t^{-1/2}$ である [J. L. Vázquez and E. Zuazua, Comm. Partial Differential Equations, 28 (2003) 1705-1738]. 従って,Navier-Stokes 方程式の場合の方が $V(t)$ の減衰は速い. この速い減衰は流れの圧縮性に起因することが示される. また,方程式の非線形性も本質的に重要である(線形化方程式を考えた場合,初期値の空間的な減衰が指数的であれば,$V(t)$ も指数的に減衰する).
 証明は Green 関数の時空間における各点評価を利用して行う. Cauchy 問題の場合,すなわち基本解の各点評価は [T.-P. Liu and Y. Zeng, Mem. Amer. Math. Soc., 125 (1997) 599] によって与えられており,非線形問題の評価法も確立されている. また,半空間の場合,非線形問題の評価はやや不完全だが,Green 関数の各点評価は [L. Du and H. Wang, Discrete Contin. Dyn. Syst., 38 (2018) 1349-1363] で与えられている. 本研究では,質点を伴う場合に Green 関数の各点評価を与え,また非線形問題の評価を Cauchy 問題の場合と同じレベルまで行うことで,長時間挙動 $V(t) \sim t^{-3/2}$ を証明する.
 本研究は元々,BGK モデル(Boltzmann 方程式のモデル方程式)に対する類似の問題を数値計算によって調べた [T. Tsuji and K. Aoki, J. Comput. Phys., 250 (2013) 574-600] の結果を,数学的に説明することを目的としている. すなわち,BGK モデルの代わりに,流体力学極限として得られる Navier-Stokes 方程式の場合を先に理解することを目指して行われた. こうした背景についても紹介したい.


● 2020 年 5 月 29 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
岸本 展 氏 (京都大学数理解析研究所)
Nobu Kishimoto (Kyoto University)
講演題目
Well-posedness for the kinetic DNLS equation on the torus
講演要旨
 1 次元微分型非線形 Schrödinger 方程式(以下 DNLS)の非線形項を Hilbert 変換を含むものに取り換えた方程式について考える. この方程式はプラズマの時間発展のモデルにおいて運動論効果を取り入れたもので,"kinetic derivative nonlinear Schrödinger equation"(以下 KDNLS)と呼ばれている. 本講演では,周期境界条件下での KDNLS の初期値問題について,堤誉志雄氏(京都大学)との共同研究により得られた成果を報告する.
 DNLS の解析ではゲージ変換が重要な役割を果たすが,KDNLS に対して有効なゲージ変換は見つかっていない. 一方で,KDNLS は DNLS にない散逸系の構造を持っており,実際に周期境界条件の下では非線形相互作用の共鳴部分から 1 階の散逸項が現れる. そこで,ゲージ変換を使わない代わりに,非線形(非共鳴)相互作用に内在する分散型方程式としての平滑化効果と散逸による平滑化効果の双方を最大限用いて非線形項の微分損失を回復する. これにより,Sobolev 空間 $H^s$, $s>1/2$ で小さい初期値に対する時間局所可解性が示される. 初期値に対する解の連続依存性や,エネルギー空間 $H^1$ でのアプリオリ評価と時間大域可解性についても触れたい.


● 2020 年 6 月 5 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
高棹 真介 氏 (大阪大学)
Shinsuke Takasao (Osaka University)
講演題目
宇宙の磁気流体力学現象に関する数値的研究
Numerical study on astrophysical magnetohydrodynamic phenomena
講演要旨
宇宙の物質のほぼ全ては電離気体であるプラズマの状態にある. このプラズマは宇宙に広がる磁場と相互作用して運動量やエネルギーを交換するため,プラズマの運動は流体力学に Maxwell 方程式をカップルさせた磁気流体方程式で記述されることが多い. この方程式は 8 つもの独立変数を持つ上に,宇宙の現象は非線形性が強いことがほとんどであるから,研究にも数値シミュレーションがよく使われる. 本発表では具体的な磁気流体力学現象について概観し,シミュレーションによってどのように現象の理解にアプローチするかを紹介する.


