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任意クロックジェネレータ

完成図

これは,0.1 Hz から 20 MHz までの任意の周波数のクロックを 5 桁の精度で作り出すものです. これは,かなり昔(パソコンのクロックが十メガヘルツ程度だったころ)に 作ったものです. これは CPU のクロック変更以外にも,ちょっとした発振器の代わりや 楽器のチューニングなどにも使えて非常に役に立つものの一つです.

回路構成

この回路の概略は,PLL (Phase Locked Loop) の構成になっています. PLL は簡単に言うと VCO (電圧で周波数を可変できる発振器) と 正確な水晶発振器とそれらの周波数をカウントするカウンタと 位相比較器とフィルタからなるループのことです. PLL の原理は,例えば 123 kHz の周波数がほしい場合,まず VCO のカウンタの設定を 123 個のパルスをカウントして一個の パルスが出るようにします.次に,水晶発振器で作った 1 kHz の 正確な周波数との位相の比較を行い,位相が進んで(遅れて)いる 場合には周波数を下げる(上げる)ように VCO を制御します. 一般に PLL 回路は非常に多くの電子機器に使われていて,例えば 携帯電話や無線機などの周波数は PLL で制御されています. PLL の精度と安定性については,きちんと計算しようとしたら とんでもない数学の問題になってしまいます.実際の位相比較後の フィルターの定数は経験的な式によって求めています. この経験式は,位相比較 IC の規格書などに書いてあります.

この回路での VCO はトランジスタを用いた無安定フリップフロップ型の 発振器で,トランジスタが飽和して遅くならないようにショットキー ダイオードがつけてあります.水晶発振器は 12.8 MHz のものを カウンタで 6400 分の 1 にして 2 kHz にして位相比較にかけます. 位相比較器は TC5081AP という専用 IC を用いています. VCO のカウンタのほうは TC9122P という可変のカウンタの専用 IC を 使っています.しかし,このカウンタ IC は 4 桁程度の精度しかなく 最高作動周波数も数メガヘルツしかありません.そこで, 74HC161 の高速カウンタ (当時としては高速) を可変分周カウンタとして 用いるということをしてあります.74HC161 は 1 から 16 までの任意の カウントを設定できるため,10 カウントと 11 カウントを切り替えて 使っています.74HC161 の出力は 10 または 11 分の 1 の周波数に 下がるため TC9122P でカウントできるようになります. このカウンタの原理は,たとえば 10234 kHz がほしい場合は, TC9122P の設定を 1023 カウントにしておいて,74HC161 のカウントを 通常は 10 カウントにしておいて最後の 4 回だけ 11 カウントにする というものです.この方法を用いることで最小の高速部品で高精度の カウントができるようになります.この方式のカウンタには実は名前が ついていて確かスワロカウンタ(自信はない)というようです. 最近,ギガヘルツ単位のカウントができるスワロカウンタ IC が 秋葉原の部品屋で数百円で売っているのを見かけたことがあります.

このクロックジェネレータの詳しい回路図は手元にあるのですが, 昔のものなので最新の高速の専用 IC を用いたほうが安く良いものが できるので,省かせていただきます.