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研究拠点形成実施計画 年度別計画

 本拠点の形成に当たっては、数理解析研究所、 理学研究科数学・数理解析専攻両拠点23名の事業推進担当者を3つに分け、 京都数学フェロー、大学院生を加えた研究グループを構成する。さらに、 国外の研究機関および両拠点以外の京都大学の研究科から、 それぞれのグループに数名の研究協力者を加え、 国際拠点としての性格を強化し京都大学における数学研究、 教育の総合的体制を構築する。各グループに代表者(そのグループのとりまとめ)、 プログラムディレクター(全体の計画の中での調整・効率的な予算配分をはかる)を置き、 3つのグループの有機的協力態勢をはかる。 又、海外の研究者を含めた評価委員会を設け、 平成17年度、平成19年度に評価を行い計画の向上をはかる。

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第1グループ : 無限と大域の対称性

 対称性は、ギリシャ以来数学の中心テーマのひとつである。
19世紀ガロアによる代数方程式の解の対称性を群が記述することの発見、 20世紀初頭のカルタンによる半単純リー環の分類理論などは、 数学全体に多大な影響を与えた。21世紀における対称性の先端的問題は、 無限次元代数の表現論と大域幾何における無限次元空間の研究である。 無限可積分系や弦理論は両者を結ぶ鍵となっている。 すなわちこれらの理論における可解性は無限次元の対称性に由来し、 理論の基礎方程式である非線型偏微分方程式の解の全体を幾何学的にとらえたモジュライ空間が無限次元空間として現れる。 この無限次元空間の対称性を研究する有力な方法として幾何学的表現論が生まれた。

第一グループは、 この「無限と大域の対称性」をテーマに事業担当者の深谷(代表者)、 柏原、上野、三輪(プログラムディレクター)、河野、齋藤、中島、 竹井、加藤(毅)に加えてB. Feigin(ランダウ研究所、ロシア)、 P. Schapira (パリ大学、仏)、S.-J. Kang (KIAS、 韓国)、 Y.-G. Oh (同)、堀健太郎(トロント、カナダ)、 松木敏彦(京都大学総合人間学部)、高崎金久(同)による研究を行なう。

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第2グループ : 数論と代数幾何の融合

 数論も有史以来の数学の中心的テーマの一つであるが、 今日にいう数論はディオファントスに始まる。一方、 数論的問題を幾何学的視点でとらえようという考え方(数論幾何)の起源はデカルトにある。 特に、20世紀にヴェイユの抽象代数多様体の理論、 グロタンディクのスキーム理論等により、その考え方は飛躍的に発展した。 これは、代数幾何においては森理論による高次元の双有理幾何への大きな一歩につながり、 数論においては、ヴェイユ予想、モーデル予想、 フェルマー予想等の20世紀中には解決が無理だと思われていた困難な問題が数多く解決された。 また、代数幾何学は他の分野との接点になることが多く、 数論固有の問題だと思われていたことが代数幾何学を媒体として数理物理学等の研究に現れている。 21世紀に入って、数論と代数幾何の融合は、 数学のみならず他の科学分野にもますます多大な影響を与えると考えられる。 第二グループは、この「数論と代数幾何の融合」をテーマに森(代表者)、 吉田(敬)、向井、加藤(和)、 玉川、望月、森脇(プログラムディレクター)に加えてC. Soule(IHES、パリ)、 M. Reid(ウォーリック、英)、斎藤裕(京大大学院人間環境学研究科)による研究を行う。

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第3グループ : 数理現象の解析

 渦のような複雑な現象や、 経済活動に見られるような予想の立てにくい現象を理論的に解明することは極めて今日的なテーマであり、 技術的な応用にも結びつく。 このような数理現象の解析は、数学に課せられた重要な使命の一つである。 本グループでは、このような現象の数理モデルとして複素力学系と数理流体力学を研究する。 又、数理現象の解析の基礎として確率解析の研究を行う。

研究者には岡本(代表者)、高橋、宍倉(プログラムディレクター)、 重川、大木谷、國府、熊谷に、山田道夫(平成15年4月より数理解析研究所教授)、 藤重 悟(同)、劉 太平(台湾科学アカデミー数学研究所所長)、 P. Constantin(シカゴ大学)を加える。

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具体的な活動としては、国際的先端数学研究のため

  1. 各グループにおいてその年のテーマを設定して、 3−12ヶ月間にわたり海外からの研究者5−30人が1−6ヶ月京都に滞在する長期滞在型国際共同研究(年間3件程度)を行う。
  2. 1、2週間程度の国際シンポジウム(年間12件程度)を京都において開催する。 一方次世代研究者育成のため
  3. TA、RA、研究教育支援職員、 教務補佐員を活用すると共に、特に京都数学フェロー(約20名)を創設し主体的に研究に取り組ませる。
  4. 京都オープンスクール(合宿形式もとりいれた短期集中形式とセメスター形式)を開講し連続講演と共に参加者にレクチャーノートを作成させ査読を通じて高い理解を促す。 1対1の対話型教育を重視し、PD、院生を講演者との交流により研究の最先端へ導く。
  5. 数学・数理解析専攻の院生・京都数学フェローに対して国内外の院生・ポスドクとの主体的交流を行なわせ、 そのためのネットワークを構築する。特にアジア各国の若手研究者との交流をはかる。
  6. 大学院進学以前の数学への取り組みについて強い意識を持たせることを目的として、 1、2年次に対して数学吉田塾を実施するとともに、 3、4年次の対話型教育による学部専門教育を充実させる。

