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: 数学の歴史 : 応用解析等教科書の個人的な概観 : 流体力学

数値解析

若い頃は数値解析も勉強していたので数値解析についてもコメントしておこう. 加古 考氏の書評(本誌13巻(2003) No. 3, 84ページ)にあげられている有限要素法の 本は, 私にとっても役立った本が多い. 読んでいない本もあるが, 良書のリスト であると思う. 数値解析全般について詳しく 解説している[43]は通読するにもよいし辞典のように使ってもよい. きっとロングセラーになるであろう. [31]は私が若い頃に 最初に学んだ数値解析の 教科書の改訂・拡大版なので思い出深い. 数値解析の理論がよく整理されており, 線形代数と関数論の知識があれば読むことができる. 学生さんにはいつもお勧めして いる本である.

[3]は多項式近似に関 する話題が並べられており, 知的好奇心を大いに刺激された. 杉原正顯氏に教えて いただいた[17]は複素関数に関する近似理論の総まとめのような ものであり, 特殊なテーマを扱っている本ではあるが非常に読み応えのある本で ある. [33]は精度保証計算に 関するわかりやすい教科書である. 精度保証計算に関する教科書も様々なものが 出版されているが, 偏微分方程式を扱う研究者には[33]が最も歓迎 されるのではなかろうか? [10]は近似論の定評ある教科書である. 学生のころこれを読んで様々な知識を仕入れることができたが, それは今でも 重宝するものばかりである. 感謝の気持ちでいっぱいの本である. [25] はページ数は少ないけれど, 数値解析の基本について一通り学ぶことができ, よくできた本であるということができる. もちろんこの本だけでは最新の 知識は得られないが, 大学4年生くらいの学生が数値解析の基礎理論を 勉強するにはこれくらい題材をしぼった方がよいのであろう.

ウェーブレットについては全くの門外漢であるが, 山田道夫氏から [9]を贈っていただいた. これは英語で書かれた非常に有名な本を 和訳したものである. ふたりの訳者もウェーブレットの専門家として名高く, 信頼の できる翻訳である. ただ, これを読むには数学科の3年生程度の知識は必要かと 思う.



Kazuko Suenaga 平成17年2月10日