第25回高木レクチャー招待講演
2025年10月18日(土)16:45--17:45
2025年10月19日(日)14:00--15:00
東京大学大学院数理科学研究科
NISSAY Lecture Hall(大講義室)


リー群の離散部分群と固有な作用
Fanny Kassel
(Institut des Hautes Études Scientifiques)


Abstract

リー群の離散部分群は,数学のさまざまな分野で基本的な役割を果たしています.

$\mathrm{SL}(2, \mathbb{R})$の離散部分群は対応する双曲的曲面の幾何によってよく理解され,分類されます.しかし,$\mathrm{SL}(n, \mathbb{R})$ $(n > 2)$の場合,離散部分群がその格子(すなわち,ハール測度に関して有限共体積をもつ離散部分群)という場合―これは重要な場合ではありますが―を除いては,謎に包まれています.過去20年ほどの間に,格子よりも「薄く」,より柔軟で,幾何学的・力学的に顕著な性質をもつ,いくつかの興味深い離散部分群のクラスが登場してきました.本講演では,それらの発展を概観し,これら新しいクラスのいくつかを紹介します.

さらに,離散部分群が等質空間に対して固有不連続に作用する場合について,とりわけ「コンパクト商問題」に焦点を当てて議論します.これは,「等質空間$G/H$が与えられたとき,$\Gamma\backslash G/H$がコンパクト多様体となるような$G$の離散部分群$\Gamma$が存在するか?」という難問です.