● 2020 年 6 月 12 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
戍亥 隆恭 氏 (大阪大学)
Takahisa Inui (Osaka University)
講演題目
Scattering and asymptotic order for the wave equations with the scale-invariant damping and mass
講演要旨
In this talk, we consider the linear wave equation with the scale-invariant damping and mass. It is known by Wirth that the solution scatters to the solution of the modified wave equation. Our first aim is to investigate the asymptotic order.
We also treat the corresponding equation with the energy critical nonlinearity. Our second aim is to obtain the scattering result and its asymptotic order.
This talk is based on joint works [1] and [2] with Professor Haruya Mizutani (Osaka University).

References:
[1] T. Inui, H. Mizutani, "Scattering and asymptotic order for the wave equations with the scale-invariant damping and mass", preprint, arXiv:2004.03832.
[2] T. Inui, H. Mizutani, "Remarks on asymptotic order for the linear wave equation with the scale-invariant damping and mass with $L^r$-data", preprint, arXiv:2005.01335.


● 2020 年 6 月 19 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
鶴見 裕之 氏 (早稲田大学)
Hiroyuki Tsurumi (Waseda University)
講演題目
Stationary solutions of the 2D Navier-Stokes equations in toroidal Besov spaces
講演要旨
本講演では 2 次元定常 Navier-Stokes 方程式の,トーラス上で定義された Besov 空間(以下トーラス Besov 空間と呼ぶ)における解の一意存在性および外力に対する連続依存性について論じる. 2 次元外部領域においては Finn-Smith (1967),Amick (1991),Galdi-Sohr (1995),また 2 次元全空間においては軸対称な外力に関して Yamazaki (2016) などにより,本方程式の解の一意存在性や正則性が深く研究されてきた. しかし 2 次元全空間上で外力の構造を制限しない場合での,解の一意存在性を与える一般的な外力の属する空間は講演者が知る限り未だに見出されていない. そこで全空間における問題への第一歩として,本講演では 2 次元トーラス上で本方程式を考察する. 具体的には斉次なトーラス Besov 空間を Schmeisser-Triebel (1987) に基づいて定義し,本方程式の解,およびその一意存在性を保証する外力の属する空間をそれぞれ尺度不変なトーラス Besov 空間の部分空間として与える. 一方で極端に位相が弱いトーラス Besov 空間においては外力に対する解の連続依存性が破たんする(方程式が非適切となる)ことを,Bejenaru-Tao (2006) および Bourgain-Pavlović (2008) らによる手法を用いて証明する.


● 2020 年 6 月 26 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
坂本 祥太 氏 (東京工業大学理学院数学系)
Shota Sakamoto (Tokyo Institute of Technology)
講演題目
Global solution of the Boltzmann equation without angular cutoff in the Wiener space
講演要旨
 本講演では非切断・空間非一様なボルツマン方程式,特に定常解周りでの 3 次元トーラス $\mathbb{T}^3$ 上の初期値問題及び区間 $[-1,1]$ と 2 次元トーラス $\mathbb{T}^2$ の直積空間上での初期値境界値問題を考える. $\mathbb{R}^3$ 上での設定を含め,ボルツマン方程式の定常解周り初期値問題はこれまで適当な正則性を持つ $L^2$ ベースのソボレフ空間やベゾフ空間で解かれてきたが,本研究ではより弱い正則性を持つ関数空間上で適切性を議論できるかということ,および類似の手法で 2 つめの設定のような,単純な境界値問題も同様の手法で扱うことができるかどうかという 2 つの問いを考えた.
 発表ではウィーナー空間という,フーリエ級数の絶対和が収束することで特徴づけられる関数空間を用いて,これらの問題に一意大域解を構成できたことを報告する. 初期値問題の場合は先行研究で用いられたものより弱い正則性の解空間であり,また初期値境界値問題の場合は先例のない結果となっている.
 証明は 2 次の非線形項の三重線形評価及び Macro-micro 分解によるアプリオリ評価の構成と,Hahn-Banach の拡張定理を利用した局所解の構成によって行われる. これらのうちいくつかの話題について,時間の許す限り解説する予定である. また最近研究が進んでいる,解の正則化に関する話題との関係も時間があれば述べたい.
 本講演の内容は Renjun Duan(香港中文大学),Shuangqian Liu(曁南大学 / 華中師範大学),Robert M. Strain(ペンシルバニア大学)との共同研究に基づく.


