以下ラプラス作用素というものが頻繁に出てくるのでこれについて簡単に おさらいをしておこう. ラプラス作用素とは,
を3次元の領域とし, でその境界となっている閉曲面を あらわすことにしよう. 領域というときには開集合を意味するので の点は には属さない. を で 表し, の閉包と呼ぶ. の各点で領域の外向きに法線を 考え, その方向を向いた単位ベクトルを で表す. で定義された関数を考え, の点におけるその関数の 方向の微分を で表す. であ る1. で定義された微分可能関数 と が与えられたとき,
が2次元領域のときにも, の境界となる閉曲線を とすれば同じ形の定理が成り立つ:
グリーンの公式は1次元における部分積分の公式の多次元への拡張になっている. 1次元版である
グリーンの公式と同様の地位にあるのがガウスの定理 である. これは ベクトル値関数 , に関するもので
ガウスの定理とグリーンの公式が同値であることは良く知られている. 実際, グリーンの公式からガウスの定理を導くには (1)で とおくと( だから)
ガウスは19世紀の数学において他を寄せ付けないく らいの業績をあげた人物であるが, Cross [3]によれば, 彼が見いだしたものは(4)の特殊な ものでしかなかったということである. (4)という形の定理 を最初に見いだしたのは実はオストログラツキー( Mikhail Vasilevich Ostrogradski 1801-1862 ) である, というのが定説のようである. ロシアではガウス・オストログラツキーの定理とも呼ばれることが あるが, それも理由のないことではないのである.