2018年11月、数理解析研究所は「国際共同利用・共同研究拠点」に認定されました。

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訪問滞在型研究リスト

2022年度

現代的な変分法は、直接法、ミニマックス法や峠の補題に代表される臨界点理論、Morse-Conley 理論など多岐に亘る。
これらの理論は、あるエネルギー汎関数の停留点として非線形楕円型方程式の解を求めるといった偏微分方程式論の分野のみならず、リーマン幾何学やシンプレクティック幾何学、数理物理学など広範な数学諸分野と関連して、現在も活発に研究されている。

本プロジェクトは以下の2つの主題に基づいて遂行する:
 (A) 非コンパクト型変分問題に現れる非コンパクト性の探求;
 (B) 変分法的手法の発展方程式への応用。

主題(A)で述べた「非コンパクト型変分問題」とは、考察する問題の近似解の列(最小化列やパレー・スメール列)がアプリオリにはコンパクトとは限らないような変分問題であり、冒頭で述べた分野への応用に於いても重要な問題として現れる。 1980年代に Pierre-Louis Lions 氏により導入された集中コンパクト性原理により、このコンパクト性喪失現象の描像が理解されるようになり、これまでにも非コンパクト型変分問題の解析へ広く用いられている。
主題(A)はこの描像をより精密化し、非コンパクト型変分問題への更なる適用を目指すものである。

一方で、近年では集中コンパクト性原理を解析手段として、非線形放物型方程式・波動方程式・分散型方程式などの非線形発展方程式の解の時間大域挙動の研究も盛んに行われている。
このような応用を代表とする、変分的手法を用いた発展方程式の研究をより発展させることが主題(B)の目的である。

上記の目的を達成するため、長期滞在者として Bernhard Ruf 氏(ミラノ大学)と Luca Martinazzi 氏(ローマ大学ラ・サピエンツァ)を招聘し、連続講義、3つの研究集会を開催する。
特に主題Bについて、同様の主題に基づき開催された2011年のRIMS研究集会「変分問題の展開--発展方程式論における変分的方法--」以降の進展を踏まえ、現状の問題点や未解決問題を洗い出すことを目指した研究集会を企画する。
加えて、若手研究者を主体とした1つのスクールを開催する。これらの研究集会・スクールでは、海外から関連する若手研究者を複数名短期間招聘する。
以上のプロジェクトは、大阪公立大学数学研究所 (OCAMI) と緊密に連携して遂行する。
2022年度

可微分写像の特異点論は、可微分関数や写像の特異点の周りの振る舞いを記述する理論であり、1960 年頃までのトム、モース、ホイットニーの研究を源流とし、1960 年代後半にマザーによって基本的な道具が整備された。その後も発展が続き、今日でも活発に研究されている。また、数学内外の様々な分野に現れる特異的な現象を可微分写像の特異点として捉え、特異点論を用いて詳細に解析する手法により、幾何学を中心に様々な分野に応用されている。特異点論とその応用において基本となるのは特異点の分類である。その際は問題設定に応じた各種の可換環の商環の構造が重要となるが、ある程度以上の分類では調べるべき構造が非常に複雑となることから、手計算では不可能で、よく知られている汎用ソフトウェアだけでは早期に限界を迎える。
近年、計算機の性能が大幅に発達していることに加えて、計算機代数を援用した新しい特異点の分類理論が我が国の研究者たちによって提唱され、上記の限界を大幅に突破して大きく進歩している。また、分類の次に研究されるべき特異点の判定法の発展も著しい。さらに応用面では、トポロジカル絶縁体に現れる行列値ハミルトニアンや連続体力学などへのこれまでになかった新しい類の応用が散見されておりこれらへの応用も急速に発展する可能性がある。近年になって勃興しているこれらの新しい理論は多分野にまたがっており、腰を落ち着けて本格的に勉強する機会が必要である。
この状況を鑑みて、特異点論の最新の成果の発表会とともに、新しい理論の専門家による体系的な理論の講義を行う集会を設ける。
このような集会を数ヶ月使って行い、若手研究者、特異点論を応用したい研究者と特異点論研究者が交流することで、特異点論と特異点論の応用分野を相互発展させ、次世代研究者を育成することが本計画である。
2022 年の 10 月から 12 月にかけてを「特異点論特別月間」と指定し、ブラジル・スペインから 2 名の指導的研究者を招聘して日本の代表的研究者も交えて勉強会と研究集会を断続的に開催する。
また、期間中に日本数学会季期研究所(MSJ-SI2022)「応用特異点論の深化と展開」も行われる。
本計画はこの集会と連携し、それぞれが相補的な集会となる。
2023年度

1942年に伊藤清によって確率微分方程式の定式化がなされて以来、日本における確率解析の研究は世界の確率論の発展に極めて大きな影響を与えてきた。確率論自体も、偏微分方程式、ポテンシャル論、幾何学など様々な数学や、統計力学、集団生物学、経済学など諸科学との強い相互作用を持ちながら、非常に幅広い研究対象を持った分野として成長を続けている。とりわけ今世紀に入ってからの発展は目覚ましく、その方向性も、統計力学をはじめとする物理学に動機付けを持つモデルの解析を始め、ビッグデータの解析など、応用に直接つながる研究へも凄まじい勢いで拡がっている。他方、確率論の研究テーマの急速な深化・拡大により、個々の研究者は自らの研究分野の周辺の知見を得ることで精一杯となり、より大きな拡がりとして確率論を捉えることが難しくなるという残念な状況も生じている。

本研究は、「確率過程と確率解析」をキーワードとして、以下の3つのテーマを軸にそれぞれの分野から日本発の研究成果を発信し、国際共同研究のさらなる推進をはかることを主な目的とする。異なるテーマの研究者同士が交流を深めることで、広範囲の研究動向を俯瞰し、確率論の研究のさらなる発展を促す。(それぞれのテーマについて、括弧内に記したタイトルの研究集会を企画する。)
i) 確率偏微分方程式と関連する確率過程の解析(確率偏微分方程式と確率解析)
ii) 統計力学に動機付けを持つ確率モデルの解析(大規模相互作用系の確率解析)
iii) ランダム行列を軸とする、組み合わせ確率論、量子情報等の解析(ランダム行列とその応用)
テーマ間の交流を目指すため、2023年9月に、国内外の第一線で活躍する確率過程・確率解析の研究者を招聘して、数理解析研究所で大規模な研究集会を行う。

それぞれのテーマの研究集会について中堅研究者がその運営責任を担い、若手研究者の参加・講演を推進し次世代研究者が活躍する場とすると共に、女性研究者の協力、参画を促し、当該研究のgender diversityを広げる機会とする。
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Research Institute for Mathematical Sciences (RIMS)