● 2020 年 7 月 3 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
熊谷 大雅 氏 (舞鶴工業高等専門学校)
Taiga Kumagai (National Institute of Technology, Maizuru College)
講演題目
An averaging result for a class of Hamilton-Jacobi equations
講演要旨
We consider the aymptotic behavior of solutions to the Dirichlet problem for Hamilton-Jacobi equations with large Hamiltonian drift terms. This is an attempt to understand the averaging effect for fully nonlinear elliptic equations. The speaker has already established averaging results for Hamilton-Jacobi equations with convex Hamiltonians under the classical formulation of the Dirichlet condition. In this talk we treat the Dirichlet condition in the viscosity sense and show an averaging result for Hamilton-Jacobi equaions with relatively general Hamiltonians. This is a joint work with Hitoshi Ishii (Tsuda University).


● 2020 年 7 月 10 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
木下 真也 氏 (Universität Bielefeld)
Shinya Kinoshita (Universität Bielefeld)
講演題目
非線形 Loomis-Whitney 型の不等式について
A remark on the nonlinear Loomis-Whitney-type inequality
講演要旨
三次元実数空間上の非線形 Loomis-Whitney 不等式は超曲面に制限された関数の合成積評価である. この不等式は Bejenaru-Herr-Holmer-Tataru (2009)による二次元ザハロフシステムの時間局所適切性の証明に用いられたことを契機に,非線形分散型方程式の適切性の証明で重要な役割を果たしてきた. 本講演では,実数空間で有効である,非線形 Loomis-Whitney 不等式を利用した非線形項の評価式の証明のアイディアを,周期境界条件下の問題に適用することを考える. そのために,周期境界条件下の問題に適した不等式(これを非線形 Loomis-Whitney 型の不等式と呼びたい)と,その不等式がどのように用いられるかを紹介する. また,非線形 Loomis-Whitney 型の不等式の研究の副産物として,三次元実数空間上の非線形 Loomis-Whitney 不等式で必要であった,超曲面の直径条件を緩和することができたことも紹介したい. なお,本講演の内容は,カールスルーエ工科大学の R. Schippa 氏との共同研究に基づく.


● 2020 年 7 月 17 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
檜垣 充朗 氏 (神戸大学)
Mitsuo Higaki (Kobe University)
講演題目
Regularity for the stationary Navier-Stokes equations over bumpy boundaries and a local wall law
講演要旨
Lipschitz 境界関数により微小摂動された半空間において,定常 Navier-Stokes 方程式の正則性評価を考察する. Avellaneda-Lin (1987,1989) の均質化理論におけるコンパクト性の議論を応用し,境界層の厚みよりも大きなスケールにおいて large-scale Lipschitz 評価を証明する. また,境界が周期性の構造を持つ場合はより強い正則性評価が得られるが,このメカニズムが流体力学における壁法則と関連することも述べる. 本発表の内容は Christophe Prange 氏(CNRS 研究員・ボルドー大学)との共同研究に基づく.


● 2020 年 7 月 31 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
中村 謙太 氏 (熊本大学数理科学総合教育センター)
Kenta Nakamura (Kumamoto University)
講演題目
Global existence and regularity for a doubly nonlinear parabolic equation
講演要旨
In this talk, we consider a doubly nonlinear parabolic equation inspired by the classical Yamabe flow on a bounded domain in Euclidean space. We present global existence and regularity results of weak solutions for this equation, for instance, the expansion of positivity, the nonlinear intrinsic scaling, etc. This is joint work with Prof. M. Misawa (Kumamoto Univ.) and Prof. T. Kuusi (Helsinki Univ.).


● 2020 年 10 月 9 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
西井 良徳 氏 (大阪大学)
Yoshinori Nishii (Osaka University)
講演題目
弱い消散構造を伴う半線形波動方程式の小振幅解のエネルギー減衰
Energy decay for small solutions to semilinear wave equation with weakly dissipative structure
講演要旨
2 次元 Euclid 空間上で半線形波動方程式の初期値問題を考える. この方程式の解の長時間挙動を考える際,3 次の非線形項が臨界的な状況の一つを与えることはよく知られており,一般に初期値が小さく滑らかでも古典解は有限時間までしか存在しない. 古典解の時間大域存在を保証する非線形項の構造条件として null condition は有名であるが,時間を正の方向に限定すれば,より弱い条件の下でも時間大域解が存在することが Agemi, Kubo, Hoshiga 等により指摘されている. 本講演では,Agemi 条件下での解の長時間挙動について得られた結果を紹介する. 本講演は砂川秀明氏(大阪市立大学),寺下拓貴氏との共同研究 (arXiv:2002.09639) に基づく.


