全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第13回
日時: 2020年7月17日(金)
      16:30−18:00
講師: 玉川 安騎男 教授
題目: 平方剰余の相互法則・有限体・2次体
要約:
整数aが素数pを法として平方数と合同であるとき「aはpを法として平方剰余である」と言います。 aとpが与えられたとき、aがpを法として平方剰余であるか平方非剰余であるかは、しらみつぶしで 調べるしか判定できない問題のように見えますが、実際には「平方剰余の相互法則」(第一補充法則・ 第二補充法則を含む)による「ルジャンドル記号」の計算により、簡単に判定できます。この講義の 第一のテーマは、この計算に親しんでもらうことです。

平方剰余の問題は、その定義から、元(げん)の数がpの「有限体」の問題ととらえることができます。 この講義の第二のテーマは、有限体の視点から平方剰余について考え、第一補充法則・第二補充法則の 証明を与えることです。

平方剰余の問題は整数の中の問題ですが、実は、(星さんの講義で取り扱われた)2次体の数論と大いに関係が あります。この講義の第三のテーマは、平方剰余の問題と2次体の数論の関係について説明し、その視点から 平方剰余の相互法則をとらえなおすことです。

参考文献:
平方剰余の相互法則は、初頭整数論や代数的整数論のほとんどの教科書に取り上げられて いると思います。ここでは、私自身が学生時代に勉強した文献を上げておきます:

  • 高木貞治 「初頭整数論講義」 共立出版
  • 小野孝 「数論序説」 裳華房

"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"