2018年11月、数理解析研究所は「国際共同利用・共同研究拠点」に認定されました。

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訪問滞在型研究リスト

2024年度

数理物理学の行列模型の数学的定式化である位相的漸化式は、代数多様体や シンプレクティック 多様体のGromov-Witten不変量や種々の不変量の数え上げの背後にある普遍的な漸化式であると期待されている。また、不変量の母関数である分配関数は、KdV方程式やPainlev\'{e}方程式などの可積分系のτ関数を与える事が様々な例で示されている。 これらの事は、Witten-Kontsevichの定理に起源を持つものであり、現在でも様々な方向から活発に研究されているが、近年、量子曲線の理論から可積分系に付随したLax対の構成が行なわれるなどより深い理解が得られつつある。 また、上記の不変量の母関数は摂動パラメータhの形式級数であり、そのBorel総和可能性やStokes構造などのリサージェンス構造について近年活発な研究が行なわれ、特に最新の研究では、BPS構造との関係性が見出されている。

Calabi-Yau多様体のミラー対称性の数学的理解においても、Gromov-Witten不変量から定義される量子コホモロジー理論や導来圏に基づくDonaldson-Thomas不変量、Gopakumar-Vafa不変量の定義、および位相的弦理論の厳密解などにおいて多くの進展が見られる。特に、近年、高次種数のGromov-Witten不変量を計算する構成的な理論が出来つつあり、Calabi-Yau多様体の変形空間の幾何学に由来する正則アノマリー方程式との関係が見えてきている。一方で、位相的弦理論の(全種数を足し上げた)非摂動解が求められ漸近展開の理論と共に研究が進み、ここにおいても正則アノマリー方程式が随所に見え隠れしている。この2つの異なった分野においてミラー対称性と位相的弦理論に関わる数学を深く理解出来る可能性が見えてきている。例えば、分配関数が満たすべき正則アノマリー方程式は、位相的弦理論の分配関数が満たす漸化式として広く認知されているが、漸化式だけでは統制できない正則(有理)関数を決める問題があり、解の一般的な構成は位相的弦理論における未解決問題となっている。近年、5次超曲面などの限られたCalabi-Yau多様体についてGromov-Witten不変量の構成的な理解が進み、正則アノマリー方程式の解を不変量の視点から捉えられるようになってきている。また、位相的弦理論の非摂動解が求められる例が見つかり、その場合の解の解析を通して正則アノマリー方程式の解の非摂動的性質について理解が進み、Calabi-Yau多様体のDT不変量に現れる壁越え現象との関係が示唆されている。これらの発展を融合することから新しい発展への手掛かりが期待される。

また、近年、一般種数の代数曲線の放物接続や放物Higgs束のモジュライ空間の代数幾何的構成が進み、点付き代数曲線のモジュライ空間や接続の局所指数をパラメータ空間とした相対的なモジュライ空間のファミリーが代数多様体として構成された。接続に対してそのモノドロミー表現やStokes現象を対応させる一般化されたRiemann-Hilbert対応が解析的写像として全射・固有的双有理写像である事の証明が完成し、放物接続の一般化された意味でのモノドロミー保存変形が対応するモジュライ空間の族上に定義する力学系が幾何学的Painlev\'{e}性を持つことの厳密な証明が得られている。 これらのモジュライ空間が自然な代数的シンプレクティック構造をもつ事、また見かけの特異点によってそのシンプレクティック構造に関するDarboux座標を自然に与えられる事の代数幾何学的な証明が得られている。これらの性質から、モノドロミー保存変形から得られる可積分系の相空間や力学系について、代数幾何学的に精密な取り扱いが可能になってきている。 また、Painlevé方程式の解から得られるτ関数の展開を共形場理論から構成する理論や、WKB解析などとの関係についても研究が進んでいる。これらの研究の進展を上記位相的漸化式やミラー対称性の研究の進展と関連させて考察する事は非常に興味深いテーマである。また、離散Painlevé系や非可換Painlevé系に関する研究も進んでおり、それらに関わる対称性の研究が新しい視点をもたらしている。

この研究プロジェクトにおいては、現在進展しつつある上記の研究テーマについて焦点を当てて、関連する多様な分野から研究者を招聘し、最新の研究発表を行なうとともに、理論の相互関係を探求し、可積分系と種々の不変量の分配関数の関係、そしてその背後にある幾何学的枠組みを理解する事を目的にする。
2025年度
数理最適化における理論研究の新展開

数理最適化分野の理論とアルゴリズムに関する研究を推進し,国内の研究コミュニティのさらなる発展に寄与するために,ワークショップ・研究集会の開催を企画する.その際,関連する分野で世界的に活躍する研究者を招待する.

数理最適化(数理計画)問題は,与えられた制約条件の下で目的を最大化・最小化する問題であり,自然科学,工学,経済学,情報科学などの様々な分野で頻繁に現れる.数理最適化問題に対して,最適解の構造や性質を解明すること,および最適解もしくは良質な解を高速に計算するアルゴリズムを構築することが重要な研究テーマである.とくに,近年は実務上の要請により,半正定値制約,二次錐制約や混合整数制約など,より複雑な制約条件をもち,かつ巨大データにより表現される大規模な最適化問題を解く必要性が増している.そのため,最適化問題の背後に潜む数理構造を理解するために新たな理論体系を構築し,その理論に基づき高性能なアルゴリズムを設計することが必要とされている.

本研究計画では,数理最適化における理論とアルゴリズムの研究をさらに推進・発展させることを目的として,数理最適化に関する国際ワークショップや研究集会を企画する.日本の研究グループが世界をリードする下記の分野をさらに強化すべく,ワークショップでは,これらの分野に関する講演を中心に据える.
・ 離散最適化:離散凸解析理論,アルゴリズム的グラフマイナー理論
・ 連続最適化:錐最適化の理論とアルゴリズム
・ 数理最適化の機械学習との融合ならびに実務への応用

また,これらのワークショップ開催時に,当該分野で世界的に活躍する研究者を招待し,情報交換を行うとともに研究交流を促進する.そのうちの 2~3 名を指導的研究者として招聘し, RIMS に数ヶ月滞在してもらい,日本の研究者との共同研究を通じて数理最適化研究の発展へとつなげる.
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Research Institute for Mathematical Sciences (RIMS)