● 2020 年 10 月 16 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
白木 尚武 氏 (埼玉大学理工学研究科)
Shobu Shiraki (Saitama University)
講演題目
分数階 Schrödinger 方程式に対する各点収束問題と収束経路の与える影響
Some variations of the pointwise convergence problem for the fractional Schrödinger equation
講演要旨
Schrödinger 方程式に対する各点収束問題(Carleson の問題)は調和解析における一つの重要な問題として知られ,ごく最近著しく進展するに至った. 一方で,その問題の重要性に伴いこれまで数多くの自然な一般化が考案され多角的に研究されてきた. その一環として Cho, Lee, Vargas の 3 氏は,収束経路に「フラクタル集合から生成される線群」と「接曲線」の異なる二種類を採用し,それぞれが各点収束性に与える影響を解析した. 本講演では,彼らが得た標準的 Schrödinger 方程式についての結果を分数階 Schrödinger 方程式について一般化するとともに,我々が用いた新たなアプローチについて紹介する. なお,本講演の一部は Seoul National University の Chu-hee Cho 氏との共同研究に基づく.
In harmonic analysis, the pointwise convergence problem for the solution to the Schrödinger equation, sometimes called Carleson's problem, has recently drawn enormous attention and progress has been significant. There are also a number of natural variations of the classical problem. Cho, Lee and Vargas took a wider perspective and sought to understand the effect of varying the paths of convergence; along lines generated by a given fractal set, and along a tangential curve. I will introduce the new ideas in our recent work that allowed us to extend the results obtained by Cho--Lee--Vargas from the standard Schrödinger equation to the fractional Schrödinger equation. Part of the talk is based on collaborative work with Chu-hee Cho from Seoul National University.


● 2020 年 10 月 23 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
筒井 容平 氏 (京都大学)
Yohei Tsutsui (Kyoto University)
講演題目
A sparse form bound for an operator with wave propagator
講演要旨
Sparse bound とは,近年活発に研究されている作用素の各点評価の一種である. L^p 評価のみならず Muckenhoupt class の重みを付与した評価も同時に得られるという利点もある. Sparse form bound とは,sparse bound の idea を form (Tf,g) に対して用いた評価のことである. 本講演では,maximal Bochner-Riesz means に関連する作用素に対する sparse form bound を紹介する.


● 2020 年 10 月 30 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
三浦 達哉 氏 (東京工業大学)
Tatsuya Miura (Tokyo Institute of Technology)
講演題目
On the isoperimetric inequality and surface diffusion flow for multiply winding curves
講演要旨
In this talk we discuss dynamical stability of multiply covered circles under the surface diffusion flow. To this end we first establish a general form of the isoperimetric inequality for immersed closed curves under rotational symmetry, which would be of independent interest. We then apply it to obtaining a certain class of rotationally symmetric initial curves from which solutions to the surface diffusion flow exist globally-in-time and converge to multiply covered circles. This talk is based on a joint work with Shinya Okabe at Tohoku University.


● 2020 年 11 月 6 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
田中 智之 氏 (名古屋大学)
Tomoyuki Tanaka (Nagoya University)
講演題目
Well-posedness and parabolic smoothing effect for higher order Schrödinger type equations with constant coefficients
講演要旨
本講演では,定数を係数にもつ高階のシュレディンガー型方程式の初期値問題を考える. 常微分方程式の議論から解の存在が得られるため,本研究の目的は,方程式の係数がもたらす解の正則性の崩壊を調べることである. 結果として,自乗可積分関数を初期値とした場合に,初期値問題が次の 3 つのタイプに分類されることが分かった: 1. 時間正負両方向に解の正則性が維持される (dispersive), 2. 時間一方向に強い平滑化効果がはたらき,逆方向には非適切 (parabolic), 3. 自乗可積分空間の稠密部分集合上で非適切 (ill-posed). 本講演は,津川光太郎氏(中央大学)との共同研究に基づく.


