所員 -星 裕一郎-

名前 星 裕一郎 (Hoshi, Yuichiro)
講師
E-Mail yuichiro (emailアドレスには@kurims.kyoto-u.ac.jp をつけてください)
研究内容 数論幾何の研究
紹 介
 私は ``遠アーベル幾何学'' という観点を中心として,双曲的な代数曲線,及 び,それから派生する代数多様体の数論的基本群の研究を行っている。
 Grothendieck は,遠アーベル幾何学という枠組みを提唱すると同時に, その基本的な問題として,遠アーベル予想,セクション予想という 2 つの予想を 定式化した。[5],[7] において遠アーベル予想の研究が, そして,[1],[6] においてセクション予想の研究が 行われている。[5] では,p 進局所体の絶対 Galois 群の間の 開準同型射に対して,その開準同型射が体の拡大から生じることと,その開準同型射 が p 進表現の Hodge・Tate 性を保つことが同値であるという事実が証明 されている。[7] では,多重双曲的曲線に関する様々な 形の遠アーベル予想型の結果が議論されており,特に,劣 p 進体 上の次元が 4 以下の多重双曲的曲線に対する遠アーベル予想が解決 されている。[1] では,セクション予想の副 $p$ 版が一般には成立しない ことが証明されており,この展開は,双曲的曲線に対する遠アーベル予想の 副 p 版の成立と対比すると興味深い。[6] では,有理数体や虚二次体上 の代数曲線の双有理 Galois セクションが有理点から生じるためのいくつかの 必要十分条件が与えられている。
 [2],[3] では,望月新一氏と共同で, 組み合わせ論的遠アーベル幾何学の研究を行った。[2] では, 節点非退化外表現に対する遠アーベル予想型の結果を確立して, その系として,数体などといった体上定義された双曲的曲線に付随する 外 Galois 表現の忠実性を証明した。[3] では, 組み合わせ論的遠アーベル幾何学に関する様々な話題の研究が行われており, 特に,副有限 Dehn 捻りの一般論を展開して,その帰結として,曲線の モジュライ空間上の普遍曲線に対する幾何学版遠アーベル予想を解決した。
 数論的基本群という観点を通じて,しばしば,アーベル多様体に 対する概念の類似的概念を,双曲的曲線に対して考察することができ る。[4],[8],[10] では,そういった概念に 関する研究を行った。[4] では,玉川安騎男氏と松本眞氏によって 研究が始められた双曲的曲線に対するモノドロミー充満性に ついての研究が行われている。双曲的曲線に対するモノドロミー充満性という 性質は,楕円曲線に対する虚数乗法の非存在という性質の類似 と考えられる。[4] では,玉川安騎男氏と松本眞氏による モノドロミー充満性の $l$ 独立性の問題を,種数が 0 の場合に否定的に解決 した。[8],[10] で行われている研究の中心的な対象は,数体 上の双曲的曲線の穏やかな点である。これは,松本眞氏によってその研究が始 められた概念であり,アーベル多様体の等分点の双曲的曲線に対する類似と考える ことができる。[8] では,数体上の双曲的曲線に付随する外 Galois 表現 の核とその曲線の上の穏やかな点の座標の間の関連についての研究が行われており, 特に,そのような外 Galois 表現に関わる諸問題と Fermat 予想との関連について の議論が与えられている。[10] では,数体上の一点抜き楕円曲線の 穏やかな有理点の有限性が証明されており,この有限性は,数体上のアーベル 多様体の有理等分点の有限性の曲線類似と考えることができる。
 また,双曲的曲線に対する数論幾何学の研究として,遠アーベル幾何学とは独立 に,p 進 Teichmüller 理論の研究を行っている。[9] では, 古典的な p 進 Teichmüller 理論の正標数部分においてもっとも中心的な 対象である巾零許容固有束や巾零通常固有束という概念を,標数が 3 の場合に 考察している。特に,標数が 3 の場合の巾零許容固有束や巾零通常固有束 の Hasse 不変量やそれが定める超特異因子を,Cartier 作用素を通じて特徴 付けて,そして,その系として,望月新一氏による巾零固有束の通常性の 有限エタール被覆に対する安定性の問題を否定的に解決した。
  1. Existence of nongeometric pro-p Galois sections of hyperbolic curves, Publ. Res. Inst. Math. Sci. 46 (2010), no. 4, 829-848.
  2. On the combinatorial anabelian geometry of nodally nondegenerate outer representations (with Shinichi Mochizuki), Hiroshima Math. J. 41 (2011), no. 3, 275--342.
  3. Topics surrounding the combinatorial anabelian geometry of hyperbolic curves I: Inertia groups and profinite Dehn twists (with Shinichi Mochizuki), Galois-Teichmüller Theory and Arithmetic Geometry 659--811, Adv. Stud. Pure Math., 63, Math. Soc. Japan, Tokyo, 2012.
  4. On a problem of Matsumoto and Tamagawa concerning monodromic fullness of hyperbolic curves: Genus zero case, Tohoku Math. J. 65 (2013), no. 2, 231-242.
  5. A note on the geometricity of open homomorphisms between the absolute Galois groups of p-adic local fields, Kodai Math. J. 36 (2013), no. 2, 284-298.
  6. Conditional results on the birational section conjecture over small number fields, to appear in the Proceedings for Symposium in Durham (July 2011) ``Automorphic Forms and Galois Representations''. vol. 2, 187--230, London Math. Soc. Lecture Note Ser., 415, Cambridge Univ. Press, Cambridge, 2014.
  7. The Grothendieck conjecture for hyperbolic polycurves of lower dimension, J. Math. Sci. Univ. Tokyo 21 (2014), no. 2, 153--219.
  8. On the kernels of the pro-l outer Galois representations associated to hyperbolic curves over number fields, Osaka J. Math. 52 (2015), no. 3, 647--677.
  9. Nilpotent admissible indigenous bundles via Cartier operators in characteristic three, Kodai Math. J. 38 (2015), no. 3, 690--731.
  10. Finiteness of the moderate rational points of once-punctured elliptic curves, to appear in Hokkaido Math. J.