全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第12回
日時: 2023年7月14日(金)
      16:45−18:15
場所: 数理解析研究所420号室
講師: 藤田 遼 助教
題目: 箙の表現とルート系
要約:
箙(えびら、quiver)とは元来、矢を入れる筒を表す語ですが、数学ではしばしば有向グラフの同義語として用います。箙の表現とは、単に有向グラフの各辺に沿って線形写像を並べたものです。非常に素朴な対象に思えますが、これを深く調べると、ルート系と呼ばれる組合せ論的構造が見えてきます。ルート系は複素単純リー群やそのリー代数の構造を統制する重要な対象であり、正多面体の対称性や代数多様体の特異点の理論など現代数学の様々なトピックにも現れます。本講義では箙の表現とルート系、両者の関係性について説明します。

参考文献:

  1. 草場公邦、「行列特論」(第2章:ガブリエルの定理)、裳華房、基礎数学選書21
  2. Pavel Etingof, Oleg Golberg, Sebastian Hensel, Tiankai Liu, Alex Schwendner, Dmitry Vaintrob, Elena Yudovina, ``Introduction to Representation Theory" (Chapter 6: Quiver Representations), AMS, Student Mathematical Library vol. 59(和訳:西山享訳、「表現論入門」、丸善出版より近刊)
  3. 松澤淳一、「特異点とルート系」、朝倉書店、すうがくの風景6

"http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ja/special-02.html"