所員 -川ノ上 帆-

名前 川ノ上 帆 (Kawanoue, Hiraku)
助教
E-Mail kawanoue (emailアドレスには@kurims.kyoto-u.ac.jp をつけてください)
U R L
研究内容 代数幾何学の研究
紹 介
 代数幾何学,特に正標数の代数多様体の特異点解消について研究している。
 特異点解消は代数幾何学の重要な問題の一つである。 標数0の体上で定義された代数多様体はいつでも 特異点解消を持つ,というのが1964年の廣中平祐先生 による大定理であるが,正標数の場合は特異点解消の存在は 高々3次元までしか知られていない。 私は任意標数の完全体上で定義された代数多様体の特異点解消を 目指して Idealistic Filtration Program (IFP) を提唱し, Purdue大学の松木謙二氏と共同で研究を進めている。 IFPはBierstone氏-Milman氏,Villamayor氏らによって簡易化された 標数0の場合の特異点解消の構成的証明を正標数の場合にも 通用するように翻訳することをその骨子とする。
 雛型となる標数0の場合の構成的証明は,代数多様体の各閉点に 不変量を導入し,その最大軌跡を爆発するという方針で与えられる。 この不変量の定義の際に鍵となる概念が,最大接触超曲面と呼ばれる 非特異な超曲面であるが,正標数の場合は最大接触超曲面が 常に存在するとは限らない。IFPにおいては,idealistic filtration という概念を導入してその構造を解析することで, 先頭生成系と呼ばれる最大接触超曲面の代替物を導入する。 先頭生成系は正標数においては必ずしも非特異な超曲面を 与えるとは限らず,このことに由来する様々な困難が現れる。 その内不変量の最大軌跡の非特異性,基本単位となる不変量の 上半連続性などの比較的基本的な性質が保証されることを示し, 基本的な概念の導入やその性質と共にIFPの基礎付けを与えたのが [1],[2]である。
 上記論文では基本単位となる不変量について議論しているが, 実際の特異点解消で登場する不変量はこれらを複雑に組み合わせた ものであり,IFPの設定下で機能させる為には様々の変更,調整が 必要である。2008年度にこのような不変量の候補を提示したものの, その後の研究でこの不変量が爆発後に増加する例が見付かり, 現在はこの病理現象を克服する方向で研究を進めている。
 一つの可能性は本来想定していた対数微分飽和を特殊な微分に よるより小さな飽和で置き換える方法である。この場合 不変量の非増加性は保証されるが,最終状態の一つである 単項型状態における非特異性が保証されず,更なる解析が 必要となる。全空間三次元での埋め込み特異点解消については, Benito氏-Villamayor氏による単項型の解析を簡易化してIFPの 枠組み下での再証明を与えた。この結果は技術的懸案の 一つであった同伴改変の代数化と共に松木氏との共著として [3]にまとめた。当面の目標はこの手法を未解決の 全空間四次元の場合に拡張することである。
 もう一つの可能性は技術的理由から一旦退けていた根基的飽和を 組み込んだより大きな飽和を用いる方法である。この場合については 単項型状態での非特異性が任意次元で成立することを証明した (IFPの概説と共に[4]に所収)。 未だ肝心の不変量の非増加性を得るには至っていないが,IFPの哲学上は 根基的飽和を含める方が自然なのでこの方針でも進展を得たいと考えている。
  1. H. Kawanoue. Toward resolution of singularities over a field of positive characteristic. Part I. Foundation of the program: the language of the idealistic filtration. Publ. Res. Inst. Math. Sci., 43(3):819--909, 2007.
  2. H. Kawanoue and K. Matsuki. Toward resolution of singularities over a field of positive characteristic Part II. Basic invariants associated to the idealistic filtration and their properties. Publ. Res. Inst. Math. Sci., 46(2), 2010, 359-422.
  3. H. Kawanoue and K. Matsuki. Resolution of singularities of an idealistic filtration in dimension 3 after Benito-Villamayor. Adv. Stud. Pure Math. (accepted)
  4. H. Kawanoue. Idealistic filtration program with the radical saturation. Introduction to the Idealistic Filtration Program with emphasis on the radical saturation. Clay Math. Proc. (submitted)