講演


群の語の問題とG-オートマトン

有限生成群Gの語の問題とは,Gの有限生成系上の文字列の集合であって,Gにおいて単位元を表すもの全体のなす言語のことをいう.与えられた言語クラスに語の問題が属すような群のクラスを決定する,という問題は形式言語理論と群論の双方から興味を持たれている.本講演の前半では,この問いについて知られている種々の結果について紹介する.特に,語の問題が文脈自由言語となる群は実質的自由群であることを主張するMuller-Schuppの定理について,その証明の概略を説明する.

次に,G-オートマトンとは,有限オートマトンに群Gの元を記憶するレジスターをひとつ付加したもので,計算の過程でGの元をレジスターの値に掛けることができる.G-オートマトンが入力文字列を受理するためには,文字列を読み切った段階で受理状態にあるだけでなく,レジスターの値が単位元である必要がある.群Gを決めるごとにG-オートマトンによって認識される言語のクラスがひとつ定まるので,語の問題がG-オートマトンによって認識される群のクラスは何か,という問いが自然に考えられる.本講演の後半では,この問いがMuller-Schuppの定理の自然な一般化になっているということを説明し,また時間が許せば,Gがアーベル群の場合に講演者が最近得た結果についても話したい.