Japan. J. Math. 18, 67--113 (2023)

例外は当たり前か?3つの例

M. ギージ,M. ゴビーノ

Abstract:
解析学におけるいくつかの反例は,ある種の予想外の振舞いをする特別な対象の存在として提示される.ところが,「予想外の振る舞い」と思っていることが,全体像を見ると実は孤立した例外ではなく,適切な仮定の下で「当たり前」の典型例となっていることを3つの異なるケースで例示する.(ここで「当たり前」という言葉は,ベールのカテゴリー定理の意味での例外を抜いた,という意味で用いている).

最初の例は,近似微分に関する古典的な結果の再検討である.2つ目の例は,時間に依存したヘルダー連続な伝搬速度を持つ線形波動方程式の解に対する微分損失について考える.3つ目の結果は,速度場がリプシッツ連続とは限らない輸送方程式の解に対する微分損失を扱う.