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: 結論 : 知られざるグリーン : ポアソン方程式とグリーン関数

ストークスの定理

ガウスの定理やグリーンの定理と同じくらい重要な積分定理にストークスの 定理がある. これについても述べておこう.

定義 2   ベクトル場$ {\bf u}$が与えられたとき別のベクトル場 $ {\rm curl}\, {\bf u}$

$\displaystyle {\rm curl}\, {\bf u}= \left(
\frac{\partial u_3}{\partial x_2} -...
...rac{\partial u_2}{\partial x_1} - \frac{\partial u_1}{\partial x_2} \;
\right)
$

で定義する. curl$ \,$はrot$ \,$と書かれることもある.

定理 2   3次元空間全体で定義されたベクトル場 $ {\bf u}$ と閉曲線 $ C$ が与えられている ものとする. さらに, $ C$を境界に持つ任意の曲面をとり$ \Gamma$とする. このとき次の式が成り立つ.

$\displaystyle \iint_{\Gamma} \left( {\rm curl}\, {\bf u}\right)\cdot {\bf n}\, {\rm d}\Gamma = \int_{C} {\bf u}\cdot {\rm d}{\bf s}$ (10)

ここで, $ {\rm d}{\bf s}$ の向きと曲面上の法ベクトル $ {\bf n}$ の向きは図 2のようにとるものとする.

図 2: ストークスの定理における向きのとりかた. 右手の人差し指 の方向に曲線の向きをとったときに親指が指す方向が曲面の 法線方向である.
\includegraphics[height=4cm]{stothm.eps}

ストークスの定理は電磁気学や流体力学を学ぶときには必須の働きをする重要 なものであるが, これが印刷されたものとして最初に世に現れたのはケンブリッジ大学 の試験であったというのには全く驚かされる. (10) を見たこともない学生は, 「これを証明せよ」という試験を出されても 困惑したであろうことは想像に難くない. ストークスが試験に出したのでストークスの 定理と呼ばれているのであるが, それを最初に証明したのはウィリアム・トムソン で, 彼がケンブリッジに向かう列車の中でこの積分定理を思いつき, それをストーク スへの手紙に書いて, それをストークスが試験問題に出したのがストークスの定理と 呼ばれようになったゆえんであるということである([3]). 従って, 本来これは トムソンの定理(あるいは, トムソンはその後ケルヴィン卿となったのでケルヴィンの 定理)と呼ばれるべきである--これが現在の我々の常識であろう. しかし, ケルヴィンは自分の著書でもこれに対する先取権を主張していないところから見て, 当時の 人々には現在よく言われるような「Publish or Perish (論文を書け. さもなくば 死ね.)」といった状況はなかったのであろう. このふたりは大変仲のよい友人で, 互いに尊敬しあっていたということである.



Kazuko Suenaga 平成17年2月14日