● 2020 年 11 月 13 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
渡邊 圭市 氏 (早稲田大学国際理工学センター)
Keiichi Watanabe (Global Center for Science and Engineering, Waseda University)
講演題目
The Moving Contact Line Problem in Cylindrical Domains
講演要旨
接触角を生成するナビエ・ストークス方程式の自由境界問題を考える. 本講演では,接触角を 90 度に固定した場合,与えられた時刻 T > 0 に対して方程式系の時間局所適切性を得られることを報告する. 証明は主に reflection argument に基づくが,本講演では半空間の半分の領域(opening angle が 90 度となる wedge domain)において,slip 境界条件と自由境界条件を伴う Stokes 方程式の可解性について焦点を当てる.


● 2020 年 11 月 20 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
眞崎 聡 氏 (大阪大学)
Satoshi Masaki (Osaka University)
講演題目
On the asymptotic behavior of solutions to the 1d cubic nonlinear Klein-Gordon systems
講演要旨
未知変数の微分を含まない多項式型 3 次非線形項を持つ 1 次元 Klein-Gordon 方程式 2 本からなるシステムに対して,解の時刻無限大での漸近挙動を考える. 空間 1 次元において 3 次の非線形項は臨界次数であり,解の挙動には非線形項に応じて複数のタイプが存在することが知られている.
この形のシステムの集合は未知変数の線形変換について閉じており,可逆な線形変換によって自然にシステムの間に同値関係が導入される. ここでは,システムの集合をこの同値関係で割った商集合を調べることによって解の挙動を調べる. より具体的に述べると,1. 与えられたシステムがどの同値類に属するかを判定し,2. 対応するモデルシステム(同値類の代表元)へ変換する具体的手順を与え,3. モデルシステムの解の挙動の解析を行う,という手段により一定のクラスのシステムの解の挙動を考察する. 今回はこの形のシステム全体は扱えていないものの,これまで時間大域挙動が知られていたこの形のシステムをすべて含む集合において同値類の分類を与えた. 同値類を調べる際には同値関係で保たれる不変量を見つけることが重要になるが,非線形項から決まるある行列によってこのような量が与えられることが分かった. また,この解析を通して,これまで知られていない新しいタイプの漸近挙動を持つシステムが発見された.
本研究は,瀬片純市氏(九州大学),瓜屋航太氏(岡山理科大学)との共同研究に基づく.


● 2020 年 11 月 27 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
福田 一貴 氏 (信州大学工学部)
Ikki Fukuda (Shinshu University)
講演題目
粘性 Fornberg-Whitham 方程式の解の高次漸近形
Higher-order asymptotic profiles of the solutions to the viscous Fornberg-Whitham equation
講演要旨
本講演では,粘性 Fornberg-Whitham 方程式の初期値問題に対する時間大域解の漸近挙動について取り扱う. Fornberg-Whitham 方程式は水面波に関する非線形分散型方程式の一つであり,分散項が非局所的な畳み込み積分の形で与えられるのが特徴である. 本研究で扱う方程式は,元の方程式に散逸効果を表現する粘性項を付与したものであり,非局所分散項付きの Burgers 型方程式とみなせる. KdV-Burgers 方程式などの,分散項付きの Burgers 型方程式に対しては,初期値が空間遠方で減衰する場合,解は非線形散逸波と呼ばれる Burgers 方程式の自己相似解に漸近することと,その最適な漸近レート,また分散の影響が解の第 2 次漸近形に現れることなどが知られている. 本研究では,粘性 Fornberg-Whitham 方程式に対して,非局所分散項が三階微分型の分散項と比べて解の漸近挙動にどのような影響を与えるかという観点から解析を行った. 具体的には,フーリエ変換に基づく非局所分散項の級数展開を利用することで,解の挙動を第 3 次漸近形まで導出し,より高次の漸近形についての考察も行い,解の構造に関する新しい知見が得られたので,KdV-Burgers 方程式に対する結果と比較しながら紹介したい. なお,本講演の内容は板坂健太氏との共同研究に基づく.


