全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第14回
日時: 2021年7月16日(金)
      16:45−18:15
場所: 4共11+Zoom(ハイブリッド型)
https://panda.ecs.kyoto-u.ac.jp/portal/site/2021-888-N114-001
講師: 玉川 安騎男 教授
題目: ガロアの逆問題と数論幾何
要約:
ガロアの逆問題とは、任意の有限群が有理数体上のガロア群として実現されるかという問題で、 明示的に考察されるようになって既に100年以上たちますが、現在も未解決のままとなっています。 この古典的難問題はヒルベルトの既約性定理を通じて射影空間あるいはアフィン空間のガロア被覆の 問題に帰着され、ネーターの問題、剛性、フルヴィッツ空間など、数論幾何(数論的代数幾何)による いくつかの有効なアプローチが知られています。

この講義では、まず、群・体・ガロア理論について必要なことを一通り速習し、ガロアの逆問題の定式化に 到達するのが第一の目標です。次に、ヒルベルトの既約性定理について解説し、ガロアの逆問題が射影空間 あるいはアフィン空間のガロア被覆(有理関数体のガロア拡大)の問題に帰着されることを説明します。 最後に、ガロアの逆問題への数論幾何学的アプローチについていくつか紹介し、その雰囲気を味わって もらえればと思います。

参考文献: 体論・ガロア理論についてはさまざまな教科書がありますので、自分に合ったものを見つけて もらえればと思いますが、私自身が学生時代に勉強したのは

・藤崎源二郎「体とGalois理論」岩波

などです。ガロアの逆問題についてのまとまった教科書は少ないですが(専門書はいくつかあります)、

・セール「ガロア理論特論」トッパン

は、ある程度入門的かと思います。また、インターネット上でも研究集会の報告集等における解説が 入手できますので、興味のある方は探してみて下さい。


"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"