所員 -星 裕一郎-

名前 星 裕一郎 (Hoshi, Yuichiro)
講師
E-Mail yuichiro (emailアドレスには@kurims.kyoto-u.ac.jp をつけてください)
研究内容 数論幾何の研究
紹 介
 私は ``遠アーベル幾何学'' という観点を中心として,双曲的な代数曲線,及 び,それから派生する代数多様体の数論的基本群の研究を行っている。
 [1]では,双曲的曲線の数論的基本群に対するカスプ化問題の研 究を行った。双曲的曲線の数論的基本群に対するカスプ化問題とは,与えられ た双曲的曲線の数論的基本群から,その曲線の開部分スキームや配置空間の数 論的基本群を群論的・関手的に復元することができるか,という問題である。 [1]では,有限体上の射影的双曲的曲線の数論的基本群に対する カスプ化問題の副 $\ell$ 版を肯定的に解決した。
 望月新一氏との共同研究 [2],[5]では,組み合わせ 論的遠アーベル幾何学の研究を行った。[2]では,ノード非退化な外 表現に対する組み合わせ論的 Grothendieck 予想型の結果を証明して,その系 として,組み合わせ論的カスプ化の単射性を得た。そして,この単射性を用い て,数体や $p$ 進局所体などといった体の上の双曲的曲線の数論的基本群か ら生じる外 Galois 表現の忠実性を証明した。また,[5]では, 組み合わせ論的遠アーベル幾何学に関する様々な話題の研究が行われており, 特に,副有限 Dehn 捻りの一般論を展開して,その帰結として,曲線のモジュ ライ空間上の普遍曲線に対する幾何学版 Grothendieck 予想を解決した。
 [3],[6]では,遠アーベル幾何学における未解決予想の 一つであるセクション予想の研究が行われている。[3]では,(望月 新一氏によって,双曲的曲線に対する Grothendieck 予想はその副 $p$ 版も成 立することが証明されているにもかかわらず)セクション予想の副 $p$ 版は一 般には成立しないこと,また,(Faltings による Mordell 予想の解決によっ て,数体上の射影的双曲的曲線の有理点は高々有限個であることが証明されてい るにもかかわらず)無限に多くの副 $p$ Galois セクションの共役類を持つ数体 上の射影的双曲的曲線が存在することを証明した。[6]では,有理 数体や虚二次体上の代数曲線に対する双有理セクション予想の研究が行われてお り,特に,そのような体上の代数曲線の双有理 Galois セクションが幾何学的に なるためのいくつかの必要十分条件が与えられている。
 [4]では,双曲的曲線に対するモノドロミー充満性についての研 究が行われている。双曲的曲線に対するモノドロミー充満性という性質は,楕 円曲線に対する ``虚数乗法を持たない'' という性質の類似と考えられ,非常 に多くの双曲的曲線がモノドロミー充満であるという事実が,玉川安騎男氏と 松本眞氏によって証明されている。[4]では,玉川安騎男氏と松 本眞氏によって提出された双曲的曲線のモノドロミー充満性に関するある問題 を,種数が $0$ の場合に否定的に解決した。
 [7],[8]では,それぞれ,多重双曲的曲線,$p$ 進局所 体に対する Grothendieck 予想の研究が行われている。[7]では, 劣 $p$ 進体上の多重双曲的曲線に関する様々な形の Grothendieck 予想型の結 果が議論されており,特に,劣 $p$ 進体上の次元が 4 以下の多重双曲的曲線に 対する Grothendieck 予想が解決されている。また,[8]では, $p$ 進局所体の絶対 Galois 群の間の開準同型射に対して,それが体の拡大から 生じることと,その開準同型射が $p$ 進表現の Hodge・Tate 性を保つことが同 値であるという事実が証明されている。
 [9],[10]で行われている研究の中心的な対象は,数体上 の双曲的曲線の穏やかな点である。この対象は,松本眞氏によってその研究が始 められ,また,アーベル多様体の等分点の双曲的曲線に対する類似と考えること ができる。[9]では,数体上の双曲的曲線に付随する外 Galois 表現 の核とその曲線の上の穏やかな点の関連についての研究が行われており,特に, そのような外 Galois 表現に関わる諸問題と Fermat 予想との関連についての議 論が与えられている。[10]では,数体上のアーベル多様体の有理等分 点の有限性(Mordell・Weil の定理の帰結)の曲線類似と考えることができる, 数体上の一点抜き楕円曲線の穏やかな有理点の有限性が証明されている。
  1. Absolute anabelian cuspidalizations of configuration spaces of proper hyperbolic curves over finite fields, Publ. Res. Inst. Math. Sci, 45 (2009), no. 3, 661-744.
  2. On the combinatorial anabelian geometry of nodally nondegenerate outer representations (with Shinichi Mochizuki), Hiroshima Math. J. 41 (2011), no. 3, 275-342.
  3. Existence of nongeometric pro-p Galois sections of hyperbolic curves, Publ. Res. Inst. Math. Sci. 46 (2010), no. 4, 829-848.
  4. On a problem of Matsumoto and Tamagawa concerning monodromic fullness of hyperbolic curves: Genus zero case, Tohoku Math. J. 65 (2013), no. 2, 231-242.
  5. Topics surrounding the combinatorial anabelian geometry of hyperbolic curves I: Inertia groups and profinite Dehn twists (with Shinichi Mochizuki), ``Galois-Teichmüller Theory and Arithmetic Geometry''. 659-811, Adv. Stud. Pure Math., 63, Math. Soc. Japan, Tokyo, 2012.
  6. Conditional results on the birational section conjecture over small number fields, to appear in the Proceedings for Symposium in Durham (July 2011) ``Automorphic Forms and Galois Representations''. vol. 2, 187--230, London Math. Soc. Lecture Note Ser., 415, Cambridge Univ. Press, Cambridge, 2014.
  7. The Grothendieck conjecture for hyperbolic polycurves of lower dimension, J. Math. Sci. Univ. Tokyo 21 (2014), no. 2, 153--219.
  8. A note on the geometricity of open homomorphisms between the absolute Galois groups of p-adic local fields, Kodai Math. J. 36 (2013), no. 2, 284-298.
  9. On the kernels of the pro-$l$ outer Galois representations associated to hyperbolic curves over number fields, to appear in Osaka J. Math.
  10. Finiteness of the moderate rational points of once-punctured elliptic curves, to appear in Hokkaido Math. J.