全学共通科目講義(1回生〜4回生対象)

 

現代の数学と数理解析
  ―― 基礎概念とその諸科学への広がり

授業のテーマと目的:
数学が発展してきた過程では、自然科学、 社会科学などの種々の学問分野で提起される問題を解決するために、 既存の数学の枠組みにとらわれない、 新しい数理科学的な方法や理論が導入されてきた。 また、逆に、そのような新しい流れが、 数学の核心的な理論へと発展した例も数知れず存在する。 このような数学と数理解析の展開の諸相について、第一線の研究者が、 自身の研究を踏まえた入門的・解説的な講義を行う。

数学・数理解析の研究の面白さ・深さを、 感性豊かな学生諸君に味わってもらうことを意図して講義し、 原則として予備知識は仮定しない。

第13回
日時: 2023年7月21 日(金)
      16:45−18:15
場所: 数理解析研究所420号室
講師: 玉川 安騎男 教授
題目: 1の冪根と整数論
要約:
自然数nに対する1のn乗根は、複素平面内の単位円周をn等分する点として簡単に表示する ことができます。一方、1のn乗根は、円分体・円分指標などの形で、現代の代数的整数論や数論幾何学に大きなかかわりを持っています。

この講義の主な目的は、1の冪根(=累乗根)のいくつかの整数論的性質についてなるべくわかりやすく解説し、その中で、整数論のさまざまな概念や考え方にふれてもらうことです。特に、円分多項式の係数の整数性や有理数体上の既約性の証明をそれぞれ複数与え、それらの整数論的意味について紹介したいと思います。その後時間が許す範囲で、1の冪根がどのように現代の整数論・数論幾何学に現れてくるかについて、いくつかの例を雰囲気だけでも説明できれば と思っています。


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