96年度研究報告書


日本学術振興会提出

以前,私は振動型無限積分に対する改良版DE公式を提案した.この改良版DE公式 は,変数変換を刻み幅 h に依存するようにうまく選ぶことで,被積分関数の複素 平面上での特異性に対して強くなるように改善したものである.この改善は数値 実験で確かめることができたが,本年度はさらにこの改良版DE公式についての詳 しい誤差解析を行った.具体的には,被積分関数が複素平面上に特異点をもたな い例と,被積分関数が複素平面上に特異点をもつ例とについて,標本点数 N に 対する誤差の振舞いを調べた.結果はともに,DE公式の典型的な精度である exp(-C N / log N), C > 0 のオーダーに等しくなることが証明でき,被 積分関数に特異点があっても,C の値が小さくなるだけで,極端に精度が低下 することはないことがわかった.また,被積分関数に特異点をもたない例でも, C の値が大きくなり,性能がよくなることがわかった.

前年度,私は振動周期がわからない積分または振動が等間隔でない振動積分(例 えばBessel関数を含む積分など)についての効率的な計算法を提案した.これ は,線形の交代級数の加速法のある種の極限で得られる重み関数を,振動積分に 対する変数変換を施した後の被積分関数に掛け合わせる方法である.本年度はま た,この計算法に基づく具体的な自動積分ルーチンを作成し,性能の評価を行っ た.この自動積分ルーチンの標本数 N に対する精度は,単独の改良版DE公式 に比べ,同じ程度あるいはそれ以上になることがわかった.また,自動積分の次 第に精度を向上させるプロセスでは,前段の標本点の値がそのまま使えるので, 効率はさらによくなることが具体的に示せた.このルーチンは,振動が等間隔で ない積分についても同様の性能で計算でき,振動周期がわからない積分について も効率は多少悪くなるがうまく計算できることが示せた.このルーチンでの変数 変換は,改良版DE変換と,改良版DE変換の正の区間での減衰を一重指数関数的な 振舞いにした変数変換との二つを用いた.なぜならば,この方法では,変数変換 にある種の加速の重み関数を掛けて被積分関数の正の区間の打ち切り誤差を小さ くしているので,積分公式の標本点を被積分関数のゼロ点に二重指数関数的に近 付けるように変数変換を選ぶ必要はないからである.この二つの変換を実際の積 分に適用して性能を比較したところ,片側一重変換の方が効率的である場合があ ることがわかった.したがって,この変数変換にある種の加速の重み関数を掛け る方法では,最適な変換は二重指数関数的な振舞いとは異なることが予想され, 今後詳しい誤差解析が必要である.


文部省科学技術研究費報告書類

私は以前,減衰の遅い振動型無限積分(減衰の遅いFourier型積分)に対して直接 二重指数関数型変換(DE変換)を用いる新しい変数変換型数値積分公式の提案を 行った. この方法は,従来用いられてきた計算法と比較してかなり効率がよく ,特異積分に対しても従来のDE公式同様に強く,実用性の高い計算法である が,従来のDE公式と比較すると改善すべき点がいくつかある. 具体的には,振動が等間隔でない振動積分(例えばBessel関数を含む積分など)や 漸近的に三角関数以外の振動項を含む積分については適用することができない. また次第に精度を向上させるプロセスでは,前段の結果が有効に使えず従来の DE公式と比較して効率が悪くなるという欠点もある. 本年度は,これらの減衰の遅い振動型無限積分に対するDE公式の欠点の改良を目的と した.

Bessel関数を含む積分のように振動が等間隔でない振動積分については変数 変換後の積分に対してある種の加速を適用する方法を提案した. 線形の交代級数の加速法のある種の極限で得られる重み関数を被積分関数に 掛け合わせることで減衰の遅い振動積分の加速ができることを示せたのでこ れを応用した方法である. 等間隔の振動積分のDE公式に比べて加速の項が入るので多少効率が悪くなるが パラメータをうまく選べば実用的に問題はないことを実験的に確かめることが できた.さらにこの方法を用いることで,次第に精度を向上させるプロセスで効率 が悪くなるという欠点も同時に補うことができ,より効率的に実用的な計算が行え ることを確認できた.


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