チェス関連の蔵書:Kasparovの本



On My Great Predecessors: Part 1
Garry Kasparov

全時代を通して最強のチェスプレーヤーとも言われる13代目世界チャンピオンKasparovが、
彼の先人たち(12代目までの世界チャンピオンとそのライバルたち)について書く、という豪華な内容。
こういう本を書いてもよい人間はKasparov以外にはいないだろう。
歴史的な書物と言っていい。
(将棋で羽生さんが「将棋名人列伝」を書くようなもの、というたとえを聞いたことがある。
 もちろん、羽生さん以外の人がそういう本を書いてはいけないという意味ではありません。)
このシリーズでチェスが生まれてからKasparov以前までのチェスの発展の歴史を概観できる。
(Kasparovは近代に入ってからのチェスの発展は「gigantic」だと書いてある。)
1970年代以降は、次の「On Modern Chess」シリーズでカバーされる。

第1巻はSteinitz以前(Staunton, Anderssen, Morphyなど),
Steinitz, Lasker, Capablanca, Alekhineを収録。全148局。
すべてのトッププレーヤーのスタイルはその時代性を反映している、と言う前書きも面白い。
イタリアとスペインで世界でもっともチェスが研究されたのはルネサンスの時代、
時代は下ってPhilidorの「ポーンはチェスの魂」はフランス革命の到来?
その後のRomantic eraは啓蒙の時代、
局面を初めていくつかの要素に分けて分析する理論を創ったSteinitzは科学の時代
(Philidor以降忘れられていたポジショナルプレーも創始した)、
チェスに心理学的要素をとりこんだLaskerはFreudの時代、
Capablancaは第1時世界大戦後の希望と楽観に満ちた時代、
Alekhineは第2次世界大戦の時代、Euweは機械台頭の時代、
Botvinnikはスターリン時代等のような説明は、
ちょとこじつけも多いような気もしたが興味深い。

若島正氏は
>カスパロフに、そしてチェスというものに、激しく嫉妬する書物である。
>すべての将棋関係者は、この書物に匹敵するようなものを
>将棋がこれまでに生み出したかどうか、真剣に考える必要があるだろう。
>将棋は日本文化ですとお題目のように唱えるだけでは、文化でもなんでもない。
>これだけの書物を残せるかどうか、それが文化というものではないか。
>目下のところ、彼我の差はあまりにも大きい。
と述べている。
(ちなみに僕は、将棋とチェスとでどちらが上とかはりあう必要は別に無い、と考えています。)


On My Great Predecessors: Part 2
Garry Kasparov

第2巻は、Euwe, Botvinnik, Tal, Smyslovを収録。全149局。




On My Great Predecessors: Part 3
Garry Kasparov

第3巻は、Petrosian, Spasskyを収録。全85局。




On My Great Predecessors: Part 4
Garry Kasparov

第4巻は、すべてのチェス好きが待ち望んだ本。
KasparovがFischerについて書く。全107局。
同時代のライバルであるReshevsky, Najdorf, Larsenについても書いてある。


On My Great Predecessors: Part 5
Garry Kasparov

第5巻は、Karpovと同時代のライバルKorchnoi。全106局。




On Modern Chess, Part 1: Revolution in the 70s
Garry Kasparov






On Modern Chess, Part 2: Kasparov vs Karpov 1975-1985
Garry Kasparov






On Modern Chess, Part 3: Kasparov vs Karpov 1986-7
Garry Kasparov






On Modern Chess, Part 4: Kasparov vs Karpov 1988-2009
Garry Kasparov






On Garry Kasparov, Part 1: 1973--1985
Garry Kasparov






On Garry Kasparov, Part 2: 1985--1993
Garry Kasparov






On Garry Kasparov, Part 3: 1993--2005
Garry Kasparov






Kasparov Against the World
Garry Kasparov, Daniel King

1999年、4ヵ月にわたるKasparov対The World(インターネットでの投票により手が決まる)の棋譜の解説。
投票のパーセンテージなども載っている。
けっこう面白い。誤植が多い。




How Life Imitates Chess
Garry Kasparov

チェス理論書ではない。
チェスから学んだ状況判断と決断力を自分が人生にどう適用したかを述べる。
僕が買ったのは新たな前書きが追加された版。
チェスは着手をパスすることができない。
プランを持たない者にとってはそれがかえって重荷になる、という説明は興味深い。
プランを持つことを重視する。
「何かすることがある時に何をするのか知るのがタクティクスで、
何もすることがない時に何をするのか知るのがストラテジー」、
「ころころ変わるストラテジーは、ストラテジーを持たないことと同じ」などなど興味深い。
タイトルは「人生はいかにチェスに似ているか」という意味だが、
Kasparovの解答は「似ていない」。


決定力を鍛える--チェス世界王者に学ぶ生き方の秘訣
ガルリ・カスパロフ (訳:近藤隆文)

「How Life Imitates Chess」の日本語訳。
英語で読むのは疲れるし、
Kasparovみずからのチェス選手紹介のコラムが追加されていたので買った。
タイトルが「決定力」とか「秘訣」とかお手軽なhow to本を連想させるのが残念。
本当は非常に濃密な本。このタイトルはいただけない。
ちょくちょくある実戦で起きた話とかが僕には面白く感じた。
僕の買った上の英語版の方が日本語版より出版年が遅いのだけれど、
英語版の方にない章がいくつかある。
英語版の方は初版から第二版になる時に削除されたのだろうか。


The Test of Time
Garry Kasparov






Deep Thinking: Where Artificial Intelligence Ends And Human Creativity Begins
Garry Kasparov






DEEP THINKING ディープ・シンキング 人工知能の思考を読む
ガルリ・カスパロフ (訳:染田屋茂)

KasparovがDeep Blueと対局したときの彼の視点からの話が初めて語られる。
けっこう面白かった。
人工知能に関連したトピックも書かれているが、
人工知能について深く考察をする本、ではない。




Garry Kasparov Chess Puzzle Book
Garry Kasparov (英訳:Ken Neat)






Garry Kasparov Chess Challenge
Garry Kasparov (英訳:Ken Neat)






The Best of Garry Kasparov - CD version
Garry Kasparov








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