全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第3回
日時: 2022年4月22日(金)
      16:45−18:15
場所: 4共11(吉田南4号館)
講師: 中西 賢次 教授
題目: 非線形波動方程式とソリトン分解予想
要約:
非線形波動方程式は、様々な物理現象における自己相互作用のある波動の時空変化を 記述する偏微分方程式(のグループ)で、その解は時間と空間変数に依存する関数で すが、相互作用と波動伝播の関係により色々な様相(時間変化)を呈し、それを数学 的に予測するのは非常に難しい問題です。
ソリトンとは、局在化した波の振幅が形を変えずに伝播する特殊解ですが、一般の解 も十分時間が経てば、ソリトンの重合わせに漸近するだろうというのがソリトン分解 予想です。非線形波動方程式全般に対する解決は現在の数学では到底無理と思われま すが、特定の方程式と設定に対しては最近の進展が著しく、全ての解で成り立つとい う結果が幾つか得られてきました。この講義では、問題の背景やこれまでに証明され たこと、その考え方などを解説します。

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