談話会/Colloquium
Title
代数多様体の退化のエントロピー
(Entropy of degeneration of algebraic variety)
Date
2025年5月28日(水) 16:45〜17:45 (16:15より105談話室でtea)
Place
京都大学大学院理学研究科3号館110講演室
(Rm110, Building No.3, Graduate School of Science, Kyoto University)
Speaker
井上 瑛二 (Eiji Inoue)氏 (京大・理)
Abstract
「コンパクトな複素(ケーラー)多様体に対して"最も良い計量"なる概念を定式化し、その存在と一意性を証明することができるだろうか?」これが標準ケーラー計量問題の心である。"最も良い計量"の定式化がさまざまあるなかで、最も有名なものはKahler-Einstein計量だろう。複素多様体の標準束が正または自明な場合は、およそ半世紀前AubinとYauによってKahler-Einstein計量の存在と一意性が証明されている。一方で標準束が負のとき(リッチ曲率が正のケーラー計量を持つとき)はKahler-Einstein計量が存在する場合と存在しない場合があり、存在の必要十分条件は複素多様体の退化のDonaldson-二木不変量の正値性によって特徴付けられる(Chen-Donaldson-Sun '14, Tian '15)。したがって標準束が負でKahler-Einstein計量を持たない複素多様体はDonaldson-二木不変量が負になる退化をもつが、このような退化の中で「"最も良い形に近づく退化"なる概念を定式化し、その存在と一意性を証明することができるだろうか?」という問題を考えたい。このような問題をどのように定式化し、解決するか、そしてはじめの問題とどのように関連するか、ケーラー・リッチ・フローや代数多様体のモジュライ問題とどのように関係するか、時間が許す限り話せることを話したい。
大談話会
Title
Kazhdanの性質(T)と半正定値計画問題
(Kazhdan's Property (T) and Semidefinite Programming)
Date
2025年5月21日(水) 15:10〜16:10
Place
京都大学数理解析研究所 (RIMS) 420 号室
(Rm420, Research Institute for Mathematical Sciences, Kyoto University)
Speaker
小澤 登高 (Narutaka Ozawa)氏 (京大・数理研)
Abstract
Kazhdanの性質(T)は群に関する性質で、エクスパンダーグラフの構成に使われる など、数学の広い分野に多くの応用がある。与えられた群が性質(T)を持つか否かを決定するのは一般に困難である。講演では、作用素環論(非可換実代数幾何学) により、性質(T)の検証が機械計算で解決可能な半正定値計画問題に帰着できることを紹介する。数学における実験的手法についてのエピソードと計算機を使った検証結果を報告する。特に自由群自己同型群 Aut(F_n) が性質(T)を持つことが大規模計算によりrigorousに証明された。これは群論における有名未解決問題を解決するものであり、工業数学等への応用がある。
大談話会
Title
幾何学的Brascamp-Lieb不等式
(The geometric Brascamp-Lieb inequality)
Date
2025年5月21日(水) 16:45〜17:45
Place
京都大学数理解析研究所 (RIMS) 420 号室
(Rm420, Research Institute for Mathematical Sciences, Kyoto University)
Speaker
Neal Bez 氏 (名古屋大・多元数理)
Abstract
幾何学的Brascamp-Lieb不等式は1980年代後半にKeith Ball氏によって証明され、彼はこれを応用して凸幾何学における問題に大きな進歩を得た。幾何学的Brascamp-Lieb不等式は、Brascamp-Lieb不等式の一般理論において重要な役割を果たすことが明らかになっている。本講演では、このようなテーマを広い観点から説明し、最後に幾何学的Brascamp-Liebデータの「稠密性」に関する最近の研究を紹介する。
Title
グラフ上の単純ランダムウォークの無限回衝突について
(On infinite collisions of simple random walks on graphs)
Date
2025年5月14日(水) 16:45〜17:45
(16:15より数理研 2 階コモンルームでtea)
Place
京都大学数理解析研究所 (RIMS) 110号室
(Rm110, Research Institute for Mathematical Sciences, Kyoto University)
Speaker
渡辺 聡美 (Satomi Watanabe)氏 (京大・数理研)
Abstract
本講演では、グラフ上の複数の単純ランダムウォークの衝突回数について述べる。ランダムウォークの衝突回数は、グラフの形状を特徴付ける指標となり、近年ではランダムなグラフ上での挙動も注目を集めている。講演ではまず、二つのランダムウォークの無限回衝突性について、具体的なグラフを挙げながら先行研究を紹介する。続いて、三つのランダムウォークの同時衝突について、先行研究および進行中の研究について説明する。
Title
強磁性体モデルにおけるS^2値関数に対する変分問題・偏微分方程式について
(Variational problems and PDEs for S^2-valued maps in the ferromagnetic model)
Date
2025年5月7日(水) 16:45〜17:45 (16:15より105談話室でtea)
Place
京都大学大学院理学研究科3号館110講演室
(Rm110, Building No.3, Graduate School of Science, Kyoto University)
Speaker
清水 一慶 (Ikkei Shimizu)氏 (京大・理)
Abstract
強磁性体の磁化を記述する数理モデルの一つであるLandau-Lifshitzモデルでは、磁化を2次元球面S^2に値をとる関数として定式化し、そのエネルギー変分問題や偏微分方程式を通じて物理現象の説明が行われる。これらはその物理的意義に加え、豊富な数学的構造を備えていることから、数学的研究対象として現在に至るまで盛んに研究が行われている。また様々な数学分野との接点も垣間見ることができ、例えば調和写像、su(2)ゲージ場、非線形シュレディンガー方程式、可積分系などとの関連が知られている。談話会ではスキルミオン解の構成に関する自分の研究内容の紹介を交えつつ、Landau-Lifshitzモデルの数学解析に関する背景・先行研究・今後の課題等について俯瞰的に説明する。
Title
不動点を用いたモデル検査とProduct Constructionの不可能性定理
(Model checking via fixed points and no-go theorem for product
construction)
Date
2025年4月30日(水) 16:45〜17:45
(16:15より数理研 2 階コモンルームでtea)
Place
京都大学数理解析研究所 (RIMS) 110号室
(Rm110, Research Institute for Mathematical Sciences, Kyoto University)
Speaker
郡 茉友子 (Mayuko Kori)氏 (京大・数理研)
Abstract
形式検証とは、システムの正しさを数理的に保証するための手法である。本講演では、形式検証の中でも特にモデル検査に焦点を当て、圏論的・束論的な不動点理論に基づく枠組みを紹介する。自己関手の余代数を用いることで、遷移システムやマルコフ決定過程など多様なシステムを表すことができ、不動点で意味を表すことができる。この不動点の性質を用いた様々な検証手法が存在する。特に、システムと仕様の積をとって検証問題を効率的に解くProduct Constructionという手法に注目し、確率的システムとオートマトンの 合成による、仕様を満たす確率の計算問題を取り上げる。そのうえで、マルコフ連鎖と非決定性有限オートマトンの合成が実現不可能であることを自然変換の特徴づけを用いて示す。
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