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平成15年度:

 拠点形成の立ち上げの年度である。予算措置ができ次第、 京都数学フェローの公募を行なう。 この5年間にわたる計画による国際シンポジウム実施のため数理解析研究所大講演室の整備等を行なう。 数理解析研究所プロジェクト研究(平成3年度より毎年1件開催) として開催予定の「複素力学系研究」を第3グループのCOE国際共同研究に格上げして実施する。 約20名の海外研究者をまじえて1年間にわたる長期滞在型共同研究を行なう。 第1グループは「物理的組み合わせ論」について、 約5名の海外研究者をまじえて6―9月の期間共同研究を行ない、 平成16年度国際共同研究の準備とする。第2グループは、 平成17年度より始める国際共同研究にむけて海外協力者Soule, Reid氏を含めた短期の共同研究を行う。 3つのグループそれぞれで、 平成17、18、19年度に各一件の国際共同研究を開催することに向けてテーマの組み合わせと海外研究者の来日日程の調整を行なう。 さらに各グループ2、3件の国際シンポジウムを年度の後半に開催する。 これは研究発表と情報交換を目的に1、2週間の会期で行なう。 テーマとしては「幾何学的表現論」「モジュライ空間と場の理論」 「数論的代数幾何」「ベクトル束のモジュライ」「遠アーベル幾何学」 「流体の基礎理論」を考えている。数学吉田塾を立ち上げ合宿を行なう。 院生交流事業を立ち上げ他大学の院生とのネットワークを作る。 また、韓国高等研究所(KIAS), 高等師範学校(ENS、仏), カリフォルニア大学バークレー校等との交流の準備のため先方のPD・院生の代表を2週間程度招聘する。 京都オープンスクール事業のモデルケースとして、 「複素力学系」共同研究に合わせてセメスター形式の連続講演 (宍倉、辻井、Smillie、上田)、 「物理的組み合わせ論」国際共同研究に合わせて短期集中形式の連続講演(Feigin)を行なう。 これらをレクチャーノートとして刊行する。

 拠点リーダーは、高等師範学校(ENS)、 カリフォルニア大学バークレー校等との交流準備のため現地を訪問する。

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平成16年度:

 京都数学フェローの追加公募を行なう。 国際共同研究として平成16年度数理解析研究所プロジェクト研究として採択されている 「代数解析的方法による可積分系の研究」を国際共同研究に格上げして実施する。 また、平成17年度以降の国際共同研究の準備集会を行なう。 12件程度(8分野×1件、横断的なもの4件) の国際シンポジウムを行なう。数学吉田塾を継続し、 院生交流事業を海外交流も含めて軌道にのせる。 京都オープンスクール事業として、短期集中形式を5件程度 (うち3件は国際共同研究関連)、 セメスター形式を3件程度行なう。レクチャーノートも続けて刊行する。

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平成17年度:

 京都数学フェローの追加公募を行なう。 平成15年度から準備する国際共同研究各グループ1件ずつ計3件を実施するとともに平成18年度の国際共同研究の準備集会や12件程度の国際シンポジウムを前年度同様に行なう。 数学吉田塾が大学院3年次進学にどのような成果をもたらしたかの評価を行なう。 院生交流事業、オープンスクール事業、 レクチャーノート刊行を継続する。海外の研究者を含む評価委員会による21世紀COE事業全般にわたる外部評価を行い、 次年度以降の活動を更に実りあるものにする。

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平成18年度:

 必要に応じて京都数学フェローの補充公募を行なう。 国際共同研究、国際シンポジウムを計画に沿って実施し、 数学吉田塾、院生交流事業、オープンスクール事業、 レクチャーノート刊行を継続する。 特に院生交流事業については海外交流先での研究交流を若手研究者中心の研究集会として実施する。 最終年度の総括へ向けて研究集会を各グループそれぞれの全体集会の形式で行なう。

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平成19年度:

 前年度よりの計画に沿っての活動を行なうと共に、 研究成果報告書をまとめ、 海外の研究者を含む評価委員会による外部評価を行なうことによって本拠点における研究教育活動の継続と将来構想を考える。 京都数学フェローを主体とした国際シンポジウムを行い、 海外の研究者の厳しい評価を通して将来の成長を促す。 数学吉田塾・院生国際ネットワークの将来の継続のための環境を整える。 また21世紀の数学の創成へ向けての国際会議を開催する。

最新情報
拠点形成の目的
拠点形成実施計画
教育実施計画
ポスドクの公募
事業推進担当者
ポスドク
21世紀COEで行なった事業
  (研究集会・講演会等)

数理解析研究所大学院理学研究科数学・数理解析専攻



Last modified: July 18, 2003