全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第11回
日時: 2022年7月1日(金)
      16:45−18:15
場所: 4共11(吉田南4号館)
講師: 望月 拓郎 教授
題目: Hitchin方程式と小林-Hitchin対応
要約:
微分方程式で定められる幾何学的な対象と代数的な対象の間の対応を見出すことは, 微分幾何学における重要なテーマです. ``小林-Hitchin対応''はそのような対応の中でも特に興味深いものの一つです. もともとは, ``複素射影多様体上のベクトル束が安定であるための必要十分条件は, 既約Hermitian-Einstein計量を持つことである'' という定理ですが, さまざまな一般化や変種が研究されてきました.

この講義では, Hitchin方程式という非線形偏微分方程式を紹介し, その解の分類に関する小林-Hitchin対応を特別な場合に説明します.

参考文献:

  • 小林昭七 「複素幾何」(岩波書店)
     
  • I. M. シンガー, J. A. ソープ, トポロジーと幾何学入門 (培風館)
     
  • 小林昭七, Differential geometry of complex vector bundles (Princeton University Press)
     
  • N. J. Hitchin, The self-duality equations on a Riemann surface, Proc. London Math. Soc. (3) 55 (1987), 59--126

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