● 2020 年 12 月 4 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
谷口 晃一 氏 (名古屋大学)
Koichi Taniguchi (Nagoya University)
講演題目
Dissipation and blow up for the Hardy-Sobolev parabolic equation below the ground state
講演要旨
本講演では,Hardy-Sobolev 型半線型熱方程式の初期値問題を考える. 特にエネルギー臨界の場合を考察する. この方程式は非線形項に空間に関する特異ポテンシャルをもつ熱方程式であり,その定常問題は恒星系のモデルとして,数学・物理学において古くから研究されている. 数学的には,非線形項の特異性により,方程式が空間に関する平行不変性や古典解を持たない点が特徴的である. 本講演の目的は,対応する基底状態より小さいエネルギーを持つ初期値に対して,解の挙動を決定づける初期値の必要十分条件を与えることである. より正確には,初期値のノルムの大きさにより解が散逸解になるか爆発解になるかが完全に決定づけられる. 本講演は,千頭昇氏(名古屋工業大学)と池田正弘氏(理化学研究所・慶應義塾大学)との共同研究に基づく.


● 2020 年 12 月 11 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
藤原 和将 氏 (名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
Kazumasa Fujiwara (Nagoya University)
講演題目
Necessary and sufficient condition for global existence of $L^2$ solutions for 1D periodic NLS with non-gauge invariant quadratic nonlinearity
講演要旨
1 次元トーラスに於いて絶対値の自乗を非線型項に有するシュレーディンガー方程式の初期値問題を考える. 本講演の目的は,自乗可積分となる解が有限時刻で爆発する為の必要充分条件を求める事である. これまで,絶対値の冪乗で非線型項が与えられる初期値問題は,空間(トーラスやユークリッド空間)や方程式に限らず,或る初期値に対する符号条件の下で解の爆発現象がよく議論されてきた. 特にこれまでの爆発解析では,解のフーリエ 0 モードが主な解析の対象であり,方程式の線形な主要部の取り扱いが注目されてきた. 一方で上記初期値問題に対しては,解の振動が与える相互作用を解析する事で,自乗可積分な初期値が空間に就いて変動するならば,解が有限時刻で爆発する事が判明した. 本講演では,解の爆発現象に対する初期値の条件を詳しく調べる為の,解の自己相互作用の解析手法に就いて紹介する. なお,本講演はピサ大学の V. Georgiev 教授との共同研究に基づく.


● 2021 年 1 月 8 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
前田 昌也 氏 (千葉大学)
Masaya Maeda (Chiba University)
講演題目
Coordinates at small energy and refined profiles for the Nonlinear Schrödinger Equation
講演要旨
This talk is based on the joint work with S.Cuccagna (arXiv:2004.01366).
In this talk, I explain a new and simplified proof of the theorem on selection of standing waves for small energy solutions of the nonlinear Schrödinger equations (NLS). We consider a NLS with a Schrödinger operator with several eigenvalues, with corresponding families of small standing waves, and we show that any small energy solution converges to the orbit of a time periodic solution plus a scattering term. The novel idea is to consider the "refined profile", a quasi-periodic function in time which almost solves the NLS and encodes the discrete modes of a solution. The refined profile, obtained by elementary means, gives us directly an optimal coordinate system, avoiding the normal form arguments in the previous work, giving us also a better understanding of the Fermi Golden Rule.


● 2021 年 1 月 15 日 (Fri) 15:30 〜 16:30 (オンラインセミナー)
講演者
菊池 弘明 氏 (津田塾大学)
Hiroaki Kikuchi (Tsuda University)
講演題目
Ground states to combined power-type nonlinear Schrödinger equations in three space dimensions
講演要旨
この講演では,空間 3 次元の非線形シュレディンガー方程式の ground state について話したい. 考える非線形項は二重冪で,そのうち,一方はソボレフ臨界で,他方はソボレフ劣臨界のものとする. ここでは,ソボレフ劣臨界の冪の指数が 3 以下のときは,ある臨界振動数が存在して,振動数がその臨界振動数より低いときは ground state は存在し,高いときは ground state は存在しないことを説明したい. また,時間に余裕があれば,ground state の非退化性についてもふれたい. この講演は,赤堀公史氏(静岡大),Slim Ibrahim 氏 (University of Victoria), 名和範人氏(明治大)との共同研究に基づく.


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