全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第1回
日時: 2022年4月8日(金)
      16:45−18:15
場所: 4共11(吉田南4号館)
講師: 小澤 登高 教授
題目: 積置換アルゴリズムとKazhdanの性質(T)
要約:
集合 X の上の全単射(以後、置換と呼ぶ)の集合を Aut(X) と書くことにする。fとgが置換なら、その合成 fg も置換である(一般に fg と gf は一致しないことに注意)。また、逆置換 f^{-1} も存在する。Aut(X) の部分集合で、合成と逆の2つの操作に閉じているものを(部分)群と呼ぶ。例えば、整数係数の n 次正方可逆行列の集合 GL(n,Z) は群である( X として整数の n 組の集合 Z^n を考える)。とても大きい有限集合 X の上の置換 g_1,...,g_7 が与えられたとき( 7 という数に特に意味はなく、大きくない自然数なら何でもよい)、置換 g_1,...,g_7 で生成される群、つまり、g_1,...,g_7 及びその逆の幾つかの積で表されるような置換たちの成す群はどのような性質を持つであろうか?そのような群に属する典型的な置換はどのように見えるだろうか?こうした問題は純粋数学のみならず、工業上の応用もある重要なテーマである。これに取り組むのに無限次元の位相解析学が役立つことを紹介する。

"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"