全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第1回
日時: 2021年4月9日(金)
      16:45−18:15
場所: 4共11+Zoom(ハイブリッド型)
https://panda.ecs.kyoto-u.ac.jp/portal/site/2021-888-N114-001
講師: 熊谷 隆 教授
題目: ランダムウォークとそのスケール極限
要約:
空間の幾何学的性質を調べるために、空間の離散近似を行い、離散空間の性質を調べ、そのスケール極限として元の空間の性質を知る方法があります。逆に、ネットワークなどの離散モデルの解析のために空間のスケール極限を解析する方法もあり、特に元の離散モデルが統計力学に動機付けを持つランダムなモデルの場合、このような研究は「ランダム幾何学」と呼ばれ、21世紀に入って爆発的に研究が進んでいます。

この講義では、離散空間の上でランダムウォークを考え、そのスケール極限を調べることで離散VS連続を解析の立場からお話しします。ランダムウォークやそのスケール極限を調べることは、空間の上の熱伝導の仕方を調べることになり、これにより空間の持つ物理的性質を知ることができます。講義では具体例を重視し、まずユークリッド空間、次にフラクタルのような滑らかさのない空間、さらにパーコレーションやランダムグラフと呼ばれるランダムな空間について、その上のランダムウォークとスケール極限のお話をする予定です。

参考文献:

  1. 増田直紀・今野紀雄:「複雑ネットワーク」とは何か 講談社ブルーバックス(2006).
  2. 熊谷隆:Random walks on disordered media and their scaling limits, Lect. Notes in Math. 2101, Springer, New York, 2014.

"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"