NLPDE one day セミナー



日時 2021 年 7 月 10 日 (土) 13 : 00 -- 16 : 20 
会場 オンライン開催(Zoom)



プログラム

PDF版

13 : 00 -- 13 : 50 加藤 勲 氏 (京都大・理)
Local well-posedness for the degenerate Zakharov system
14 : 10 -- 15 : 00 林 雅行 氏 (京都大・数理研)
Instability of degenerate solitons for nonlinear Schrödinger equations with derivative
15 : 30 -- 16 : 20 三浦 達彦 氏 (京都大・理)
Linear stability and enhanced dissipation for the two-jet Kolmogorov type flow on the unit sphere



アブストラクト

PDF版

加藤 勲 氏 (京都大・理)
Local well-posedness for the degenerate Zakharov system
 本講演では退化 Zakharov 方程式の初期値問題の適切性を考察する. この方程式は Zakharov 方程式において一方向の分散性が退化したものとして記述されるが,非線型相互作用における共鳴構造のため初期値問題の適切性でさえ十分に解明されていない. 本講演では Barros-Linares (2015) により得られた,時間局所適切性の結果よりも低い滑らかさを持つ初期値に対して時間局所適切であることを述べる. 通常の Fourier 制限ノルム法では証明の鍵となる非線型評価が得られない. そこで Schrödinger 方程式の解空間として,Bejenaru-Ionescu-Kenig-Tataru (2011) による線型評価 (maximal function estimate,local smoothing estimate) を基にしたものを用いることで,非線型評価が導出されることを述べる. なお本講演は Bielefeld 大学の Sebastian Herr 氏,Martin Spitz 氏,埼玉大学の木下真也氏との共同研究に基づく.


林 雅行 氏 (京都大・数理研)
Instability of degenerate solitons for nonlinear Schrödinger equations with derivative
 本講演ではよく知られた微分型非線形シュレディンガー方程式(微分型 NLS)に 5 次の冪型非線形項を付加した質量臨界の方程式を考え,ソリトンの不安定性について議論する. 付加項が集約的であるとき,ソリトン全体の中で安定/不安定の境界に位置する退化したソリトンが現れ,初期値がこのソリトンの質量よりも小さいという質量条件を満たすならば,対応する解は時間大域的に存在することが知られている. 微分型 NLS では退化したソリトンが代数ソリトンに対応し,質量条件が 4π の条件に対応している. ここで現れる退化したソリトンは一般論の枠組みでは安定性/不安定性が決定できない場合に相当していることに注意する.
 本講演ではソリトン周りの線形化作用素のスペクトルを整理し,modulation 解析と local Virial 等式を組み合わせて,付加項が集約的であるときの退化したソリトンの定量的な不安定性を証明する. 付加項がない微分型 NLS の代数ソリトンに関しても証明の大部分が適用でき,このことは微分型 NLS の代数ソリトン周りのダイナミクス解明に向けて重要な指針になると期待される. 時間があれば最近の可積分系の方面からの微分型 NLS の研究と今回の不安定性の結果との関連性について考察したことも述べたい. なお本講演は深谷法良氏(東京理科大学)との共同研究 (arXiv:2102.13014) に基づくものである.


三浦 達彦 氏 (京都大・理)
Linear stability and enhanced dissipation for the two-jet Kolmogorov type flow on the unit sphere
 本講演では 2 次元単位球面上の Navier-Stokes 方程式に対する Kolmogorov 型定常流の線形安定性について考える. Kolmogorov 型定常流は緯度のみに依存する球面調和関数を渦度とするような Navier-Stokes 方程式の定常解であり,2 次元平面上の Navier-Stokes 方程式の定常解である Kolmogorov 流の球面版と考えることができる. 本講演では 2 次の球面調和関数から定まる two-jet Kolmogorov 型定常流の周りでの線形化方程式を考え,任意の粘性係数に対して線形化方程式の解が時間無限大で平衡点に指数関数的に収束することを示す. 更に,粘性係数が十分小さいときの解の挙動について調べるため,線形化方程式に現れる摂動作用素の固有値問題を考え,球面調和関数の満たすある種の漸化式により表される摂動作用素の混合効果に基づいて摂動作用素が 0 以外に固有値を持たないことを証明する. この結果の応用として,粘性係数が十分小さいときに線形化方程式の解が通常のエネルギー計算で導かれるオーダーよりも速いオーダーで時間減衰するという enhanced dissipation が発生することを示す.




世話人 堤 誉志雄 (京都大・理)
中西 賢次 (京都大・数理研)
前川 泰則 (京都大・理)
高棹 圭介 (京都大・理/白眉)
筒井 容平 (京都大・理)
岸本 展  (京都大・数理研)
鶴見 裕之 (京都大・理)
三宅 庸仁 (京都大・数理研)