所員 -入江 慶-

名前 入江 慶 (Irie, Kei)
助教
E-Mail iriek (emailアドレスには@kurims.kyoto-u.ac.jp をつけてください)
U R L
研究内容 幾何学の研究
紹 介
 シンプレクティック幾何学(特にHamilton系の周期解やシンプレクティック容量)と,関連する話題について研究している。 大域シンプレクティック幾何学における記念碑的な結果であるGromovの圧縮不能性定理は,擬正則曲線を用いてシンプレクティック 多様体の「二次元的な幅」(シンプレクティック容量)を測ることで示された。 その後Hoferらは,シンプレクティック容量の研究と,Hamilton系の周期解の研究とが密接に関わることを見出した。 この発見は,Floerホモロジーと結びつき,Floer, Hofer, Viterbo等によるシンプレクティック・ホモロジー (定量的なFloerホモロジー)の理論へと深化した。 私自身は,これらの研究の発展や応用を目標にしている。
 例えば[1]では,Euclid空間内の領域の単位余接束に対して,そのシンプレクティック・ホモロジーから決まる容量 (Floer-Hofer-Wysocki 容量)の評価を与え,応用として,領域上の周期ビリヤード軌道の長さについて幾何学的な不等式を導いた。 [2], [4], [5]はこれに関連する研究である。 特に[4]では,Euclid空間内の領域に対して,その単位余接束のシンプレクティック・ホモロジーを,領域の自由ループ空間の(相対)ホモロジーを用いて 記述する公式を証明した。 閉多様体$M$について,その余接束のFloerホモロジーは$M$の自由ループ空間のホモロジーと同形になることが知られているが (Viterbo, Salamon-Weber, Abbondandolo-Schwarzによる),[4]の結果はこれの境界付多様体版(の特別な場合)といえる。 一方[3]では,Floerホモロジーの積構造を利用して シンプレクティック容量(Hofer-Zehnder容量)を評価する方法を考えて,余接束の場合に応用を与えた。
 すでに述べたように,余接束のFloerホモロジーは自由ループ空間のホモロジーと同形になる。 このとき,Floerホモロジーの持つ代数構造は,自由ループ空間の側でストリング・トポロジーとして研究されている代数構造と対応すると考えられている。 例えば,Floerホモロジーのパンツ積はストリング・トポロジーにおけるChas-Sullivanループ積と対応することがAbbondandolo-Schwarz等により証明されており,これは\cite{JEMS}でも重要な役割を果たす。 Floerホモロジーにおける高次の積を記述するには,ストリング・トポロジーにおける積を鎖複体のレベルで定義する必要があるが,その際に横断正則性に関する基本的な困難がある。 [6]では,これに対してde Rham鎖という概念を用いる新しいアプローチを提案し,自由ループ空間の(特異)ホモロジーと同形なホモロジーを持つ鎖複体であって, ストリング・トポロジーにおける演算がうまく定義できるようなものを導入した。 これに続く[7]では,この鎖複体の上に,ある次数付微分オペラッド(サボテン・オペラッドの変種)の作用を定義し, Chas-Sullivanにより定義された自由ループ空間のホモロジー上のBatalin-Vilkovisky構造を復元することを示した。

  1. Symplectic capacity and short periodic billiard trajectory, Math. Z. 272, 1291--1320, 2012.
  2. Displacement energy of unit disk cotangent bundles, Math. Z. 276, 829--857, 2014.
  3. Hofer-Zehnder capacity of unit disk cotangent bundles and the loop product, J. Eur. Math. Soc, (JEMS) 16, 2477--2497, 2014.
  4. Symplectic homology of disk cotangent bundles of domains in Euclidean space, J. Symplectic Geom, 12, 511--552, 2014.
  5. Periodic billiard trajectories and Morse theory on loop spaces, Comment. Math. Helv. 90, 225--254, 2015.
  6. Transversality problems in string topology and de Rham chains, arxiv:1404.0153
  7. A chain level Batalin-Vilkovisky structure in string topology and decorated cacti, arxiv:1503.00403